1柄の錫杖頭 ― 1981年に国宝
金銅錫杖頭は、香川県の善通寺が所有する唐時代の工芸品で、1901年(明治34年)3月27日に重要文化財となり、1981年(昭和56年)6月9日に国宝に指定された。員数は1柄、指定番号は00253である。
重要文化財から国宝まで80年が経っている。木造五智如来坐像の109年に次ぐ長さである。
寸法は総高27.0センチメートル、輪径13.8センチメートルとされる。文化庁データベースの所在地の欄は空で、これで14件目になる。
渡ってきた物が、日本の技術に影響を与えた
国の欄が、日本以外を示している。
国は中国、時代は唐とされる。六祖恵能伝に続いて2件目になる。
文化庁は、中国の唐の作で、古く日本に伝来し、錫杖のみならずわが国の金工技術にも影響を及ぼしたものとして意義深い、と記す。
渡ってきた物そのものが評価されるだけでなく、それが日本の技術を変えたことが記されている。
崇福寺第一峰門では、部材が中国の寧波で刻まれて運ばれた。霧島神宮では、龍柱という形式が東アジアに分布すると述べられた。
本件は、渡ってきた一つの物が国内の技術に及ぼした影響が評価に含まれる。物が越え、そのあとに技術が動いている。
ルビの記法が、【 】の形で残っている
解説文に、読みを示すための記号がそのまま入っている。
また行乞【ぎようこつ】の際、門前で鳴らしたものという、とある。
行乞という語のあとに、【ぎようこつ】と読みが置かれている。本来なら小さな文字で上に振られるものが、記号のまま本文に混ざっている。
阿高・黒橋貝塚では二重角括弧の記法が、菊造腰刀の東京国立博物館の記録では@で挟む記法が残っていた。
本件は【 】である。記録の露出としては6型目になる。
読み自体も「ぎようこつ」と、小書きを用いない古い書き方である。
頭だけの名でありながら、柄が後補と記される
名称に含まれない部分について、注記がある。
名称は金銅錫杖頭である。錫杖の頭の部分を指している。
ところが品質・形状の欄の末尾に、柄は後補、とある。柄は名称に含まれていないが、後から補われたことが記されている。
澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃では、銅製の置口が後補とされていた。菊造腰刀では、目貫の菊花だけが後補だった。
それらは物の一部である。本件は、名称が指す範囲の外側について後補と述べている。
用途も説明される。錫杖は僧侶・修験者が持つ杖で、昔インドで山野を遊行するとき、これを振り鳴らして毒虫などを追い払い、とある。何に使う道具かが記録されている。
鑑賞
所有は善通寺である。所在都道府県の欄は香川県とされるが、所在地の欄は空である。
同じ善通寺は一字一仏法華経序品も所有している。あちらは書跡・典籍で、記録の欄がほとんど空だった。本件は品質・形状の欄が長い。
造りは細かく記される。輪の中には、表裏とも透入舟形光背を負う阿弥陀三尊があり、さらにその外側に四天王像を鋳表す、とされる。
そして、像は背面を通して巧みに鋳つないでいる、とある。表裏の像がつながって鋳られている。
伝来は、弘法大師将来の寺伝がある、と記される。寺の言い伝えとして示されており、断定はされていない。神社ではなく寺が保管する品で、常設で公開される性格のものではない。訪問前に確認したい。
Q&A
- 金銅錫杖頭はいつ指定されましたか。
- 1901年(明治34年)3月27日に重要文化財、1981年(昭和56年)6月9日に国宝へ指定されました。あいだは80年で、員数は1柄、所有は善通寺です。
- どこで作られたものですか。
- 文化庁の記録は国を中国、時代を唐とします。「古く日本に伝来し、錫杖のみならずわが国の金工技術にも影響を及ぼしたものとして意義深い」とも記されます。
- 錫杖とは何ですか。
- 文化庁は「僧侶・修験者が持つ杖で、昔インドで山野を遊行するとき、これを振り鳴らして毒虫などを追い払い、また行乞の際、門前で鳴らしたものという」と記します。
- 後から補われた部分はありますか。
- あります。品質・形状の欄の末尾に「柄は後補」とあります。名称は錫杖頭で頭の部分を指しますが、名称に含まれない柄について注記されています。
- どのように伝わったのですか。
- 文化庁は「弘法大師将来の寺伝がある」と記します。寺の言い伝えとして示されており、断定はされていません。
基本情報
| 名称 | 金銅錫杖頭(こんどうしゃくじょうとう)/国の欄は中国、時代の欄は唐 |
|---|---|
| 所在地 | 所在都道府県の欄は香川県。所在地の欄は空で、所有者は善通寺とされる |
| 指定区分 | 国宝(工芸品)/指定番号00253 |
| 指定年 | 1901年(明治34年)3月27日 重要文化財/1981年(昭和56年)6月9日 国宝 |
| 員数 | 1柄 |
| 寸法 | 総高27.0センチメートル、輪径13.8センチメートル。鋳銅製で鋳浚を施し鍍金する。輪は三条筋で瓢形をなし、輪頂に四方火炎付宝珠を据える。輪の中には表裏とも阿弥陀三尊と四天王像を鋳表し、像は背面を通して鋳つなぐ。遊鐶6箇。柄は後補。時代は唐 |
| 所有者 | 善通寺 |
| 公開状況 | 寺が保管する品で、常設の公開ではない |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 金銅錫杖頭
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/10335
- 善通寺市 文化財
- https://www.city.zentsuji.kagawa.jp/soshiki/50/digi-m-culture-detail-065-index.html
- 総本山善通寺 宝物館
- https://zentsuji.com/yuisho/homotsukan/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
最終更新日: 2026.09.06