1具の法具 ― 1955年に国宝

金銅密教法具は、広島県の厳島神社が所有する鎌倉時代の工芸品で、1899年(明治32年)8月1日に重要文化財となり、1955年(昭和30年)6月22日に国宝に指定された。員数は1具、指定番号は00180である。

1899年8月1日の重要文化財は、同じ厳島神社の黒韋威胴丸、籬菊螺鈿蒔絵硯箱と同じ日である。1955年6月22日の国宝は、大善寺本堂と同じ日になる。

1具は五つの物からなる。金剛盤、五鈷鈴、独鈷杵、三鈷杵、五鈷杵である。文化庁データベースの所在地の欄は空で、これで16件目になる。

三つの杵が、0.9センチメートルの差で並ぶ

寸法が、五つの物それぞれについて記される。

独鈷杵は総長18.5センチメートル、三鈷杵は総長18.8センチメートル、五鈷杵は総長19.4センチメートルとされる。

三つの杵が、最も短いものと最も長いものの差0.9センチメートルのなかに収まっている。

鈷は先端の枝分かれをいう。独鈷は一つ、三鈷は三つ、五鈷は五つである。鈷の数が増えるほど、わずかに長くなっている。

五鈷鈴は総高20.9センチメートル、鈴口径8.9センチメートルである。金剛盤には七つの数値が挙げられ、最も大きい横28.6センチメートルから、胎厚0.3センチメートル、脚高3.5センチメートルまでが記される。

胎の厚さ0.3センチメートルまで記されている。薄さが数値で示されていることになる。

後の物が、前の物との差だけで記される

品質・形状の欄で、記述の仕方が途中から変わる。

独鈷杵までは、鋳銅鍍金であること、鋒の断面、把の鬼面などが順に書かれる。

三鈷杵になると、把は鬼面四の布置形状などの細部は独鈷とやや異なるが他はこれに等しい、とされる。

五鈷杵にいたっては、鬼面の細部以外は三鈷杵とほとんど同じ、の一文で終わる。

沃懸地酢漿平文兵庫鎖太刀では、解説文の全体がもう一方との違いだけでできていた。あちらは別の物件との比較である。

本件は一つの記録のなかで、後に出てくる物ほど記述が短くなる。同じ一具の内側で、前の記述に寄りかかっていることになる。

盤と版が、同じ記録のなかで混ざる

同じ物の名が、二通りに書かれている。

品質・形状の欄では、金剛盤である。盤は形式通行の四葉形で、とある。

解説文では、三種の杵と五鈷鈴、金剛版の皆具、とされる。

盤と版で字が違う。籬菊螺鈿蒔絵硯箱では、同じ記録のなかで覆輪と複輪が混ざっていた。

沃懸地の二口の太刀では、佩緒と掃緒が二つの記録のあいだで揃わなかった。

本件は同じ記録の欄をまたいで揃っていない。本稿は盤と解して記す。

鑑賞

所有は厳島神社である。所在都道府県の欄は広島県とされるが、所在地の欄は空である。

評価に、逆接が二つ重なる。当初の一具と見られ、その形姿は温雅優麗の中にも鋭く、繊細ながらも技巧に流れず、とある。

穏やかであるが鋭い、細かいが技巧に走らない、という組み立てである。二つの相反する評価が続けて置かれている。

結びは、鎌倉時代の製作にかかる和様密教法具の最高峰をなす貴重な遺品、とされる。和様とされている点は、密教法具が大陸に由来しながら日本風になったことを示している。

金銅錫杖頭では、中国から渡ってきた物が日本の技術に影響を与えたと記されていた。本件はその先にある、日本で作られた形になる。神社が保管する法具であり、常設で公開される性格のものではない。訪問前に確認したい。

Q&A

Q金銅密教法具はいつ指定されましたか。
A1899年(明治32年)8月1日に重要文化財、1955年(昭和30年)6月22日に国宝へ指定されました。員数は1具、所有は厳島神社です。
Q何が含まれるのですか。
A金剛盤、五鈷鈴、独鈷杵、三鈷杵、五鈷杵の五つです。文化庁は「三種の杵と五鈷鈴、金剛版の皆具」とし、当初からの一具と見ています。
Q三つの杵はどう違うのですか。
A先端の枝分かれの数が違います。独鈷は1つ、三鈷は3つ、五鈷は5つです。総長は18.5、18.8、19.4センチメートルで、差は0.9センチメートルに収まります。
Q記録に揺れはありますか。
Aあります。品質・形状の欄は「金剛盤」、解説文は「金剛版」で字が揃っていません。本稿は盤と解しています。
Q何が評価されているのですか。
A文化庁は「その形姿は温雅優麗の中にも鋭く、繊細ながらも技巧に流れず、鎌倉時代の製作にかかる和様密教法具の最高峰をなす貴重な遺品」と記します。

基本情報

名称金銅密教法具(こんどうみっきょうほうぐ)/解説文では金剛版、品質・形状の欄では金剛盤と字が揃わない
所在地所在都道府県の欄は広島県。所在地の欄は空で、所有者は厳島神社とされる
指定区分国宝(工芸品)/指定番号00180
指定年1899年(明治32年)8月1日 重要文化財/1955年(昭和30年)6月22日 国宝
員数1具(金剛盤・五鈷鈴・独鈷杵・三鈷杵・五鈷杵の5点)
寸法金剛盤は横28.6センチメートル、胎厚0.3センチメートル、脚高3.5センチメートルなど7つの数値が記される。五鈷鈴は総高20.9、鈴口径8.9センチメートル。独鈷杵は総長18.5、三鈷杵は18.8、五鈷杵は19.4センチメートル。いずれも鋳銅鍍金。時代は鎌倉
所有者厳島神社
公開状況神社が保管する法具で、常設の公開ではない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 金銅密教法具
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/471
文化遺産オンライン 金銅密教法具
https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/189006
厳島神社 公式サイト
https://www.itsukushimajinja.jp/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.06