建長2年の銘をもつ磬 ― 1953年に国宝
孔雀文磬は、岩手県西磐井郡平泉町の中尊寺にある鎌倉時代の磬で、1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定された。それに先立つ1929年(昭和4年)4月6日には重要文化財となっている。員数は1面、種別は工芸品、指定番号は00089。所有は地蔵院、管理団体は宗教法人中尊寺である。
磬は法会の際に磬架に懸けて打ち鳴らす仏具である。文化庁は年代を建長2年(1250年)とし、ト書に「建長二年正月日施入在銘」と記す。年が銘文で確定している。
寸法は肩幅32.4センチメートル、裾張32.6センチメートル、高さ13.0センチメートル、撞座径9.5センチメートル、縁厚1.2センチメートル、重さ2,100グラム。肩幅と裾張がほぼ同寸である。
表と裏で孔雀の姿が違う
文化庁の品質・形状の記載は、両面の違いを明記する。
鋳銅鍍金。上下縁各三弧よりなる通常形式の両面磬で、肩幅、裾張りはほとんど同寸の大形な作りで山形は低い。中央に大形の優麗な撞座を、左右に大きく孔雀文を鋳出して毛彫りを加える。表裏ほとんど同文であるが、表面は孔雀を花喰鳥につくっている。
花喰鳥は、花や枝をくわえた鳥の姿をいう。裏の孔雀は何もくわえず、表の孔雀は花をくわえている。「ほとんど同文」でありながら、この一点だけが違う。
鐶は平たく大きい。鐶は磬架に懸けるための金具である。
銘文が納入先を記す
表裏の撞座の両脇に陰刻銘がある。
表は「奉施入毛越寺千手堂 建長二年」、裏は「奉施入毛越寺千手堂 建長二年正月日」と読む。表と裏に同趣の銘があり、裏にのみ月日が加わる。
毛越寺は平泉にある寺で、千手堂はその堂宇の一つである。もとは毛越寺の千手堂に納められた磬であり、現在は中尊寺にある。
納入先の堂、年、月日が銘文に記されている。宇佐神宮の孔雀文磬(承元3年、1209年)も同様に納入先と年を銘文にもつ。磬という仏具は、施入の記録を刻む対象になりやすい。
古様と鎌倉の特徴が混じる
文化庁の解説はこう記す。形式が雄大荘重で、撞座、孔雀などの肉どりなど典麗に表している。総体に古様を帯びているが、部分的には側縁がほぼ垂直で上下縁の両端二弧が縮むなど、鎌倉時代の特徴を備えている。
「総体に古様を帯びているが」という但し書きが評価の要点にある。全体の印象は古い形式に近いが、細部に鎌倉時代の指標が現れている。
その指標は二つ挙げられている。側縁がほぼ垂直であること、上下縁の両端二弧が縮むこと。弧の比率が時代を示すという見方は、宇佐神宮の孔雀文磬(中央の弧に比べて左右の弧が縮む)と同じ枠組みである。
孔雀文磬という名の国宝は複数ある。宇佐神宮のもの(大分県、指定番号00113)は別件で、中尊寺金色堂堂内具には附指定の孔雀文磬もある。同名でも指定の単位と所在が異なるので、資料を参照する際は確かめたい。
鑑賞
所有は地蔵院、管理団体は宗教法人中尊寺である。中尊寺の讃衡蔵で寺の宝物が展示されている。
拝観時間と拝観料は季節により変わることがあるため、訪問前に中尊寺の案内で確認したい。常設展示とは限らない。
表裏で孔雀の姿が違う点が見どころだが、磬は片面ずつしか見られない展示になることが多い。どちらの面が展示されているかを確かめたい。
交通はJR東北本線の平泉駅から徒歩約25分、またはバスを利用する。
Q&A
- この孔雀文磬はいつ国宝に指定されましたか。
- 1953年(昭和28年)3月31日です。それに先立つ1929年(昭和4年)4月6日に重要文化財となっています。員数は1面、種別は工芸品、指定番号は00089。所有は地蔵院、管理団体は宗教法人中尊寺です。
- いつ作られたものですか。
- 文化庁は年代を建長2年(1250年)とし、ト書に「建長二年正月日施入在銘」と記します。年が銘文で確定しています。寸法は肩幅32.4センチメートル、裾張32.6センチメートル、高さ13.0センチメートル、重さ2,100グラムです。
- 表と裏に違いはありますか。
- あります。文化庁は「表裏ほとんど同文であるが、表面は孔雀を花喰鳥につくっている」と記します。花喰鳥は花や枝をくわえた鳥の姿で、裏の孔雀は何もくわえず、表の孔雀は花をくわえています。
- 銘文には何が書かれていますか。
- 表裏の撞座の両脇に陰刻銘があり、毛越寺の千手堂に施入したこと、建長2年であることが記されます。裏にのみ月日が加わります。もとは毛越寺の千手堂に納められた磬で、現在は中尊寺にあります。
- なぜ国宝に指定されたのですか。
- 文化庁は「形式が雄大荘重で、撞座、孔雀などの肉どりなど典麗に表している。総体に古様を帯びているが、部分的には側縁がほぼ垂直で上下縁の両端二弧が縮むなど、鎌倉時代の特徴を備えている」と記します。全体は古い形式に近く、細部に鎌倉の指標が現れています。
基本情報
| 名称 | 孔雀文磬(くじゃくもんけい)/中尊寺に伝わるもの |
|---|---|
| 所在地 | 岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関 中尊寺 |
| 指定区分 | 国宝(工芸品)/指定番号00089/宇佐神宮の同名の国宝とは別件 |
| 指定年 | 1929年(昭和4年)4月6日 重要文化財/1953年(昭和28年)3月31日 国宝 |
| 員数 | 1面 |
| 寸法 | 肩幅32.4センチメートル、裾張32.6センチメートル、高さ13.0センチメートル、撞座径9.5センチメートル、縁厚1.2センチメートル、重さ2,100グラム。鋳銅鍍金の両面磬で、上下縁は各3弧。表面の孔雀は花喰鳥につくる。1250年の作 |
| 所有者 | 地蔵院(管理団体は宗教法人中尊寺) |
| 公開状況 | 中尊寺の讃衡蔵で展示。拝観時間と拝観料は季節により変わることがある |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 孔雀文磬(中尊寺)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/377
- 文化遺産オンライン 銅孔雀文磬
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/540321
- 中尊寺 拝観のご案内
- https://www.chusonji.or.jp/worship/
- 平泉町 世界遺産 平泉
- https://hiraizumi.or.jp/heritage/
最終更新日: 2026.09.04