重田家住宅:群馬に佇む明治期医家住宅の至宝

群馬県佐波郡玉村町、利根川の堤防近くに静かに佇む重田家住宅。約300年の歴史を持つ医家の邸宅として、明治時代の建築様式と日本の医療文化を今に伝える貴重な文化遺産です。7棟の国登録有形文化財を有するこの広大な屋敷は、訪れる人々に江戸から昭和へと続いた名門医家の暮らしを偲ばせてくれます。

「小泉重田の門をくぐるだけで治る」伝説の医家

重田家は江戸時代中期より代々医師を家業とした名家です。家伝によると、初代当主・重田三郎兵衛英信は、播州(現在の兵庫県)姫路城主のお抱え医師であり、その妻は姫路城の姫君であったと伝えられています。約300年前にこの地に移り住み、医療活動を始めました。

最盛期には「群馬の医家の三家」の一つに数えられるほどの名声を博した重田家。その家伝薬は大変よく効くことで知られ、地域の人々からは「小泉重田の門をくぐるだけで病気が治る」と称されました。この診療所は昭和25年(1950年)3月まで、長きにわたり地域医療の要として機能し続けました。

主屋:医療と暮らしが融合した空間

主屋は明治16年(1883年)に上棟された、木造2階建ての堂々たる建築です。建築面積約207平方メートル、桁行8間・梁間5間規模の切妻造、桟瓦葺の建物で、南と西の2面に下屋を架けて縁廊下を巡らせています。

内部は6間取りの構成となっており、これは農家の富裕層に見られる平面形式です。ただし医家であることから、土間は農家より狭く設計されています。患者用玄関の土間に接して待合室・薬局を設け、その上手正面側の「オモテザシキ」を診察室としていました。

正面ほぼ中央に設けられた式台玄関は、この住宅の最も印象的な特徴の一つです。格式の高さを示すこの正式な玄関は、重田家が地域社会で占めていた重要な地位を明確に物語っています。

国登録有形文化財7棟の紹介

平成13年(2001年)11月20日、重田家住宅の7棟が国の登録有形文化財として登録されました。それぞれが屋敷全体の歴史的価値を構成する重要な要素となっています。

主屋(明治16年・1883年)

住宅兼診療所として建てられた木造2階建ての中心的建物です。土間廻りと背面の下屋、建具等は改修されていますが、当時の状況をよく残しています。現在、2階には1階にあった診察室を復元した展示スペースがあり、白衣の着用や聴診器を使ったお医者さん体験を無料で楽しむことができます。

井戸屋形(大正初期)

主屋の東方、東の蔵の西南に位置します。約3メートル四方の亀甲積み石積基壇の上に建ち、ころびをつけた4本柱の上部を頭貫と方杖により固め、南北棟・切妻造・桟瓦葺の屋根を架けています。実用的な井戸覆いでありながら、美しい意匠が施された、屋敷構えに欠くことのできない存在です。

表門及び塀(表門:明治23年、塀:明治25年頃)

主屋玄関の南方に位置する間口約3メートルほどの1間1戸の薬医門で、両脇には通用口を開けています。敷地南辺沿いの塀は石積基壇の上に載った桟瓦葺の板塀で、延長80メートルに及びます。門及び塀越しの主屋、蔵、樹木などとともに、庄屋屋敷風の格式ある屋敷景観を形成しています。現在の塀は平成23年(2011年)に明治期の姿を再現したものです。

穀蔵(明治31年頃・1898年)

主屋背面側の台所の東方に建つ、桁行4間・梁間2間半規模の切妻造・鉄板葺・平入の平屋建土蔵です。南面に庇をつけて入口を設け、北面に窓を開けただけの閉鎖的な造りは、穀物保管という本来の用途を反映しています。建築面積33平方メートル。屋敷地の主要構成要素の一つです。

西の蔵(昭和2年頃・1927年)

主屋の西方に建つ東西棟・切妻造・桟瓦葺の総2階建て土蔵で、建築面積33平方メートル。外部はモルタル洗い出し仕上げとし、北面に下屋を架けて蔵前とし、主屋北西隅に連絡しています。階下東側は6畳規模の蔵座敷となっており、隠居部屋としての使用を物語る、家財蔵と居住空間を兼ね備えた建物です。

東の蔵(昭和3年頃・1928年)

穀蔵の南方に建つ、桁行2間・梁間1間半規模の南北棟・切妻造・桟瓦葺・平入の平屋建土蔵です。建築面積わずか9.9平方メートルと小規模ながら、薬の材料蔵として、診療所の運営に不可欠な存在でした。外部は西の蔵と同様のモルタル洗い出し仕上げで、屋敷全体の統一感を生み出しています。

外便所(昭和元年頃・1926年)

主屋東南方の庭先に建つ独立建家で、患者用の便所として建設されました。建坪2坪に満たない小屋(建築面積5.8平方メートル)ですが、南北棟・寄棟造・桟瓦葺で、外周を真壁造とした丁寧なつくりが特徴です。診療所を兼ねた民家風住宅における患者用便所のあり方を示す、貴重な実例として価値があります。

文化財指定の価値

重田家住宅が国登録有形文化財に選ばれた理由は複数あります。まず、明治期の医家住宅兼診療所として極めて良好な保存状態を維持している点が挙げられます。待合室、診察室、薬品倉庫が住宅内に配置された構成は、伝統的な日本建築に医療機能がどのように統合されていたかを明確に示しています。

次に、堂々たる表門から小さな患者用便所に至るまで、建造物群全体が揃っていることで、裕福な医家がどのように機能していたかの包括的な姿を伝えている点です。各建物が全体に貢献し、伝統的な日本の空間階層と機能的な配置の概念を示しています。

さらに、明治後期から昭和初期にかけての建築技法と様式を網羅しており、関東地方の農村建築の発展について貴重な知見を提供しています。

重田家住宅の見どころと体験

令和3年(2021年)7月29日、重田家より建造物と敷地、及び周囲の農地が玉村町に寄贈されました。現在、町では定期的な公開と活用に向けた取り組みを進めています。

主屋2階には、かつて1階にあった診察室を復元した展示スペースがあり、白衣の着用や聴診器を使った「お医者さん体験」を無料で楽しめます(子どもや学生が対象)。立体の人体模型パズルも無料で誰でも体験可能です。当時の面影を残した趣のある内装、家具、電話、医療器具の見学は、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえます。

重田家住宅では、マルシェ、映画鑑賞会、ライトアップ、健康講座、怪談会など、毎月さまざまなイベントが開催されています。着物・袴の衣装体験も実施しており、毎月第4土曜日またはイベント開催日に体験できます(予約制・1回500円)。

庭では四季折々の花を楽しめるほか、近くには東部スポーツ広場公園も整備されており、運動や散策も楽しめます。

周辺の観光スポット

重田家住宅と合わせて訪れたい玉村町の見どころをご紹介します。

  • 玉村八幡宮:建久6年(1195年)に源頼朝の命により創建された歴史ある神社。本殿は国指定重要文化財で、近年はSNSで話題の「花手水」が人気を集めています。重田家住宅から約3キロメートル。
  • 道の駅 玉村宿:関越自動車道高崎玉村スマートICに直結した道の駅。新鮮な地場産野菜、「肉のワンダーランド」として知られる玉村町自慢の肉類、お土産品などが揃います。
  • 玉村町歴史資料館:玉村町文化センター内にあり、江戸時代に日光例幣使街道の宿場町として栄えた玉村町の歴史を紹介しています。
  • 玉村町の河津桜:早春には、国道354号線沿いに約200本の河津桜が咲き誇り、美しいピンクの並木道を作り出します。

Q&A

Q外国語対応はありますか?
A現在、ガイドは主に日本語で行われていますが、多くの展示は言葉の壁を越えて楽しめる視覚的な要素を含んでいます。外国人の方のご来場も歓迎しております。詳しい説明については翻訳アプリのご利用をお勧めします。事前に玉村町生涯学習課にお問い合わせいただければ、外国語対応についてご相談いただけます。
Qアクセス方法を教えてください
A電車・バスの場合:JR高崎線新町駅より玉村町役場行きバスに乗車し、「小泉」または周辺バス停で下車。車の場合:関越自動車道高崎玉村スマートICよりアクセス可能です。駐車場は約40台分(無料)を利用できます。重田家住宅の東側・南側に駐車スペースがあります。
Q子ども連れでも楽しめますか?
Aはい、お子様にもお楽しみいただけます。2階の「お医者さん体験」では白衣を着て聴診器を使う体験ができ(子ども・学生対象・無料)、立体の人体模型パズルも人気です。敷地内は広々としており、近くの東部スポーツ広場公園と合わせて、お子様連れでゆったりとお過ごしいただけます。
Qおすすめの訪問時期はいつですか?
A四季を通じてそれぞれの魅力があります。春は近くの河津桜並木が見頃を迎え、庭園では季節の花々が楽しめます。秋から冬にかけてはライトアップイベントが開催されることも。玉村町公式ウェブサイトで最新のイベント情報をご確認ください。
Q写真撮影はできますか?
A個人的な使用を目的とした撮影は、敷地内全体で可能です。伝統的な建物や庭園は、日本の歴史的な雰囲気を捉えるのに絶好の被写体です。プロの撮影やロケーション撮影については、事前に町役場へご連絡ください。時代劇や歴史作品のロケ地としても利用されています。

基本情報

名称 重田家住宅(しげたけじゅうたく)
文化財指定 国登録有形文化財(建造物)7棟
平成13年(2001年)11月20日登録
主屋竣工 明治16年(1883年)
所在地 〒370-1144 群馬県佐波郡玉村町大字小泉42番地
お問い合わせ 玉村町教育委員会 生涯学習課 文化財係
TEL:0270-30-6180(直通)
開館時間 10:00〜16:00(最終入館15:30)
開館日 水曜日・木曜日・金曜日・毎月第4土曜日(12月は第3土曜日)
※土曜日・日曜日はイベント開催時に開館
休館日 月曜日・火曜日・第4土曜日を除く土曜・日曜・祝日・年末年始
※臨時休館あり
入館料 無料
駐車場 約40台(無料)
※重田家住宅の東側・南側に駐車可能
アクセス 電車:JR高崎線新町駅よりバス「玉村町役場」行き乗車
車:関越自動車道高崎玉村スマートIC利用

参考文献

国登録有形文化財「重田家住宅」公開・活用情報 - 玉村町
https://www.town.tamamura.lg.jp/docs/2022042600015/
重田家住宅 - 玉村町魅力発信機構
https://www.tama-miryoku.com/spot/spot-2211
重田家住宅主屋 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/167822
重田家住宅西の蔵 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/115394
重田家住宅東の蔵 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/178736
重田家住宅外便所 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/149125
重田家住宅表門及び塀 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/138288
重田家住宅穀蔵 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/182423
重田家住宅井戸屋形 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/115597
国登録有形文化財 重田家住宅 - 朝日ぐんま
https://www.asahigunma.com/kyodonootakara_38/

最終更新日: 2026.01.27

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