1922年に名勝、1952年に特別名勝
天橋立は、京都府宮津市文殊・中野・大垣にある砂嘴で、1922年(大正11年)3月8日に名勝に指定され、1952年(昭和27年)11月22日に特別名勝となった。告示番号は49である。
名勝から特別名勝まで30年が経っている。文化庁データベースの面積欄、所有者名の欄、管理団体名の欄はいずれも空欄である。
指定基準は三つが挙がる。三.花樹、花草、紅葉、緑樹などの叢生する場所/八.砂丘、砂嘴、海浜、島嶼/十一.展望地点である。
「展望地点」が基準に含まれる
三つの基準のうち、十一の「展望地点」に注目したい。
三と八は、その場所にあるもの(植生と地形)を指す。十一だけは、そこから見ることを指す。
文化庁の解説にも対応する記述がある。成相山上部の郡有山林には地を拓いて小亭を設けたるあり、天橋を望むに好適の地点なりとす。
眺める場所そのものが、指定の範囲に含まれている。天橋立は見られる対象であると同時に、そこから見る地点でもある。
現代語の解説も成相山の中腹傘松からの展望は特にすぐれた美観を呈するとし、どこから見るかを評価に組み込んでいる。
幅の記述が大きく食い違う
文化庁の解説は、文語体のものと現代語のものが併存する。両者で幅の記述が大きく異なる。
文語体はこう記す。幅広き処約二丁、狭き処は一丁に満たず。一丁はおよそ109メートルにあたるので、広いところで約218メートル、狭いところで109メートル未満ということになる。
現代語はこう記す。長さ約3600メートル、幅約15メートル。
約218メートルと約15メートルでは、一桁以上の開きがある。同じ文化庁の記録の中での食い違いである。
本稿はどちらか一方を採らず、二つの記載があることを記すにとどめる。長さについては、文語体の「約二十三四町」がおよそ2500メートルから2600メートルにあたり、現代語の3600メートルとこれも一致しない。
「唯一」は文語体にだけある
評価の言葉についても、二つの解説で違いがある。
文語体は内湾に於ける砂嘴として唯一のものなりとする。「唯一」と断定している。
ところが現代語の解説にこの一文はない。現代語は「宮津湾内にあり、江尻より南々西殆んと文珠の切戸まで砂嘴を示して内湾を抱く」と述べるにとどまる。
代わりに現代語は、古くからわが国の詩歌文章にあらわれ、日本三景の一としてひろく知られているとする。地形の唯一性から、文芸への登場と知名度へ、評価の軸が移っている。
書かれた時期が違えば、同じ対象への評価の言葉も変わる。文語体は指定当時のもので、現代語は後に書かれたものである。
神社と寺の境内も含まれる
文語体の解説には、範囲についての記述もある。
磯清水神社及び智恩寺の境内は、全体の風景より分つべからざるものに属す。
神社と寺の境内が、風景から切り離せないものとされている。砂嘴そのものだけでなく、その周辺の宗教施設も一体として扱われる。
大仙院庭園が書院枯山水の四周を含んだのと同じく、中心だけでなく周囲が範囲に入る考え方である。
見学については、砂嘴は歩いて渡ることができる。成相山の中腹からの展望も、指定基準に含まれる要素であり、下から見るのと上から見るのでは印象が異なる。
所在は京都府宮津市文殊・中野・大垣である。交通と施設の条件は変わることがあるため、訪問前に宮津市などの案内で確認したい。
Q&A
- 天橋立はいつ指定されましたか。
- 1922年(大正11年)3月8日に名勝、1952年(昭和27年)11月22日に特別名勝となりました。告示番号は49で、所在は京都府宮津市文殊・中野・大垣です。面積欄と所有者名の欄は空欄です。
- 指定基準は何ですか。
- 三つ挙がります。三の花樹、花草、紅葉、緑樹などの叢生する場所、八の砂丘、砂嘴、海浜、島嶼、そして十一の展望地点です。十一だけは、そこから見ることを指しています。
- 幅はどれくらいですか。
- 記録が食い違います。文語体の解説は「幅広き処約二丁、狭き処は一丁に満たず」とし、現代語の解説は「幅約15メートル」とします。一丁はおよそ109メートルにあたるため一桁以上の開きがあり、本稿はどちらか一方を採っていません。
- 評価の言葉に違いはありますか。
- あります。文語体は「内湾に於ける砂嘴として唯一のものなり」と断定しますが、現代語の解説にこの一文はなく、代わりに「古くからわが国の詩歌文章にあらわれ、日本三景の一としてひろく知られている」とします。
- 砂嘴以外も範囲に含まれますか。
- 文語体の解説は「磯清水神社及び智恩寺の境内は、全体の風景より分つべからざるものに属す」とし、また成相山上部の小亭を天橋を望むに好適の地点とします。周辺の施設や眺める場所も含まれます。
基本情報
| 名称 | 天橋立(あまのはしだて) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府宮津市文殊・中野・大垣 |
| 指定区分 | 特別名勝(記念物)/告示番号49 |
| 指定年 | 1922年(大正11年)3月8日 名勝/1952年(昭和27年)11月22日 特別名勝 |
| 員数 | 文化庁データベースの面積欄は空欄 |
| 寸法 | 宮津湾内にあり、江尻から南南西へ砂嘴が伸びて内湾を抱く。現代語の解説は長さ約3600メートル、幅約15メートルとするが、文語体の解説は幅広き処約2丁、狭き処は1丁に満たずとし、両者は食い違う。指定基準は3、8、11の三つ |
| 所有者 | 文化庁データベースの所有者名と管理団体名の欄はいずれも空欄 |
| 公開状況 | 砂嘴は歩いて渡ることができる。交通と施設の条件は変わることがある |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 天橋立
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/401/1644
- 宮津市 天橋立
- https://www.city.miyazu.kyoto.jp/site/citypro/7761.html
- 天橋立観光協会 天橋立について
- https://hashidate.org/about_amanohashidate/
- 文化庁 文化財の紹介 記念物
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/kinenbutsu/
最終更新日: 2026.09.05