1幅の仏画 ― 1951年に国宝

絹本著色仏眼仏母像は、京都の高山寺が所有する鎌倉時代の仏画で、1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定された。員数は1幅、分類は絵画、所有は宗教法人高山寺である。

文化庁データベースの重要文化財指定年月日の欄は空欄である。重要文化財を経ずに国宝へ指定されたことになり、これまで扱った中で5件目にあたる。

文化庁の解説文は「鎌倉時代の作品。」の一文のみである。所在地の欄も空欄で、どこに保管されているかは記録から分からない。

指定の時期と記録の詳しさが対応する

一文だけの解説が続いている。ここまでに扱った絵画を並べると、傾向が見えてくる。

絹本著色仏眼仏母像は1951年の指定で解説は一文。絹本著色普賢延命像は1952年、絹本著色無準師範像は1952年、絹本著色十六羅漢像は1955年で、いずれも「〜時代の作品。」の一文にとどまる。

一方、絹本著色五大尊像は2004年6月8日の指定で、五幅揃った遺例が三本しかないこと、図像が台密寺門系であること、二幅に年紀があることまで記される。東福寺の絹本著色無準師範像(半身)は2016年8月17日の指定で、寸法も装丁も着賛による年代の根拠も記されている。

1951年から1955年の指定は一文で終わり、2004年以降の指定は詳しい。指定された時期によって、記録の書き方が変わっている。

五大尊像の解説が、教王護国寺本を昭和27年3月29日指定、醍醐寺本を昭和30年6月22日指定と記すのも、新しい記録が古い記録を参照して書かれていることを示す。

名称の誤訳を正した

この物件についても、英語名称に誤りがあった。

Colored Silk Buddha Eye Statue of the Buddha となっていた。仏眼仏母は一続きの名であり、「仏眼」と「仏母」を分けて Buddha Eye と of the Buddha に訳すのは誤りにあたる。

Statue も誤りである。絹本著色は絹に描いた彩色の絵をいい、彫像ではない。

Butsugen Butsumo, Colour on Silk に修正した。仏眼仏母は密教で説かれる存在で、読みは「ぶつげんぶつも」である。

絹本著色五大尊像、絹本著色普賢延命像、絹本著色無準師範像に続き、絹本著色で始まる名称の英訳を正した4件目である。

記録にないこと

この作品については、旧来さまざまな事柄が語られてきた。

「明恵上人の母への祈り」「壮絶な信仰の物語」とする記述が見られるが、文化庁の記録に人名は出てこない。誰が発願したかも、どう伝わったかも記されていない。

「鎌倉時代を代表する大画面仏画」とする記述も見られるが、寸法の記載がないため大きさは記録から分からない。他の作品との比較もない。

本稿は記録に基づき、1幅の絵画であること、鎌倉時代の作品であること、高山寺が所有すること、1951年に国宝へ指定されたことを記すにとどめる。

関連作品には絹本著色訶梨帝母像、絹本著色閻魔天像、絹本著色五大尊像などが並ぶ。密教に関わる主題の作品が複数記録されている。

鑑賞

所有は宗教法人高山寺で、京都市右京区にある。寺が所蔵する仏画であり、常設で公開される性格のものではない。

仏画は光に弱く、公開期間が限られるのが通例である。博物館の特別展などで出陳されることがあるため、公開の告知を確かめて訪ねたい。

1幅であるから、出陳されれば全体を見ることができる。16幅からなる絹本著色十六羅漢像のように、一部のみが出るということは起こりにくい。

拝観の条件は変わることがあるため、訪問前に高山寺の案内で確認したい。

Q&A

Q絹本著色仏眼仏母像はいつ国宝に指定されましたか。
A1951年(昭和26年)6月9日です。員数は1幅、分類は絵画、所有は宗教法人高山寺です。重要文化財指定年月日の欄は空欄で、重要文化財を経ずに国宝へ指定されています。
Q文化庁の解説には何が書かれていますか。
A「鎌倉時代の作品。」という一文だけです。寸法も画面の構成も伝来の経緯も記されていません。所在地の欄も空欄です。
Qなぜ解説が短いのですか。
A指定の時期と記録の詳しさが対応しているようです。1951年から1955年に指定された絵画はいずれも一文にとどまる一方、2004年指定の絹本著色五大尊像や2016年指定の絹本著色無準師範像には、図像や寸法、年代の根拠まで記されています。
Q絵ですか、彫像ですか。
A絵です。絹本著色は絹に描いた彩色の絵をいい、分類欄も絵画と記されています。英語名称に Statue の語が含まれ、仏眼仏母を分けて訳していたため、Butsugen Butsumo, Colour on Silk に修正しました。
Q鑑賞できますか。
A寺が所蔵する仏画であり、常設で公開される性格のものではありません。仏画は光に弱く公開期間が限られるのが通例です。1幅であるため、出陳されれば全体を見ることができます。

基本情報

名称絹本著色仏眼仏母像(けんぽんちゃくしょくぶつげんぶつもぞう)
所在地文化庁データベースの所在地の欄は空欄。所有者は京都の高山寺
指定区分国宝(絵画)/重要文化財を経ずに国宝へ指定
指定年1951年(昭和26年)6月9日 国宝
員数1幅
寸法文化庁の解説文は「鎌倉時代の作品。」の一文のみで、寸法も画面の構成も記されていない。時代は鎌倉
所有者宗教法人高山寺
公開状況寺が所蔵する仏画で、常設の公開ではない。仏画は光に弱く公開期間が限られる

参考文献

文化遺産オンライン 絹本著色仏眼仏母像
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/125417
文化遺産オンライン 絹本著色五大尊像
https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/160141
高山寺 国宝のご紹介
https://kosanji.com/about/national_treasure/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.05