千葉県唯一の工芸品国宝「海獣葡萄鏡」の魅力

香取神宮の宝物館に所蔵される「海獣葡萄鏡」は、7世紀から8世紀の唐時代に製作された青銅製の鏡です。直径29.6センチメートル、重量4,560グラムという堂々たる大きさを誇り、その精緻な文様と高度な鋳造技術は、古代東アジアの工芸技術の頂点を示しています。

この鏡の特徴は、葡萄唐草文を背景に、獅子、馬、鹿、麒麟などの霊獣と、孔雀、鳳凰、鴛鴦などの瑞鳥が躍動的に配された豊かな装飾性にあります。中央の鈕(つまみ)には唐獅子が配され、全体として西方から伝来した楽園のイメージを表現しています。

なぜ国宝に指定されたのか

海獣葡萄鏡は、明治37年(1904年)に重要文化財に指定され、昭和28年(1953年)3月31日に国宝に昇格しました。指定理由として、唐代鏡工芸の最高傑作であること、正倉院南倉第9号鏡と同じ鋳型から製作された貴重な同型鏡であること、そして千年以上にわたり神宝として大切に伝承されてきた歴史的価値が評価されました。

この鏡は、正倉院御物と大山祇神社の神鏡と並んで「日本三銘鏡」と称され、古代日中文化交流の貴重な物証として、また千葉県唯一の工芸品国宝として、極めて高い文化的価値を持っています。

2600年の歴史を誇る香取神宮

香取神宮は、神武天皇18年(紀元前643年)の創建と伝えられる東国随一の古社です。主祭神の経津主大神(ふつぬしのおおかみ)は、日本神話において国土平定の大業を成し遂げた武神として崇敬されています。

古来、伊勢神宮、鹿島神宮と並んで「神宮」の称号を許された三社のみの一つであり、下総国一宮として、源頼朝、足利尊氏、徳川家康など歴代の武将から篤い信仰を受けてきました。現在の本殿と楼門は元禄13年(1700年)に徳川綱吉により造営されたもので、国の重要文化財に指定されています。

見どころと鑑賞のポイント

宝物館では、海獣葡萄鏡の精巧なレプリカを間近で鑑賞できます。高肉彫りと呼ばれる高度な浮き彫り技術により表現された動物たちの躍動感、葡萄唐草の流麗な曲線美、そして全体に漂う異国情緒は、見る者を1300年前の国際都市・長安へと誘います。

特に注目すべきは、葡萄文様に込められた豊穣と繁栄の象徴性です。シルクロードを経由して中国に伝わったこの文様は、東西文化交流の証であり、古代日本が国際社会の一員として活発に交流していた歴史を物語っています。

境内では、黒漆塗りの荘厳な本殿、朱塗りの美しい楼門、樹齢千年を超える御神木など、神聖な雰囲気に包まれた空間を体験できます。12年に一度の式年神幸祭をはじめ、年間を通じて様々な祭礼が行われ、日本の伝統文化を肌で感じることができます。

周辺の魅力的な観光スポット

香取神宮から車で15分の佐原地区は、「小江戸」と呼ばれる江戸時代の町並みが残る観光地です。利根川沿いに立ち並ぶ歴史的建造物群は、重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、タイムスリップしたような風情を楽しめます。

伊能忠敬記念館では、日本全国を測量して精密な地図を作成した偉人の業績を学べます。また、300年以上の歴史を持つ鰻料理の老舗が点在し、江戸時代から続く食文化も堪能できます。6月には水郷佐原あやめパークで400種150万本の花菖蒲が咲き誇り、舟めぐりと共に水郷の美しい景観を満喫できます。

成田空港から車でわずか25分という立地は、海外からの観光客にとって大きな魅力です。フライト前後の時間を利用して、日本の伝統文化と歴史に触れる貴重な機会となるでしょう。

Q&A

Q海獣葡萄鏡の実物を見ることはできますか?
A現在、実物は奈良国立博物館で保管されており、香取神宮宝物館では精巧に製作されたレプリカが展示されています。レプリカでも唐代の優れた工芸技術と文様の美しさを十分に鑑賞できます。
Q香取神宮へのアクセス方法を教えてください。
AJR成田線佐原駅から路線バスで15分(300円)またはタクシーで10分(約2,000円)です。成田空港からは車で約25分、東京駅からは電車とバスで約1時間半から2時間でアクセスできます。無料駐車場も完備されています。
Q宝物館の開館時間と料金は?
A宝物館は午前8時30分から午後4時まで開館しており、拝観料は大人300円、小人100円です。年中無休で営業していますが、年末年始は開館時間が変更される場合があります。
Q外国人観光客向けのサービスはありますか?
A英語のパンフレットや案内板が整備されており、佐原駅の観光案内所には英語対応可能なスタッフが常駐しています。香取市の公式ウェブサイトにも英語ページが用意されています。
Q周辺でおすすめの食事処はありますか?
A佐原地区には300年以上の歴史を持つ山田うなぎ店をはじめ、鰻料理の老舗が多数あります。また、地元産の「恋する豚」を使った料理や、さつまいもスイーツ「いもっぷちーの」も人気です。

参考文献

千葉県教育委員会 - 海獣葡萄鏡
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/n140-001.html
香取神宮公式サイト - 宝物・文化財
https://katori-jingu.or.jp/about/treasure/
Wikipedia - Katori Shrine
https://en.wikipedia.org/wiki/Katori_Shrine
香取市公式サイト(英語版)- Katori Jingū Shrine
https://www.city.katori.lg.jp/sightseeing/multilingual/en/en-season/en-sawara/en-s_midokoro/en-s_katori.html
Visit Chiba - Katori Shrine
https://www.visitchiba.jp/things/katori-shrine/

基本情報

名称 海獣葡萄鏡(かいじゅうぶどうきょう)
英名 Sea Beast and Grape Mirror (Kaiju Budo Kyo)
製作年代 7~8世紀(唐時代)
材質 白銅(青銅)
寸法 直径29.6cm、縁高2.0cm
重量 4,560g
指定 国宝(1953年3月31日指定)
所蔵 香取神宮
所在地 千葉県香取市香取1697-1
展示場所 香取神宮宝物館(レプリカ展示)
原品保管 奈良国立博物館

最終更新日: 2026.01.16