指定ではなく「選択」 ― 1959年
京都八坂神社の祗園祭は、京都府の八坂神社で行われる祭で、1959年(昭和34年)3月1日に記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財として選択された。選択番号は1である。
これは指定ではなく「選択」である。記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財は、記録を作って残すべきものとして選ぶ制度で、指定とは別の枠組みにあたる。
種別は風俗慣習、そのうち祭礼(信仰)とされる。選択基準は「(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの」である。
保護団体名の欄は「特定せず」と記される。特定の団体を保護の担い手として定めていない。
同じ祭りが三つの区分に分かれる
文化庁の記録には、三つの注記が並ぶ。同じ祭りが、名前を変えて別々に扱われている。
一つめ。この行事で巡行する山鉾は、昭和37年(1962年)5月23日に「祇園祭山鉾」として重要有形民俗文化財に指定されている。
二つめ。この行事は、昭和54年(1979年)2月3日に「京都祇園祭の山鉾行事」として重要無形民俗文化財に指定されている。
三つめ。この行事は、平成21年(2009年)にユネスコ無形文化遺産保護条約の「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載されている。
山鉾という「物」と、山鉾行事という「行い」が別に扱われる。前者は有形、後者は無形である。そして本稿が扱う「京都八坂神社の祗園祭」は、それらより早い1959年の選択にあたる。
四つの時点、三つの名前
時系列で並べると次のようになる。
1959年、「京都八坂神社の祗園祭」として選択。1962年、山鉾が「祇園祭山鉾」として指定。1979年、行事が「京都祇園祭の山鉾行事」として指定。2009年、ユネスコの一覧表に記載。
50年の間に、一つの祭りが四度、別の枠組みで取り上げられている。しかも名前は三通りである。
選択が最も早い。まず記録を残すべきものとして選ばれ、その3年後に山鉾という物が、その17年後に行事という行いが指定された。
文化庁は解説の末尾に「※解説は選択当時のものをもとにしています」と付す。1959年時点の記述であることが明示されている。
山と鉾はいつ整えられたか
文化庁の解説は、祭りの成り立ちを順に記す。
平安京での祇園御霊会に始まり、南北朝から室町時代にかけて山と鉾が整えられ、安土桃山時代に輸入品の幕類を掛けまわしたり、錺金具や彫り物に贅を尽くすようになった。
三つの段階がある。始まりは祇園御霊会、山と鉾が整うのが南北朝から室町、装飾に贅を尽くすのが安土桃山である。
「輸入品の幕類」という語に注意したい。装飾に使われた幕は外から入ってきたものである。国内で作られたものではない品が、祭りの装いに用いられた。
行事の内容も記される。2日のくじ取りから、17日の山鉾巡行、祇園囃子まで多彩な内容を含んでいる。選択当時の公開日は毎年7月1日から29日とされる。
他の祭りへの影響
評価の結びは、影響の広がりにある。
特に華麗な山鉾の巡行は、全国の祇園祭・天王祭に多大な影響を与えてきたといわれる。
「といわれる」と伝聞の形で記されている。文化庁は断定していない。
関連作品には、日田祗園の曳山行事、宍喰八坂神社の祇園祭、須成祭の車楽船行事、尾張津島天王祭の車楽舟行事、長浜曳山祭の曳山行事などが並ぶ。同じ系統の祭りが各地にあり、そのなかでの位置づけが問われている。
見学については、選択当時の公開日が毎年7月1日から29日とされる。日程や内容は変わることがあるため、訪問前に八坂神社または京都市の案内で確認したい。
Q&A
- 京都八坂神社の祗園祭はいつ選択されましたか。
- 1959年(昭和34年)3月1日に、記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財として選択されました。選択番号は1、種別は風俗慣習のうち祭礼(信仰)です。保護団体名の欄は「特定せず」と記されています。
- 選択と指定はどう違うのですか。
- 記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財は、記録を作って残すべきものとして選ぶ制度で、指定とは別の枠組みです。本件はこの選択にあたり、選択基準は「由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの」です。
- 他の区分でも扱われているのですか。
- はい。文化庁は、山鉾が昭和37年に「祇園祭山鉾」として重要有形民俗文化財に指定されたこと、行事が昭和54年に「京都祇園祭の山鉾行事」として重要無形民俗文化財に指定されたこと、平成21年にユネスコの一覧表に記載されたことを注記します。
- 祭りはどのように成り立ったのですか。
- 文化庁は「平安京での祇園御霊会に始まり、南北朝から室町時代にかけて山と鉾が整えられ、安土桃山時代に輸入品の幕類を掛けまわしたり、錺金具や彫り物に贅を尽くすようになった」と記します。三つの段階に分けて説明されています。
- 他の祭りとの関係はありますか。
- 文化庁は「特に華麗な山鉾の巡行は、全国の祇園祭・天王祭に多大な影響を与えてきたといわれる」と記します。「といわれる」と伝聞の形であり、断定はされていません。
基本情報
| 名称 | 京都八坂神社の祗園祭(きょうとやさかじんじゃのぎおんまつり) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府(文化庁データベースの所在地の欄は空欄) |
| 指定区分 | 記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財(選択)/風俗慣習・祭礼(信仰) |
| 指定年 | 1959年(昭和34年)3月1日 選択 選択番号1 |
| 員数 | 文化庁データベースの員数欄は空欄 |
| 寸法 | 平安京での祇園御霊会に始まり、南北朝から室町時代にかけて山と鉾が整えられ、安土桃山時代に輸入品の幕類や錺金具、彫り物に贅を尽くすようになった。2日のくじ取りから17日の山鉾巡行、祇園囃子まで多彩な内容を含む |
| 所有者 | 保護団体名は「特定せず」 |
| 公開状況 | 選択当時の公開日は毎年7月1日から29日。日程や内容は変わることがある |
参考文献
- 文化遺産オンライン 京都八坂神社の祗園祭
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/214869
- 文化庁 国指定文化財等データベース 京都八坂神社の祗園祭
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/312/415
- 八坂神社 公式サイト
- https://www.yasaka-jinja.or.jp/
- 京都観光Navi 祇園祭
- https://ja.kyoto.travel/event/major/gion/
最終更新日: 2026.09.05