1基の供養石塔 ― 1935年に国の指定

下鳥渡供養石塔は、福島県福島市下鳥渡にある鎌倉時代の石塔で、1935年(昭和10年)6月7日に国の指定を受けた。区分は史跡である。

ふりがなは、しもとりわたくようせきとうである。管理団体は福島市とされる。

文化庁は、陽泉寺の背後の丘の上にある、と記す。供養石塔は、亡くなった人の冥福を祈って建てる石の塔をいう。

誰が、誰のために建てたかが刻まれている

石の側面に、建てた人と、その目的が彫られている。

文化庁は、左側に、右志者爲悲母也平氏女敬白、右側に、正嘉二年大才戍午九月廿八日と刻せり、と記す。

左の銘は、この志は悲母のためである、平氏の女が敬って申す、と読める。悲母は、母を敬っていう仏教の言葉である。右の銘は、正嘉2年、戊午の年の9月28日で、西暦1258年にあたる。

平氏の家の女性が、母のために建てた石塔ということになる。建てた人の名は、平氏の女という言い方でだけ示される。

文祢麻呂墓では、墓誌に眠る人の名と亡くなった日が刻まれていた。

本件は、眠る人ではなく、祈った人とその相手が刻まれる。建てた側の言葉が石に残ることになる。

石の面に、阿弥陀の三尊が迎えに来る姿を彫る

石の表に、仏が死者を迎えに来る場面が表されている。

文化庁は、安山岩質凝灰岩の石面を研磨し、表面に弥陀三尊来迎仏を半肉彫に造顕したもの、と記す。

弥陀三尊は、阿弥陀如来と左右の二菩薩をいう。来迎は、人が亡くなるとき阿弥陀仏が迎えに来るという考えを表す。半肉彫は、像を面から半ばほど浮き上がらせて彫る技法である。

石の面をまず磨き、そこに三尊を浮き彫りにする。

文化庁は、鎌倉時代この地方における弥陀来迎思想の表現を見るべき稀有のもの、と結ぶ。

母のために建てた石に、阿弥陀が迎えに来る姿を刻む。祈りの目的と彫られた図とが、一つにつながることになる。

大きさは尺で記され、解説は指定当時の文体のまま

記録そのものが、書かれた時代の形を残している。

文化庁は、高さ地上5尺9寸5分、幅4尺2寸、厚さ1尺2寸と記す。およそ高さ1.8メートル、幅1.27メートル、厚さ0.36メートルにあたる。

解説は、陽泉寺ノ背後ノ丘上ニアリ、と片仮名まじりの文語で書かれる。

中房温泉の膠状珪酸および珪華でも、解説は1928年当時の片仮名の文語体だった。

本件も、1935年の指定のときの文体のまま残る。寸法も、当時の単位である尺で記されることになる。

文化遺産オンラインの解説では、弥陀の弥にあたる字が表示されず、■の記号に置き換わっている。旧字体の彌が表示できないためと考えられる。

見学

所在は福島県福島市下鳥渡で、陽泉寺の背後の丘の上にある。管理団体は福島市である。

石は安山岩質凝灰岩で、表面を研磨して三尊を彫る。側面の左右に銘がある。

刻まれた年は1258年で、指定は1935年である。

寺院の背後の屋外にあり、見学の可否や経路は管理団体と寺院の定めによる。訪問前に確認したい。

所有者の記録はない。

Q&A

Q下鳥渡供養石塔はいつ指定されましたか。
A1935年(昭和10年)6月7日に国の指定を受けました。区分は史跡です。
Q誰が建てたのですか。
A左側の銘に「右志者爲悲母也平氏女敬白」とあり、平氏の女性が母のために建てたと読めます。
Qいつ建てられましたか。
A右側の銘に正嘉2年9月28日とあり、西暦1258年にあたります。
Q何が彫られていますか。
A研磨した石面に、弥陀三尊来迎仏を半肉彫にしています。阿弥陀が死者を迎えに来る姿です。
Qどのくらいの大きさですか。
A高さ地上5尺9寸5分、幅4尺2寸、厚さ1尺2寸で、およそ高さ1.8メートル、幅1.27メートル、厚さ0.36メートルです。

基本情報

名称下鳥渡供養石塔(しもとりわたくようせきとう)
所在地福島県福島市下鳥渡(陽泉寺の背後の丘上)
指定区分史跡/建造物や美術品ではなく遺跡としての指定
指定年1935年(昭和10年)6月7日 指定
員数1基の石塔
寸法高さ地上5尺9寸5分(約1.8メートル)、幅4尺2寸(約1.27メートル)、厚さ1尺2寸(約0.36メートル)。安山岩質凝灰岩の石面を研磨し、弥陀三尊来迎仏を半肉彫とする。銘に1258年の年紀
所有者記録に記載なし(管理団体は福島市)
公開状況屋外にあり、見学の可否や経路は管理団体と寺院の定めによる

参考文献

文化遺産オンライン 下鳥渡供養石塔
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/201116
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/
福島市
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/
福島県 文化財
https://www.pref.fukushima.lg.jp/

最終更新日: 2026.09.22