平安時代の写本1帖 ― 1955年に国宝
肥前国風土記は、香川県にある書跡で、1955年(昭和30年)2月2日に国宝に指定された。員数は1帖、種別は書跡・典籍、指定番号は00214。読みは「ひぜんのくにふどき」である。
文化庁は国を日本、時代を平安とする。年代欄と西暦欄はいずれも空欄で、解説文は「平安時代の作品。」の一行にとどまる。重文指定年月日欄も空欄で、国宝指定年月日のみが記録されている。
指定の対象は写本1帖であって、風土記という文献そのものではない。風土記の本文は8世紀に編まれたものだが、文化庁が時代を平安とするのは、この1帖が書写された時期を指している。二つを混同しないようにしたい。
所在は香川県である
肥前国は現在の佐賀県と長崎県にあたる。しかし写本の所在都道府県は香川県である。
文化庁のデータベースは所有者名を「個人」とし、所在地欄と保管施設欄はいずれも空欄とする。公的記録から現在の保管場所は読み取れない。
記された土地と、写本が伝わった土地が異なる。旧来の記述に佐賀・長崎の観光案内を織り込むものが見られるが、写本を訪ねる先はそこではない。
個人が所有する国宝であり、常設で公開されるとは限らない。展覧会に出陳される機会を待つことになる。
風土記という文献
風土記は、律令制の国ごとに、地名の由来、産物、伝承などを報告させた地誌である。
和銅6年(713年)に各地の風土や文化を報告させる命が出され、国ごとに編まれた。当時のほぼ全国で作られたが、現存するのは5つの国のものに限られる。肥前国風土記はそのうちの一つである。
内容は地名の由来を中心とする。ある土地の名がどのような出来事や人物に由来するかを記す形式で、土地の名前を通して伝承を記録する構成になっている。
肥前国風土記は、豊後国風土記や他の九州地方の風土記残巻と共通点が多い。このことから、大宰府で編まれたとする見方がある。
「1帖」という員数
員数の「帖」は、折り本や冊子を数える単位である。巻子(巻物)ではなく、綴じられた形で伝わっている。
5つ現存する風土記のうち、国宝に指定されているのは肥前国風土記と播磨国風土記の写本である。他の3国のものは指定の区分が異なる。
写本が1帖にまとまっているということは、肥前国全体の記述が一冊に収まっているということである。ただし完本ではなく、欠けている部分がある。
文化庁が寸法欄と品質・形状欄をいずれも空欄とするため、大きさや紙質は公的記録から分からない。
閲覧
写本そのものは個人蔵で、常設の公開はない。展覧会への出陳を待つことになる。
一方、風土記の本文は活字化されており、読むこと自体は難しくない。本文を読むことと、写本の実物を見ることは別である。
佐賀県立博物館など、肥前国にあたる地域の博物館では、風土記の記述を手がかりにした展示や解説が行われることがある。内容を知るための施設と、写本を所蔵する場所は異なる。
書跡は光や湿度に弱く、出陳されても展示期間は短いことが多い。公開の告知を確かめて訪ねたい。
Q&A
- 肥前国風土記はいつ国宝に指定されましたか。
- 1955年(昭和30年)2月2日です。員数は1帖、種別は書跡・典籍、指定番号は00214。文化庁は国を日本、時代を平安とします。重文指定年月日欄は空欄で、国宝指定年月日のみが記録されています。
- 8世紀の文献なのに時代が平安なのはなぜですか。
- 指定の対象は写本1帖であって、風土記という文献そのものではないためです。本文は8世紀に編まれましたが、文化庁が時代を平安とするのは、この1帖が書写された時期を指しています。
- なぜ所在が香川県なのですか。
- 肥前国は現在の佐賀県と長崎県にあたりますが、写本が伝わった先は香川県です。記された土地と写本が伝わった土地が異なります。文化庁のデータベースは所有者名を「個人」とし、所在地欄と保管施設欄はいずれも空欄です。
- 風土記とは何ですか。
- 律令制の国ごとに、地名の由来、産物、伝承などを報告させた地誌です。和銅6年(713年)に命が出され、当時のほぼ全国で作られましたが、現存するのは5つの国のものに限られます。肥前国風土記はそのうちの一つです。
- 肥前国風土記は見られますか。
- 写本そのものは個人蔵で常設の公開はなく、展覧会への出陳を待つことになります。一方、風土記の本文は活字化されており読むこと自体は難しくありません。本文を読むことと写本の実物を見ることは別です。
基本情報
| 名称 | 肥前国風土記(ひぜんのくにふどき) |
|---|---|
| 所在地 | 香川県(文化庁データベースの所在地欄は空欄) |
| 指定区分 | 国宝(書跡・典籍)/指定番号00214 |
| 指定年 | 1955年(昭和30年)2月2日 国宝(重文指定年月日欄は空欄) |
| 員数 | 1帖 |
| 寸法 | 文化庁データベースの寸法欄と品質・形状欄はいずれも空欄。指定の対象は写本であり、文化庁は時代を平安とする。肥前国は現在の佐賀県と長崎県にあたる |
| 所有者 | 個人(文化庁データベースの記載) |
| 公開状況 | 常設の公開はない。展覧会への出陳を待つことになる |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 肥前国風土記
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/728
- 文化遺産オンライン 肥前国風土記
- https://online.bunka.go.jp/db/heritages/detail/178352
- 佐賀県立博物館・美術館(肥前国にあたる地域の博物館)
- https://saga-museum.jp/
- 文化庁 国宝・重要文化財(美術工芸品)の制度
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_bijutsu/
最終更新日: 2026.09.04