総長96.3センチメートルの太刀拵 ― 1955年に国宝

牡丹唐草文兵庫鎖太刀拵は、愛媛県の大山祇神社が所蔵する鎌倉時代の太刀拵で、1955年(昭和30年)6月22日に国宝に指定された。それに先立つ1901年(明治34年)3月27日には重要文化財となっている。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は00181。読みは「ぼたんからくさもんひょうごぐさりたちこしらえ」である。

指定の対象は拵であって、刀身ではない。拵は鞘、柄、金具などの外装をいう。中に納める刀身は別の物件として扱われる。太刀拵だけで国宝に指定されている点が、この物件の性格を示す。

寸法は総長96.3センチメートル。文化庁は解説文を持たず、評価の言葉は記録されていない。年代欄と西暦欄も空欄で、時代欄が「鎌倉」とのみ記される。

部位ごとに彫り方を変える

文化庁の品質・形状の記載は、部位ごとの技法を細かく並べる。

総金具は金銅の牡丹唐草文彫。鞘の平地板は同じ文様の毛彫。長覆輪は無地。足金物の責金と石突は同文の高彫。覆輪は牡丹唐草文の鋤彫。飾鋲は枝牡丹文の容彫が四対。土手耳は牡丹文の高彫。大切羽は牡丹文の高彫透彫り。小切羽は菊花形である。

同じ牡丹唐草文を、部位によって毛彫・高彫・鋤彫・容彫・透彫と彫り分けている。毛彫は細い線を刻む技法、高彫は肉を盛り上げる技法、鋤彫は地を鋤き取る技法、容彫は形そのものを立体に作る技法、透彫は地を抜く技法である。

一つの文様を五通りの方法で表すわけである。部位の性質と面の大きさに応じて技法が選ばれている。柄は白鮫を着せる。

後補が5箇所に記される

文化庁の記載には、後から補われた部材が明記されている。

口金具(後補)、縁(後補)、飾鋲の中6個(後補)、大切羽の1枚(後補)、小切羽の1枚(後補)。五つの箇所に「後補」の注記がある。

後補は、失われた部材を後の時代に補ったものをいう。当初のままではないことが公的記録に明記されている。それでも指定を受けているのは、評価が全体の意匠と技法にあるためである。

飾鋲は四対、すなわち八個あるが、そのうち六個が後補である。当初のものは二個しか残っていないことになる。

沢瀉威鎧の欠失、黒楽茶碗の窯割れと同じく、傷や補いの記載と指定が両立している例である。

兵庫鎖という形式

兵庫鎖太刀は、鎖を用いて太刀を腰に吊る形式の拵をいう。

通常の太刀は帯取という革や組紐で吊るが、兵庫鎖太刀は金属の鎖を用いる。吊る部分が金属になることで、装飾の対象が増える。足金物の責金や石突に高彫が施されるのは、この形式に対応する。

牡丹唐草は、牡丹の花と葉を蔓で連ねた文様である。唐草は連続する文様なので、鞘のような細長い面に向く。鞘の平地板に毛彫で同文が施されるのはそのためである。

名称は「牡丹唐草文」「兵庫鎖」「太刀拵」の三つの要素からなる。文様、吊る形式、拵という区分が、そのまま名称になっている。

鑑賞

所有は大山祇神社である。同社は多くの武具を伝えており、宝物館で展示されている。

開館日と拝観料は変更されることがあるため、訪問前に神社の案内で確認したい。実物を目当てにする場合は、出陳の有無を必ず確かめたい。

拵は外装であるから、見どころは金具の彫りにある。総長96.3センチメートルの中に、五通りの彫り方が配されている。

大山祇神社は愛媛県今治市の大三島にある。交通は今治桟橋からバス、または今治から車で瀬戸内しまなみ海道を利用する。

Q&A

Q牡丹唐草文兵庫鎖太刀拵はいつ国宝に指定されましたか。
A1955年(昭和30年)6月22日です。それに先立つ1901年(明治34年)3月27日に重要文化財となっています。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は00181。所有は大山祇神社です。
Q刀身も含まれますか。
A含まれません。指定の対象は拵であって刀身ではありません。拵は鞘、柄、金具などの外装をいい、中に納める刀身は別の物件として扱われます。太刀拵だけで国宝に指定されている点が、この物件の性格を示します。
Qどのような技法が使われていますか。
A同じ牡丹唐草文を、部位によって毛彫・高彫・鋤彫・容彫・透彫と彫り分けています。毛彫は細い線を刻み、高彫は肉を盛り上げ、鋤彫は地を鋤き取り、容彫は形を立体に作り、透彫は地を抜く技法です。一つの文様を五通りの方法で表しています。
Q後補の部分はありますか。
A文化庁は口金具、縁、飾鋲の中6個、大切羽の1枚、小切羽の1枚に「後補」と注記しています。飾鋲は四対、すなわち八個のうち六個が後補で、当初のものは二個しか残っていません。当初のままではないことが公的記録に明記されています。
Q「兵庫鎖」とは何ですか。
A鎖を用いて太刀を腰に吊る形式です。通常の太刀は帯取という革や組紐で吊りますが、兵庫鎖太刀は金属の鎖を用います。吊る部分が金属になることで装飾の対象が増え、足金物の責金や石突に高彫が施されます。

基本情報

名称牡丹唐草文兵庫鎖太刀拵(ぼたんからくさもんひょうごぐさりたちこしらえ)
所在地愛媛県今治市大三島町宮浦 大山祇神社
指定区分国宝(工芸品)/指定番号00181
指定年1901年(明治34年)3月27日 重要文化財/1955年(昭和30年)6月22日 国宝
員数1口
寸法総長96.3センチメートル。総金具は金銅の牡丹唐草文彫、鞘の平地板は同文の毛彫、覆輪は鋤彫、石突と土手耳は高彫、飾鋲は枝牡丹文の容彫、大切羽は高彫透彫り、小切羽は菊花形。柄は白鮫着。口金具、縁、飾鋲の一部、切羽の一部は後補。鎌倉時代
所有者大山祇神社
公開状況大山祇神社の宝物館で展示。開館日と拝観料は変更されることがある

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 牡丹唐草文兵庫鎖太刀拵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/472
文化遺産オンライン 牡丹唐草文兵庫鎖太刀拵
https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/125867
大山祇神社 公式サイト
https://oomishimagu.jp/
文化庁 文化財の紹介
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/

最終更新日: 2026.09.04