本阿弥光悦の黒楽茶碗 ― 2007年に重要文化財

黒楽茶碗(時雨)光悦作は、愛知県名古屋市東区徳川町1001にある江戸時代の茶碗で、2007年(平成19年)6月8日に重要文化財に指定された。員数は1口、種別は工芸品、作者は光悦。所有は名古屋市である。

文化庁の解説はこう記す。本阿弥光悦(1558年から1637年)が製作した黒楽茶碗である。体部は腰に丸みを持つ半筒形に成形し、口縁上端を平らに仕上げる。全面に黒釉が掛けられるが、一部は黒釉が薄く黒褐色のかせた素地が直接現れる。光悦黒楽茶碗の特色を最もよく示す優れた作品として著名なものである。三井家伝来。

寸法は高さ8.8センチメートル、口径12.4センチメートル、高台径4.7センチメートル。手のひらに収まる大きさである。

釉が薄い部分が景色になる

文化庁の解説の中心は、黒釉の掛かり方にある。

総体に刷毛塗りにより高台まで黒釉を掛け、艶やかに良く熔けた釉調を示すが、外面体部や内面口辺の一部は極薄く、焼き締めた黒褐色の器膚が現れる。

全面に黒釉を掛けながら、一部だけ薄くなっている。その部分では釉の下の素地が透けて見える。素地は鉄分の多い灰褐色陶胎である。艶のある黒と、かせた黒褐色が同じ器の面に並ぶ。

文化庁が「光悦黒楽茶碗の特色を最もよく示す」とするのは、この釉の掛かり方を指す。均一に仕上げるのではなく、むらを景色として見るという見方が前提にある。

窯割れがあり、一部を繕う

文化庁の品質・形状の記載には、傷の情報も含まれる。胴の二箇所と底の一箇所に窯割れがあり一部を繕う。高台には目跡が五箇ほど残される。

窯割れは焼成中に生じた割れである。焼き上がりの時点で割れていたものが、繕われて伝えられてきた。完全な状態でないことが公的記録に明記されている。

目跡は、焼成時に器を支えた道具の跡である。高台に五箇ほど残る。製作の過程が器の裏に残っていることになる。

それでも指定を受けているのは、評価が完全さではなく作風にあるためである。傷の記載と高い評価が同じ記録の中に並んでいる。

手捏ねで薄く作る

成形の方法も記されている。素地は鉄分の多い灰褐色陶胎で、腰に丸みを有する半筒形の茶碗を、手捏ねで薄造りに成形する。

手捏ねはろくろを使わず手で形を作る方法である。ろくろを使えば速く均一に作れるが、手捏ねはそうならない。楽焼はこの方法による。

形の記述は細かい。腰にはゆったりと豊かな丸みを持ち、体部は胴の下半を少し膨らませ、口辺でやや引き締め、口縁はわずかに外反する。口縁端部は篦で切ってやや鈍く平らに仕上げる。

体部は丁寧に篦削りを施して整形し、内面底部の見込みはほぼ平らに仕上げる。底には低いやや小さな円形の高台を削り出す。篦で削って形を決めるのが手捏ねの後の工程である。

鑑賞

所有は名古屋市で、文化庁は所在地を名古屋市東区徳川町1001とする。

常設展示とは限らず、展示の有無と時期は施設の予定による。茶碗は展示替えの対象になりやすいので、実物を目当てにする場合は出陳の有無を確かめたい。

文化庁は伝来を「三井家伝来」と記す。三井家から現在の所有に至る過程で、複数の手を経ている。

交通は名古屋市営地下鉄名城線の大曽根駅から徒歩約10分である。

Q&A

Q黒楽茶碗(時雨)はいつ指定されましたか。
A2007年(平成19年)6月8日に重要文化財に指定されました。員数は1口、種別は工芸品、作者は光悦。所有は名古屋市です。文化庁は時代を江戸とします。
Qどのような茶碗ですか。
A高さ8.8センチメートル、口径12.4センチメートル、高台径4.7センチメートル。鉄分の多い灰褐色陶胎を手捏ねで薄造りに成形した半筒形の茶碗です。腰に丸みを持ち、口縁はわずかに外反し、口縁端部は篦で切って平らに仕上げます。
Q評価されている点は何ですか。
A文化庁は、全面に黒釉が掛けられるが一部は黒釉が薄く黒褐色のかせた素地が直接現れるとし、光悦黒楽茶碗の特色を最もよく示す優れた作品として著名なものであると記します。艶のある黒とかせた黒褐色が同じ器の面に並ぶ点です。
Q傷はあるのですか。
A文化庁は「胴の二箇所と底の一箇所に窯割れがあり一部を繕う」と記します。窯割れは焼成中に生じた割れで、焼き上がりの時点で割れていたものが繕われて伝えられてきました。高台には目跡が五箇ほど残ります。
Q実物は見られますか。
A所有は名古屋市で、文化庁は所在地を名古屋市東区徳川町1001とします。常設展示とは限らず、展示の有無と時期は施設の予定によります。茶碗は展示替えの対象になりやすいため、出陳の有無を確かめてください。

基本情報

名称黒楽茶碗(時雨)光悦作(くろらくちゃわん しぐれ こうえつさく)
所在地愛知県名古屋市東区徳川町1001
指定区分重要文化財(工芸品)
指定年2007年(平成19年)6月8日 重要文化財
員数1口
寸法高さ8.8センチメートル、口径12.4センチメートル、高台径4.7センチメートル。鉄分の多い灰褐色陶胎を手捏ねで薄造りにした半筒形。刷毛塗りで高台まで黒釉を掛けるが一部は極薄く黒褐色の器膚が現れる。胴と底に窯割れがあり一部を繕う。江戸時代
所有者名古屋市
公開状況常設展示とは限らず、展示の有無と時期は施設の予定による

参考文献

文化遺産オンライン 黒楽茶碗(時雨)光悦作
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/158938
名古屋市博物館 収蔵品
https://www.museum.city.nagoya.jp/collection/data/data_05/index.html
名古屋市博物館 公式サイト
https://www.museum.city.nagoya.jp/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.04