唐時代の白銅鏡 ― 1953年に国宝

禽獣葡萄鏡は、愛媛県の大山祇神社が所蔵する唐時代の鏡で、1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定された。それに先立つ1901年(明治34年)3月27日には重要文化財となっている。員数は1面、種別は工芸品、指定番号は00109。読みは「きんじゅうぶどうきょう」である。

文化庁は国を中国、時代を唐とする。日本で作られたものではない。年代欄と西暦欄はいずれも空欄である。

寸法は径26.8センチメートル、縁厚1.7センチメートル。径が27センチメートル近い大形の円鏡で、鏡胎は総じて厚く、鏡面には緩い反りがある。

葡萄の蔓が地文になる

文化庁の品質・形状の記載は、文様の構成を段階的に説明する。

鏡背の図様は内外両区とも、外周に波状に旋曲した一本の葡萄の蔓に、果実と樹葉を整然と交互に配し、その蔓をさらに区画内に伸展させて地文とする。

一本の蔓が外周を波状に巡り、そこから区画の内側へ伸びて地の文様になる。果実と葉を交互に置くので、蔓に沿って規則的な繰り返しが生まれる。

鏡背は内区と外区に分かれる。その両方に同じ葡萄の蔓が地文として敷かれているわけである。文様が二層構造になっており、地文の上にさらに図が置かれる。

内区と外区で動きが違う

地文の上に置かれる図は、内区と外区で扱いが異なる。

内区には、海獣鈕を中心として、その地文の上に孔雀、鳳凰、狻猊(獅子)を対照的に配し、蔓より伸展した巻鬚の間、小禽小獣が嬉戯する様を表す。

鈕は鏡の中央にある紐通しの突起で、ここでは海獣の形をとる。中心の鈕を軸に、孔雀・鳳凰・狻猊が向かい合って置かれる。「対照的に配し」は左右対称の配置をさす。

一方、外区は地文の上に小禽小獣交互に右廻りに飛翔疾駆する様を表す。外区は右回りに一方向へ動く。

内区は静止した対称、外区は一方向の運動という違いになる。同じ鏡の背面で、二つの異なる構成が同心円状に並んでいる。

評価は調和にある

文化庁の解説はこう記す。鋳上がりもよく、整然と連続した葡萄唐草と、軽快な動きを見せる鳥獣とがよく調和し、全体に端麗な印象を与えている。香取神宮のものと共に伝存する海獣葡萄鏡の代表作である。

「調和」が評価の中心にある。規則的に連続する葡萄唐草と、動きのある鳥獣という性質の異なる二つが、同じ面で釣り合っている点を評価している。

もう一つの指摘は比較である。香取神宮のものと共に伝存する海獣葡萄鏡の代表作。同種の鏡の中で二つが代表作として並べられている。

指定名称は「禽獣葡萄鏡」だが、文化庁の解説は「海獣葡萄鏡」という語を用いる。指定名称と、種類を示す一般名が異なる。海獣葡萄鏡は唐時代に多く作られた鏡の一群をさす呼び名である。

鑑賞

所有は大山祇神社である。同社は多くの武具と鏡を伝えており、宝物館で展示されている。

開館日と拝観料は変更されることがあるため、訪問前に神社の案内で確認したい。実物を目当てにする場合は、出陳の有無を必ず確かめたい。

鏡は文様のある背面が見どころである。径26.8センチメートルの面に、地文と図が二層で配されるので、近くで見なければ細部は分からない。

大山祇神社は愛媛県今治市の大三島にある。交通は今治桟橋からバス、または今治から車で瀬戸内しまなみ海道を利用する。

Q&A

Q禽獣葡萄鏡はいつ国宝に指定されましたか。
A1953年(昭和28年)3月31日です。それに先立つ1901年(明治34年)3月27日に重要文化財となっています。員数は1面、種別は工芸品、指定番号は00109。所有は大山祇神社です。
Q日本で作られたものですか。
Aいいえ。文化庁は国を中国、時代を唐とします。年代欄と西暦欄はいずれも空欄です。白銅鋳製の大形の円鏡で、径26.8センチメートル、縁厚1.7センチメートルです。
Q文様はどのような構成ですか。
A外周に波状に旋曲した一本の葡萄の蔓に果実と樹葉を交互に配し、その蔓を区画内へ伸展させて地文とします。鏡背は内区と外区に分かれ、どちらも同じ葡萄の蔓を地文とし、その上にさらに図が置かれる二層構造です。
Q内区と外区はどう違いますか。
A内区は海獣鈕を中心に孔雀、鳳凰、狻猊を対照的に配し、巻鬚の間に小禽小獣が嬉戯する様を表します。外区は小禽小獣が交互に右廻りに飛翔疾駆する様です。内区は静止した対称、外区は一方向の運動という違いになります。
Qなぜ国宝に指定されたのですか。
A文化庁は「鋳上がりもよく、整然と連続した葡萄唐草と、軽快な動きを見せる鳥獣とがよく調和し、全体に端麗な印象を与えている」とし、香取神宮のものと共に伝存する海獣葡萄鏡の代表作であると記します。調和が評価の中心です。

基本情報

名称禽獣葡萄鏡(きんじゅうぶどうきょう)/文化庁の解説では海獣葡萄鏡の代表作とされる
所在地愛媛県今治市大三島町宮浦 大山祇神社
指定区分国宝(工芸品)/指定番号00109
指定年1901年(明治34年)3月27日 重要文化財/1953年(昭和28年)3月31日 国宝
員数1面
寸法径26.8センチメートル、縁厚1.7センチメートル。白銅鋳製の大形の円鏡で、鏡胎は厚く鏡面に緩い反りがある。鏡背は内区と外区に分かれ、葡萄の蔓を地文とし、内区に海獣鈕と孔雀・鳳凰・狻猊、外区に小禽小獣を配す。唐時代の中国製
所有者大山祇神社
公開状況大山祇神社の宝物館で展示。開館日と拝観料は変更されることがある

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 禽獣葡萄鏡
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/402
文化遺産オンライン 禽獣葡萄鏡
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/130904
大山祇神社 公式サイト
https://oomishimagu.jp/
文化庁 文化財の紹介
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/

最終更新日: 2026.09.04