1領の胴丸 ― 1952年に国宝
黒韋威胴丸〈兜、大袖付〉は、広島県の厳島神社が所有する南北朝時代の工芸品で、1899年(明治32年)8月1日に重要文化財となり、1952年(昭和27年)3月29日に国宝に指定された。員数は1領である。
1899年8月1日の重要文化財は、籬菊螺鈿蒔絵硯箱と同じ日である。1952年3月29日の国宝は、天寿国繡帳残闕、金剛峯寺不動堂、正福寺地蔵堂と同じ日になる。
胴丸は中世の甲冑の一種で、胴が体に密着し、着るのが簡便な形式をいう。兜と大袖が付くことが名称に示されている。
同じ名の国宝が、奈良にもある
黒韋威胴丸〈兜、大袖付〉という名の国宝は、一件ではない。
もう一件は奈良県の春日大社が所有する。名称も、兜と大袖が付くことも同じである。
指定の日は大きく違う。春日大社のものは1927年(昭和2年)4月25日に重要文化財、2016年(平成28年)8月17日に国宝である。
本件は1899年の重要文化財、1952年の国宝である。国宝となった年で64年の開きがある。
太山寺本堂では、同名の国宝が兵庫県と愛媛県に二件あった。あちらは建造物で、梁間と屋根材で見分けられる。
本件と春日大社のものは工芸品である。見分けるには所有者と指定の日を見ることになる。
旧記事は、奈良の記録を典拠にしていた
この記事の書き直しにあたって、重大な取り違えが見つかった。
旧記事は厳島神社の物件として書かれながら、典拠に春日大社の物件の記録を引いていた。
さらに、春日大社所蔵品との比較という見出しを立てていた。同じ名の別物件を、比較の対象として扱っていたことになる。
犀角柄刀子では、旧記事が正倉院の宝物として全面的に書かれていた。あちらは所有者も所在も違う別物件との取り違えである。
本件は名称が完全に一致するため、より紛れやすい。所有者を確かめなければ区別できない。
本稿では、文化庁の記録によって確認できる厳島神社の物件の情報のみを記す。細部の造りについては、春日大社のものと混同する恐れがあるため記さない。
胴丸という形式について
甲冑の種類が、用途の違いによって分かれる。
中世における甲冑は、大鎧、胴丸、腹巻の三種類に大別される、とされる。
大鎧は騎乗の武将・大将格が着用し、兜・大袖とともに大形かつ重厚で、騎射戦における堅牢性を重視したもの、と説明される。
これに対し、胴丸および腹巻は、徒歩での機動性と軽快な動きを求めて、体に密着して、着装も簡便な構造となっている、とされる。
馬に乗るか、歩くかで形が分かれている。赤絲威鎧と白絲威褄取鎧はいずれも鎧、すなわち大鎧である。
本件は胴丸で、歩く側の形式にあたる。兜と大袖が付くのは、大鎧の要素を備えている点になる。
鑑賞
所有は厳島神社である。文化庁データベースの所在地の欄は空で、これで15件目になる。
同じ厳島神社は金銅密教法具も所有している。こちらも工芸品である。
神社が保管する甲冑であり、常設で公開される性格のものではない。
員数の単位は領である。赤絲威鎧、白絲威褄取鎧と同じ数え方になる。
展示の予定は変わることがあるため、訪問前に神社の案内で確認したい。
Q&A
- この胴丸はいつ指定されましたか。
- 1899年(明治32年)8月1日に重要文化財、1952年(昭和27年)3月29日に国宝へ指定されました。員数は1領、所有は厳島神社です。
- 同じ名の国宝が他にもありますか。
- あります。奈良県の春日大社が所有する同名の胴丸も国宝です。そちらは1927年に重要文化財、2016年に国宝で、指定の日が大きく違います。
- 胴丸とはどのような甲冑ですか。
- 中世の甲冑は大鎧・胴丸・腹巻の三種類に大別されます。胴丸は「徒歩での機動性と軽快な動きを求めて、体に密着して、着装も簡便な構造」とされます。
- 大鎧とはどう違うのですか。
- 大鎧は「騎乗の武将・大将格が着用」し「騎射戦における堅牢性を重視した」ものとされます。馬に乗るか歩くかで形式が分かれています。
- どこで見られますか。
- 文化庁データベースの所在地の欄は空で、所有者は厳島神社とされます。神社が保管する甲冑で、常設の公開ではありません。
基本情報
| 名称 | 黒韋威胴丸〈兜、大袖付〉(くろかわおどしどうまる)/同名の国宝が春日大社にもある |
|---|---|
| 所在地 | 文化庁データベースの所在地の欄は空。所有者は厳島神社とされる |
| 指定区分 | 国宝(工芸品) |
| 指定年 | 1899年(明治32年)8月1日 重要文化財/1952年(昭和27年)3月29日 国宝 |
| 員数 | 1領 |
| 寸法 | 細部の造りについては、同名で春日大社が所有する別の国宝と混同する恐れがあるため本稿では記さない。胴丸は大鎧・腹巻とともに中世の甲冑を三分する形式で、体に密着し着装が簡便とされる。時代は南北朝 |
| 所有者 | 厳島神社 |
| 公開状況 | 神社が保管する甲冑で、常設の公開ではない |
参考文献
- 厳島神社 公式サイト
- https://www.itsukushimajinja.jp/
- 文化遺産オンライン 黒韋威胴丸〈兜、大袖付〉(春日大社所有の同名物件)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/367017
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
- 広島県 文化財
- https://www.pref.hiroshima.lg.jp/
最終更新日: 2026.09.06