1幅の仏画 ― 1952年に国宝
絹本著色普賢延命像は、京都府舞鶴市の松尾寺が所有する平安時代の仏画で、1952年(昭和27年)11月22日に国宝に指定された。員数は1幅、分類は絵画である。
文化庁データベースの重要文化財指定年月日の欄は空欄である。重要文化財を経ずに国宝へ指定されたことになる。慶長遣欧使節関係資料、絹本著色十六羅漢像に続き、これまで扱った中で3件目にあたる。
文化庁の解説文は次の一文である。平安時代の作品。これで全部である。寸法も、画面の構成も、伝来の経緯も記されていない。前件の絹本著色十六羅漢像と同じ形式で、一文だけの解説が2件続いた。
絵であって彫像ではない
この物件については、名称の扱いに誤りがあった。
絹本著色は絹に描いた彩色の絵をいう。絹本は絵絹、著色は色を置くことを指す。彫像ではない。
英語名称が Colored Statue of Fugen Enmei on Silk となっていたため、Fugen Enmei, Colour on Silk に修正した。Statue は彫像を意味する語で、絵画には当たらない。
同じ誤りは絹本著色五大尊像でも見られ、Five Great Buddha Statues Colored on Silk となっていたものを Five Great Wisdom Kings, Colour on Silk に改めた。絹本著色で始まる名称は、いずれも絵画である。
分類欄も絵画と記されており、記録の上でも明確である。
同名の作品が三件ある
文化遺産オンラインで「絹本著色普賢延命像」を検索すると、三件が並ぶ。関連作品にも同名の作品が二件挙がる。
同じ名の作品が複数記録されている。本稿が扱うのは松尾寺が所有する1幅である。
この点は注意を要する。絹本著色五大尊像の解説で、文化庁は「平安仏画で年紀を有するものは金剛峯寺蔵の仏涅槃図と持光寺蔵の普賢延命像のみ」と記していた。
そこで挙がる持光寺蔵の作品は、松尾寺が所有する本件とは別である。年紀の有無についても、本件の記録には何も書かれていない。
同名だからといって同じ作品とは限らない。所有者と員数で区別する必要がある。
書かれていないこと
旧来の記述には、記録にない事柄が多く含まれている。
「美福門院藤原得子の念持仏」とするものが見られるが、文化庁の記録に伝来の経緯はない。誰のために作られたかも、どう伝わったかも記されていない。
「截金・繧繝彩色の技法」とする記述も見られるが、文化庁の記録に技法の記載はない。「平安仏画の最高傑作」とする評価も、記録には見当たらない。
所在地の欄も空欄である。所有者として松尾寺の名が記されるのみで、どこに保管されているかは記録から分からない。
本稿は記録に基づき、1幅の絵画であること、平安時代の作品であること、松尾寺が所有すること、1952年に国宝へ指定されたことを記すにとどめる。
鑑賞
所有は松尾寺で、京都府舞鶴市にある。寺が所蔵する仏画であり、常設で公開される性格のものではない。
仏画は光に弱く、公開期間が限られるのが通例である。博物館の特別展などで出陳されることがあるため、公開の告知を確かめて訪ねたい。
1幅であるから、出陳されれば全体を見ることができる。16幅からなる絹本著色十六羅漢像のように、一部のみが出るということは起こりにくい。
拝観の条件は変わることがあるため、訪問前に松尾寺の案内で確認したい。
Q&A
- 絹本著色普賢延命像はいつ国宝に指定されましたか。
- 1952年(昭和27年)11月22日です。員数は1幅、分類は絵画、所有は松尾寺です。文化庁データベースの重要文化財指定年月日の欄は空欄で、重要文化財を経ずに国宝へ指定されています。
- 絵ですか、彫像ですか。
- 絵です。絹本著色は絹に描いた彩色の絵をいい、分類欄も絵画と記されています。英語名称に Statue の語が含まれていたため、Fugen Enmei, Colour on Silk に修正しました。
- 文化庁の解説には何が書かれていますか。
- 「平安時代の作品。」という一文だけです。寸法も画面の構成も伝来の経緯も記されていません。所在地の欄も空欄で、どこに保管されているかは記録から分かりません。
- 同じ名の作品が他にもあるのですか。
- あります。文化遺産オンラインで検索すると三件が並びます。絹本著色五大尊像の解説で文化庁が挙げる持光寺蔵の普賢延命像は、松尾寺が所有する本件とは別です。同名でも同じ作品とは限りません。
- 鑑賞できますか。
- 寺が所蔵する仏画であり、常設で公開される性格のものではありません。仏画は光に弱く公開期間が限られるのが通例です。1幅であるため、出陳されれば全体を見ることができます。
基本情報
| 名称 | 絹本著色普賢延命像(けんぽんちゃくしょくふげんえんめいぞう) |
|---|---|
| 所在地 | 文化庁データベースの所在地の欄は空欄。所有者は京都府舞鶴市の松尾寺 |
| 指定区分 | 国宝(絵画)/重要文化財を経ずに国宝へ指定 |
| 指定年 | 1952年(昭和27年)11月22日 国宝 |
| 員数 | 1幅 |
| 寸法 | 文化庁の解説文は「平安時代の作品。」の一文のみで、寸法も画面の構成も記されていない。時代は平安 |
| 所有者 | 松尾寺 |
| 公開状況 | 寺が所蔵する仏画で、常設の公開ではない。仏画は光に弱く公開期間が限られる |
参考文献
- 文化遺産オンライン 絹本著色普賢延命像
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/197110
- 文化遺産オンライン 絹本著色五大尊像
- https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/160141
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
- 文化庁 文化財の紹介 美術工芸品
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/bijutsu_kogei/
最終更新日: 2026.09.05