65.3ヘクタールの景観 ― 2017年に選定
阿蘇の文化的景観/産山村の農村景観は、熊本県阿蘇郡産山村にある重要文化的景観で、2017年(平成29年)10月13日に選定された。面積は65.3ヘクタールである。
種別は重要文化的景観とされる。これまで扱ってきた国宝、重要文化財、登録有形文化財、登録美術品、重要美術品とは別の区分にあたる。
CMSの重要文化財指定年月日の欄に2017年10月13日が入っているが、文化庁の記録はこの日を選定年月日とする。本稿は記録に従い、選定として扱う。
「指定」でも「登録」でもなく「選定」である
文化財に関わる語として、三つ目の動詞が出てきた。
国宝と重要文化財は指定される。登録有形文化財と登録美術品は登録される。重要文化的景観は選定される。
文化庁の記録も、指定年月日ではなく選定年月日の欄を使う。指定等後に行った措置という欄もあり、こちらは「なし」とされる。
紙本墨画拾得図の周辺で登録美術品が現れたとき、指定と登録が違う制度であることを確かめた。曜変天目茶碗の周辺には重要美術品があった。ここに選定が加わる。
同じ文化財保護の枠組みのなかで、動詞が三つに分かれている。どの語が使われているかで、制度が分かる。
員数の代わりに面積が記される
数え方の欄にも違いがある。
員数の欄はなく、面積の欄に65.3ヘクタールとある。
ここまで員数は、巻、幅、面、双、口、枚、帖、冊、通、合、躯、棟という単位で数えられてきた。武蔵埼玉稲荷山古墳出土品などでは一括とされ、数えないこともあった。
本件は数えるのではなく、広がりで測っている。景観は個数で捉えられないためである。
所有者の欄も空欄である。ここまで寺社、宗教法人、個人、公益財団法人、国、独立行政法人、株式会社、大学共同利用機関法人、国立大学法人と多様な所有者が現れたが、景観には所有者が記されない。管理団体名の欄も空である。
一つの名の下に、離れた複数の景観がある
名称の構造にも特徴がある。
阿蘇の文化的景観/産山村の農村景観という名は、二段になっている。前半が全体の名、後半が個別の景観の名である。
同じ「阿蘇の文化的景観」の下には、阿蘇外輪山西部の草原景観、阿蘇北外輪山及び中央火口丘群の草原景観、南小国町西部の草原及び森林景観といった名が並ぶ。
青井阿蘇神社では、5棟が一つの境内にまとまっていた。八坂神社では29棟が一つの境内にあった。本件は違う。
地理的に離れた複数の景観が、阿蘇という一つの名でまとめられている。まとまりの根拠が、隣接ではなく地域そのものになっている。
訪問
所在は熊本県阿蘇郡産山村である。景観であるため、建物や美術品のように公開・非公開の別があるわけではない。
文化庁は地形をこう記す。阿蘇カルデラの外輪山と九重山麓が交わる産山村では、波状高原と浸食された急傾斜の丘陵地域から成る地域に位置する丘陵が広がり水源地が多数ある。
続けて、斜面地の多くは草地又は林地として利用されてきた、とある。土地の使われ方が景観を作っている。
評価は一文である。阿蘇地方独特の農村景観である、とされる。
私有地や生活の場を含むため、立ち入りには配慮が要る。訪問前に村の案内で確認したい。
Q&A
- 阿蘇の文化的景観/産山村の農村景観はいつ選定されましたか。
- 2017年(平成29年)10月13日です。種別は重要文化的景観、面積は65.3ヘクタール、所在は熊本県阿蘇郡産山村です。
- 「選定」とは何ですか。
- 重要文化的景観に使われる語です。国宝と重要文化財は指定され、登録有形文化財と登録美術品は登録され、重要文化的景観は選定されます。文化庁の記録も選定年月日の欄を使います。
- 員数は書かれていないのですか。
- 員数の欄はなく、面積の欄に65.3ヘクタールとあります。景観は個数で捉えられないため、数えるのではなく広がりで測られています。所有者の欄も空欄です。
- 名前が二段になっているのはなぜですか。
- 前半が全体の名、後半が個別の景観の名です。同じ「阿蘇の文化的景観」の下には、阿蘇外輪山西部の草原景観などが並びます。地理的に離れた複数の景観が、一つの名でまとめられています。
- どのような土地なのですか。
- 文化庁は「阿蘇カルデラの外輪山と九重山麓が交わる産山村では、波状高原と浸食された急傾斜の丘陵地域から成る地域に位置する丘陵が広がり水源地が多数ある」とし、「斜面地の多くは草地又は林地として利用されてきた」と記します。
基本情報
| 名称 | 阿蘇の文化的景観/産山村の農村景観(あそのぶんかてきけいかん うぶやまむらののうそんけいかん) |
|---|---|
| 所在地 | 熊本県阿蘇郡産山村 |
| 指定区分 | 重要文化的景観/指定でも登録でもなく選定 |
| 指定年 | 2017年(平成29年)10月13日 重要文化的景観に選定 |
| 員数 | 員数の欄はなく、面積65.3ヘクタールが記される |
| 寸法 | 面積は65.3ヘクタール。阿蘇カルデラの外輪山と九重山麓が交わる位置にあり、波状高原と急傾斜の丘陵からなる。斜面地の多くは草地または林地として利用されてきた |
| 所有者 | 文化庁の記録では所有者・管理団体とも空欄 |
| 公開状況 | 景観であり公開・非公開の別はない。私有地や生活の場を含むため立ち入りには配慮が要る |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 阿蘇の文化的景観 産山村の農村景観
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/412/00004015
- 文化遺産オンライン 阿蘇の文化的景観
- https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/409215
- 産山村 村の紹介
- https://www.ubuyama-v.jp/villagepromotion/996.html
- 熊本県 文化財のページ
- https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/125/161554.html
最終更新日: 2026.09.05