2巻の絵巻 ― 1955年に国宝
紙本著色当麻曼荼羅縁起は、神奈川県の光明寺が所有する鎌倉時代の絵巻で、1908年(明治41年)4月23日に重要文化財となり、1955年(昭和30年)6月22日に国宝に指定された。員数は2巻、分類は絵画である。
重要文化財から国宝まで47年が経っている。ここまで扱った絵画の多くは重要文化財の欄が空欄だったが、この物件は両方の欄が埋まっている。
文化庁の解説文は「鎌倉時代の作品。」の一文のみである。一文だけの解説は、これで10件目となる。
附指定が本体より約五百年新しい
この物件の附指定に注目したい。文化庁は附 添書1793と記す。
添書が附として指定されており、しかも1793年という年が付いている。1793年は寛政5年にあたり、江戸時代後期である。
本体は鎌倉時代の絵巻である。附の添書は江戸時代後期。両者のあいだには約五百年の開きがある。
四将像では、附指定された顕弁像が四将と同じ鎌倉時代の肖像だった。同世代の人物が加わる形である。この例は違う。後の時代に書かれた文書が、本体に添えて指定されている。
添書は作品に添えられた文書をいう。何が書かれているかまでは記録されていないが、年が特定されている以上、書かれた時期は分かっている。
年が特定されているのは附のほう
もう一つ、目を引く点がある。
本体の年代は「鎌倉」とだけ記され、年は特定されていない。一方、附の添書には1793という年が付く。
本体より附のほうが、制作の時期がはっきりしている。江戸時代後期の文書のほうが、年代の記録が正確である。
絹本著色一遍上人絵伝では、巻第七の記録が「一遍の没後十年にあたる正安元年(1299年)の作」と本体の年を特定していた。本件はそうではない。
新しいものほど記録が細かいという傾向は、指定の時期だけでなく、作られた時期にも当てはまるように見える。
同じ題で材質の違う作品がある
関連作品に、紛らわしい名がある。
絹本著色当麻曼荼羅縁起という物件があり、名称は「当麻曼荼羅縁起」で共通する。違うのは冒頭の紙本と絹本である。
本件は紙に描かれ、もう一方は絹に描かれている。同じ題材が、異なる材質で別々に記録されていることになる。
紙本金地著色松に草花図でも、同じ題材が屏風と貼付という異なる形式で別々に記録されていた。絹本著色一遍上人絵伝では、全十二巻の絹本と全十巻の紙本があった。
関連作品には絹本著色当麻曼荼羅図もある。縁起と図でも別の物件である。名称の頭と末尾の両方を見なければ、物件を取り違える。
鑑賞
所有は光明寺で、神奈川県鎌倉市にある。寺が所蔵する絵巻であり、常設で公開される性格のものではない。
絵巻は光に弱く、公開期間が限られるのが通例である。2巻すべてが同時に展示されるとは限らず、巻の一部のみが広げられることも考えられる。
附指定の添書は文書であり、絵巻とあわせて展示されるとは限らない。
博物館の特別展などで出陳されることがあるため、公開の告知を確かめて訪ねたい。拝観の条件は変わることがある。
Q&A
- 紙本著色当麻曼荼羅縁起はいつ指定されましたか。
- 1908年(明治41年)4月23日に重要文化財、1955年(昭和30年)6月22日に国宝へ指定されました。両者のあいだは47年で、員数は2巻、所有は神奈川県の光明寺です。
- 附指定されているものはありますか。
- 添書が附として指定されており、1793年という年が付いています。1793年は寛政5年にあたり、鎌倉時代の本体とのあいだに約五百年の開きがあります。
- 本体の制作年は分かりますか。
- 文化庁は年代を「鎌倉」とだけ記し、年を特定していません。附の添書には1793という年が付くため、本体より附のほうが制作の時期がはっきりしています。
- 同じ名前の作品が他にもあるのですか。
- あります。絹本著色当麻曼荼羅縁起という物件があり、当麻曼荼羅縁起という名は共通します。違うのは冒頭の紙本と絹本で、本件は紙、もう一方は絹に描かれています。
- 鑑賞できますか。
- 寺が所蔵する絵巻であり、常設の公開ではありません。絵巻は光に弱く、2巻すべてが同時に展示されるとは限りません。附指定の添書も、絵巻とあわせて展示されるとは限りません。
基本情報
| 名称 | 紙本著色当麻曼荼羅縁起(しほんちゃくしょくたいままんだらえんぎ) |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県。所有者は光明寺 |
| 指定区分 | 国宝(絵画)/添書が附指定/絹本著色当麻曼荼羅縁起は別の物件 |
| 指定年 | 1908年(明治41年)4月23日 重要文化財/1955年(昭和30年)6月22日 国宝 |
| 員数 | 2巻 |
| 寸法 | 文化庁の解説文は「鎌倉時代の作品。」の一文のみで、寸法も内容も記されていない。附として添書が指定され、こちらには1793年という年が付く。本体の年代は鎌倉とだけ記される |
| 所有者 | 光明寺 |
| 公開状況 | 寺が所蔵する絵巻で、常設の公開ではない。2巻が同時に展示されるとは限らない |
参考文献
- 文化遺産オンライン 当麻曼荼羅縁起
- https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/203439
- 光明寺 宝物について
- https://komyoji-kamakura.or.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
- 文化庁 文化財の紹介 美術工芸品
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/bijutsu_kogei/
最終更新日: 2026.09.05