8つの資産で構成される世界遺産
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群は、福岡県宗像市と福津市にまたがる世界文化遺産で、2017年(平成29年)7月にポーランドのクラクフで開かれた第41回世界遺産委員会で登録が決まった。日本国内では21件目の世界文化遺産である。
構成資産は8件である。沖ノ島(宗像大社沖津宮)、小屋島、御門柱、天狗岩、宗像大社沖津宮遙拝所、宗像大社中津宮、宗像大社辺津宮、新原・奴山古墳群。
このうち小屋島・御門柱・天狗岩は沖ノ島の周囲にある岩礁である。建造物でも遺跡でもない岩そのものが構成資産に含まれる点が、この世界遺産の構成の特徴にあたる。三つの岩礁は沖ノ島へ近づく際の目印であり、島への入口を示す鳥居のように見立てられてきた。
登録基準は二つ
適用された登録基準は(ii)と(iii)である。
基準(ii)は、ある期間または文化圏における価値観の交流を示すものである。沖ノ島の祭祀遺跡からは中国や朝鮮半島に由来する品が出土しており、東アジアの交流のなかで祭祀が営まれたことを示す。
基準(iii)は、現存する、あるいは消滅した文化的伝統や文明の存在を伝える証拠として無二であることを求める。古代の祭祀が形を変えながら現在の信仰へ続いているという連続性が、この基準に対応している。
登録の対象は遺跡と島と社殿であって、出土品ではない。出土品は「福岡県宗像大社沖津宮祭祀遺跡出土品」および「伝福岡県宗像大社沖津宮祭祀遺跡出土品」として、それぞれ別に指定されている。世界遺産の登録と、出土品の指定は別の制度なので、混同しないようにしたい。
沖ノ島には上陸できない
沖ノ島は宗像大社の御神体である。一般の上陸はできず、女人禁制が続いている。
島には現在も禁忌が残る。一木一草一石たりとも持ち出しが禁じられ、島で見聞きしたことを口外しない「お不言様」の慣わしがある。上陸する場合は海で禊を行う。
かつては毎年5月27日に限って男性のみ約200名が上陸できたが、2018年以降は神職以外の上陸が認められていない。世界遺産に登録された結果として、かえって立ち入りが厳しくなったという経緯である。
沖ノ島は九州本土から約60キロメートル沖にある。周囲約4キロメートル、最高地点は約244メートルである。
遙拝所という仕組み
上陸できない島をどう拝むか。その答えが構成資産に含まれている。
大島の北岸にある宗像大社沖津宮遙拝所は、沖ノ島を遥かに拝むための施設である。天候がよければ、ここから約49キロメートル先の沖ノ島を望むことができる。建物の向きと視線の先に、対象があるという構成である。
宗像大社は三宮からなる。沖ノ島の沖津宮に田心姫神、大島の中津宮に湍津姫神、九州本土の辺津宮に市杵島姫神を祀る。三女神が本土から沖合へ一直線に並ぶ配置は、玄界灘を渡る航路と対応している。
新原・奴山古墳群は福津市にあり、5世紀から6世紀にかけて築かれた宗像氏の墳墓群である。前方後円墳5基、円墳35基、方墳1基の計41基が現存する。沖ノ島祭祀を担った氏族の存在を示す資産にあたる。
訪ねる
沖ノ島には行けないが、他の構成資産は訪ねられる。
辺津宮は宗像市田島にあり、JR鹿児島本線の東郷駅からバスで約12分。境内の神宝館では出土品が保管・展示されている。中津宮と沖津宮遙拝所は大島にあり、神湊港渡船ターミナルからフェリーまたは旅客船で渡る。大島へは船の便に合わせた日程が要るので、時刻表を確認したい。
新原・奴山古墳群は福津市勝浦にあり、展望所から古墳群を一望できる。周囲は農地で、古墳の間を歩ける区域と入れない区域がある。
各資産の開館時間や渡船の運航は変更されることがあるため、訪問前に確認したい。
Q&A
- 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群はいつ世界遺産に登録されましたか。
- 2017年(平成29年)7月、ポーランドのクラクフで開かれた第41回世界遺産委員会で登録が決まりました。日本国内では21件目の世界文化遺産です。構成資産は8件で、福岡県宗像市と福津市にまたがります。
- 構成資産にはどのようなものがありますか。
- 沖ノ島(宗像大社沖津宮)、小屋島、御門柱、天狗岩、宗像大社沖津宮遙拝所、宗像大社中津宮、宗像大社辺津宮、新原・奴山古墳群の8件です。小屋島・御門柱・天狗岩は沖ノ島周囲の岩礁で、建造物でも遺跡でもない岩そのものが構成資産に含まれています。
- 沖ノ島には行けますか。
- 一般の上陸はできず、女人禁制が続いています。一木一草一石たりとも持ち出しが禁じられ、島で見聞きしたことを口外しない慣わしがあります。かつては毎年5月27日に男性のみ約200名が上陸できましたが、2018年以降は神職以外の上陸が認められていません。
- 遙拝所とは何ですか。
- 大島の北岸にある宗像大社沖津宮遙拝所は、上陸できない沖ノ島を遥かに拝むための施設です。天候がよければ約49キロメートル先の沖ノ島を望めます。建物の向きと視線の先に対象があるという構成で、これ自体が構成資産の一つです。
- 沖ノ島の出土品も世界遺産の登録対象ですか。
- いいえ。登録の対象は遺跡と島と社殿です。出土品は「福岡県宗像大社沖津宮祭祀遺跡出土品」および「伝福岡県宗像大社沖津宮祭祀遺跡出土品」として、それぞれ別に指定されています。世界遺産の登録と出土品の指定は別の制度です。
基本情報
| 名称 | 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(かみやどるしま むなかた・おきのしまとかんれんいさんぐん) |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県宗像市・福津市 |
| 指定区分 | 世界文化遺産/登録基準(ii)および(iii)/構成資産8件 |
| 指定年 | 2017年 世界遺産委員会(ポーランド・クラクフ)で登録決定 |
| 員数 | 構成資産8件(沖ノ島、小屋島、御門柱、天狗岩、沖津宮遙拝所、中津宮、辺津宮、新原・奴山古墳群) |
| 寸法 | 沖ノ島は九州本土から約60キロメートル沖、周囲約4キロメートル、最高地点約244メートル。沖津宮遙拝所から沖ノ島までは約49キロメートル。新原・奴山古墳群は41基が現存 |
| 所有者 | 宗像大社ほか |
| 公開状況 | 沖ノ島は一般の上陸不可、女人禁制。他の構成資産は訪問可。大島へは神湊港からの渡船による |
参考文献
- 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 公式サイト
- https://www.okinoshima-heritage.jp/
- 文化遺産オンライン 世界遺産と無形文化遺産
- https://bunka.nii.ac.jp/special_content/hlinkH
- 福津市 世界遺産
- https://www.city.fukutsu.lg.jp/soshiki/bunkazai/sekaiisan/
- 宗像大社 公式サイト
- https://munakata-taisha.or.jp/
最終更新日: 2026.09.03