慶雲4年の銘をもつ骨蔵器 ― 1955年に国宝
金銅威奈大村骨蔵器は、京都国立博物館が保管する金銅製の骨蔵器で、1955年(昭和30年)2月2日に国宝に指定された。それに先立つ1909年(明治42年)4月5日には重要文化財となっている。員数は1合、種別は考古資料、指定番号は00018。読みは「こんどういなのおおむらこつぞうき」である。
文化庁のト書は次のとおりである。慶雲四年十一月二十一日在銘、奈良県北葛城郡二上村穴蟲出土。慶雲4年は707年で、年代欄と西暦欄はいずれも707である。出土地は現在の香芝市穴虫にあたる。
骨蔵器は火葬した骨を納める容器をいう。員数の「1合」は蓋のある器を数える単位である。
球形で、蓋と身が半球に分かれる
京都国立博物館の記録は、形の特異さを記す。球形の容器で、蓋と身が半球形に分かれる特殊な形である。高さは24.2センチメートル。
上下に分かれる球という構成である。骨蔵器は壺形や箱形が多く、球形は例が少ない。同館は、よく似たものに佐賀県出土と伝えられる無銘のものがあると記す。
発見の経緯も伝えられている。江戸時代の明和年間に発見されたもので、甕を伏せた下からこの骨蔵器が出土したと伝える。甕を伏せて覆い、その下に球形の容器を置くという埋納の形である。
「伝える」という書き方は、発見の経緯が伝承にとどまることを示す。江戸時代の発見であり、記録の確かさには幅がある。
蓋裏に391字の銘
この骨蔵器が重んじられるのは、蓋の裏に刻まれた銘文による。
京都国立博物館によれば、蓋裏に1行10字詰め39行391字におよぶ銘が刻まれている。391字という分量は、墓誌としては大きい。金銅石川年足墓誌の銘文が系譜と官職を数十字で記すのに対し、こちらは経歴を詳述している。
銘文の内容は次のとおりである。威奈大村は宣化天皇の子孫にあたり、持統朝に任官、文武朝に少納言となり、大宝令の制定とともに従五位すなわち貴族に列せられた。慶雲2年(705年)に越後守に任ぜられるが、同4年(707年)に任地で歿した。そして故郷の大和の葛城下郡山君里、今の香芝市穴虫の地に葬られた。
任地で没し、故郷に葬られたという経緯が銘文から分かる。越後(新潟)で亡くなり、大和(奈良)へ運ばれている。
時代の記載が資料により異なる
この骨蔵器の時代について、記述が分かれる。
文化庁のデータベースは時代欄を「奈良」とし、年代欄と西暦欄はいずれも707とする。解説文も「奈良時代の資料。」である。一方、京都国立博物館は「飛鳥時代 707年」とする。
奈良時代は710年からとするのが通例で、707年はその3年前にあたる。年そのものは両者で一致しており、時代区分の呼び方だけが異なる。本稿は年(707年)を採り、時代区分に相違があることを記すにとどめる。
同じ型の食い違いは、銅製船氏王後墓誌(668年)や崇福寺塔心礎納置品(7世紀後半)でも見られる。7世紀後半から8世紀初めの考古資料で、文化庁の時代欄が「奈良」となる例が続いている。
鑑賞
京都国立博物館の記録は所有を「大阪・四天王寺」とする。一方、文化庁のデータベースは所有者名欄を空欄とし、所在地と保管施設を京都国立博物館とする。所有は四天王寺、保管は京都国立博物館という関係である。
常設展示とは限らず、展示の有無と時期は博物館の予定による。開館時間と観覧料も展覧会により異なるため、訪問前に確認したい。
出土地の香芝市穴虫は奈良県にある。出土地(奈良)、所有者(大阪)、保管地(京都)が三府県に分かれている。
京都国立博物館へは、京阪七条駅から徒歩約7分である。
Q&A
- 金銅威奈大村骨蔵器はいつ国宝に指定されましたか。
- 1955年(昭和30年)2月2日です。それに先立つ1909年(明治42年)4月5日に重要文化財となっています。員数は1合、種別は考古資料、指定番号は00018。ト書は慶雲四年十一月二十一日在銘で、慶雲4年は707年にあたります。
- どのような形ですか。
- 京都国立博物館によれば、球形の容器で蓋と身が半球形に分かれる特殊な形です。高さは24.2センチメートル。骨蔵器は壺形や箱形が多く球形は例が少なく、同館はよく似たものに佐賀県出土と伝えられる無銘のものがあると記します。
- 銘文には何が書かれていますか。
- 蓋裏に1行10字詰め39行391字におよぶ銘が刻まれています。威奈大村が宣化天皇の子孫で、持統朝に任官、文武朝に少納言、大宝令の制定とともに従五位に列せられ、慶雲2年に越後守となり同4年に任地で歿し、故郷の大和に葬られたことが記されます。
- いつ頃のものですか。
- 年は707年で資料間に相違はありませんが、時代区分の呼び方が異なります。文化庁は時代欄を「奈良」とし、京都国立博物館は「飛鳥時代」とします。奈良時代は710年からとするのが通例で、707年はその3年前にあたります。
- どこで見られますか。
- 京都国立博物館が保管しますが、所有は大阪の四天王寺です。常設展示とは限らず、展示の有無と時期は博物館の予定によります。出土地は奈良県香芝市穴虫で、出土地・所有者・保管地が三府県に分かれています。
基本情報
| 名称 | 金銅威奈大村骨蔵器(こんどういなのおおむらこつぞうき) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市東山区茶屋町527 京都国立博物館 |
| 指定区分 | 国宝(考古資料)/指定番号00018 |
| 指定年 | 1909年(明治42年)4月5日 重要文化財/1955年(昭和30年)2月2日 国宝 |
| 員数 | 1合 |
| 寸法 | 高さ24.2センチメートル。金銅製の球形の容器で、蓋と身が半球形に分かれる。蓋裏に39行391字の銘。慶雲四年十一月二十一日在銘で707年。奈良県香芝市穴虫出土 |
| 所有者 | 四天王寺(京都国立博物館が保管) |
| 公開状況 | 常設展示とは限らず、展示の有無と時期は博物館の予定による |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 金銅威奈大村骨蔵器
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/851
- 京都国立博物館 名品紹介 金銅威奈大村骨蔵器
- https://www.kyohaku.go.jp/jp/collection/meihin/kouko/item11/
- 文化遺産オンライン 金銅威奈大村骨蔵器
- https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/126044
- 京都国立博物館 公式サイト
- https://www.kyohaku.go.jp/
最終更新日: 2026.09.04