経蔵に置かれた4点 ― 1958年に国宝
中尊寺経蔵堂内具は、岩手県西磐井郡平泉町の中尊寺経蔵にある仏具で、1958年(昭和33年)2月8日に国宝に指定された。それに先立つ1951年(昭和26年)6月9日には重要文化財となっている。種別は工芸品、所有は大長寿院である。
文化庁は時代を「鎌倉」とする。旧来の記述に「平安時代末期の傑作」とするものが見られるが、文化庁の記載は鎌倉である。同じ中尊寺でも、金色堂堂内具の時代欄は平安であり、二つの堂内具で時代の記載が異なる。
文化庁の一つ書は、木造礼盤1基、螺鈿平塵案1基、磬架1基、螺鈿平塵燈台1基を挙げる。計4点である。ほかに孔雀文磬1面が附指定となっている。
螺鈿が剥落し、彫痕だけが残る
文化庁の品質・形状の記載で最も目を引くのは、磬架についての一文である。
木製。刳形のある脚上に柱を立て、両端蕨手の山形梁木を乗せる。元平塵地螺鈿製であったが、剥落甚だしく彫痕のみ残る。
螺鈿は貝を薄く切って漆地に嵌める装飾である。その貝がほとんど剥がれ落ち、嵌めるために彫った跡だけが残っている。装飾そのものは失われ、装飾があった痕跡が残る状態である。
それでも金具は残る。蕨手の先と夾金具は金銅魚々子地に宝相華唐草文を鋤彫し、花先を猪目に透かす。柱の根巻にも同文の四葉座と立上り金具を設ける。貝は失われ、金具は残ったという対比になる。
木造礼盤にも同様の記載がある。金具の一部に緑3個、白2個の瑠璃玉が残存する。残っている玉が5個と数えられている。
4点に共通する文様
一つ書の4点には、共通する要素がある。
礼盤の金具は両花先魚々子地に宝相華文を鋤彫、平塵案の金具は金銅魚々子地に宝相華唐草文を毛彫、磬架の金具は金銅魚々子地に宝相華唐草文を鋤彫、燈台の金具も金銅魚々子地に宝相華唐草文を鋤彫である。
魚々子地に宝相華文という組み合わせが、4点すべてに現れる。魚々子は小さな円を密に打った地文、宝相華は空想上の花を唐草に組んだ文様である。
別々の器物でありながら、金具の文様で揃えられている。一具として作られたことを示す。前件の牡丹唐草文兵庫鎖太刀拵が一つの器物の中で技法を彫り分けたのに対し、こちらは複数の器物で文様を揃えている。
寸法と形
文化庁は4点それぞれの寸法を記す。
礼盤は高さ15.4センチメートル、方65.4センチメートル。平塵案は総高77.6センチメートル、甲板は縦34.1センチメートル、横66.3センチメートル。磬架は高さ57.9センチメートル、横55.1センチメートル。螺鈿平塵燈台は高さ80.9センチメートル、底径24.8センチメートル。
礼盤は低く、燈台は高い。礼盤は導師が座る台なので床に近く、燈台は明かりを掲げるので背が高い。用途がそのまま高さに現れている。
平塵案の脚は断面五角形のいわゆる鷺脚で、付け根に葉状の鰭を飾る。燈台は総体の平塵地に螺鈿で蝶と宝相華を散らす。燈台には蝶が加わる点が、他の3点と異なる。
拝観
所有は大長寿院である。金色堂堂内具の所有が金色院であるのに対し、経蔵堂内具は別の院が所有している。
中尊寺の讃衡蔵で寺の宝物が展示されている。拝観時間と拝観料は季節により変わることがあるため、訪問前に中尊寺の案内で確認したい。
4点すべてが同時に展示されるとは限らない。特に磬架は螺鈿が失われているため、展示の際は彫痕を見ることになる。
交通はJR東北本線の平泉駅から徒歩約25分、またはバスを利用する。
Q&A
- 中尊寺経蔵堂内具はいつ国宝に指定されましたか。
- 1958年(昭和33年)2月8日です。それに先立つ1951年(昭和26年)6月9日に重要文化財となっています。種別は工芸品、所有は大長寿院。文化庁は時代を鎌倉とします。
- 何が含まれますか。
- 文化庁の一つ書は、木造礼盤1基、螺鈿平塵案1基、磬架1基、螺鈿平塵燈台1基の計4点を挙げます。ほかに孔雀文磬1面が附指定となっています。
- 磬架の螺鈿はどうなっていますか。
- 文化庁は「元平塵地螺鈿製であったが、剥落甚だしく彫痕のみ残る」と記します。貝がほとんど剥がれ落ち、嵌めるために彫った跡だけが残っている状態です。一方で金銅の金具は残っています。
- 4点に共通する特徴はありますか。
- 金具の文様です。礼盤、平塵案、磬架、燈台のいずれも魚々子地に宝相華文を施しています。魚々子は小さな円を密に打った地文、宝相華は空想上の花を唐草に組んだ文様で、別々の器物でありながら文様で揃えられています。
- 金色堂堂内具とは違うものですか。
- 別件です。所有も、経蔵堂内具は大長寿院、金色堂堂内具は金色院と異なります。時代の記載も、経蔵堂内具は鎌倉、金色堂堂内具は平安と分かれています。どちらにも孔雀文磬1面が附指定となっています。
基本情報
| 名称 | 中尊寺経蔵堂内具(ちゅうそんじきょうぞうどうないぐ) |
|---|---|
| 所在地 | 岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関 中尊寺 |
| 指定区分 | 国宝(工芸品)/孔雀文磬1面は附指定/金色堂堂内具は別件 |
| 指定年 | 1951年(昭和26年)6月9日 重要文化財/1958年(昭和33年)2月8日 国宝 |
| 員数 | 文化庁の員数欄は空欄。一つ書は木造礼盤1基、螺鈿平塵案1基、磬架1基、螺鈿平塵燈台1基を挙げ、あわせて4点 |
| 寸法 | 礼盤は高さ15.4センチメートル、方65.4センチメートル。平塵案は総高77.6センチメートル、甲板は縦34.1センチメートル、横66.3センチメートル。磬架は高さ57.9センチメートル、横55.1センチメートル。燈台は高さ80.9センチメートル、底径24.8センチメートル。鎌倉時代 |
| 所有者 | 大長寿院 |
| 公開状況 | 中尊寺の讃衡蔵で展示。拝観時間と拝観料は季節により変わることがある |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 中尊寺経蔵堂内具
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/514
- 文化遺産オンライン 中尊寺経蔵堂内具
- https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/203829
- 中尊寺 中尊寺の歴史
- https://www.chusonji.or.jp/know/history.html
- 中尊寺 拝観のご案内
- https://www.chusonji.or.jp/worship/
最終更新日: 2026.09.04