男山の山頂に建つ国宝10棟

石清水八幡宮本社は、京都府八幡市八幡高坊の男山山頂にある寛永11年(1634年)造営の社殿群で、平成28年(2016年)2月9日に国宝に指定された。員数は10棟。附として棟札3枚が含まれる。

10棟の内訳は、本殿、瑞籬、幣殿及び舞殿、楼門、東門、西門、廻廊3棟(楼門西門間・楼門東門間・背面)、摂社武内社本殿である。

指定は三段階を経ている。楼門・東門・西門・本殿・幣殿及び舞殿・廻廊3棟の8棟が明治30年(1897年)12月28日に重要文化財となり、瑞籬と摂社武内社本殿が昭和42年(1967年)6月15日に加わった。そして平成28年、10棟がまとめて国宝へ格上げされた。境内そのものも平成24年(2012年)に国の史跡に指定されている。

男山は桂川・宇治川・木津川の三川が合流する地点を見下ろす位置にある。平安京の南西、すなわち裏鬼門にあたり、北東の鬼門を守る比叡山延暦寺と対をなす配置とされてきた。

八幡造 ― 屋根がM字に見える理由

国宝指定の中心は本殿の建築様式にある。八幡造と呼ばれる形式で、切妻造の内殿と外殿を前後に並べて一体化させる。横から見ると二つの屋根が谷を挟んで並ぶため、輪郭がM字を描く。

石清水八幡宮の本殿は桁行約40メートルにおよぶ。八幡造の本殿としては現存最古にして最大である。この一点だけでも建築史上の位置は動かないが、評価はそこにとどまらない。

長大な本殿を中心に、幣殿・舞殿・楼門を瑞籬と廻廊が囲み、全体が緊密に一体化した空間を構成している。古代に成立した荘厳な社殿形式を保持しながら、近世的な極彩色の装飾を兼ね備えた完成度の高い神社建築、というのが指定の評価である。

内殿と外殿の屋根の谷間には雨樋が渡される。八幡造という形式が構造的に必要とする部材であり、天正8年(1580年)に織田信長が寄進したと伝わる金箔を施した銅板製の雨樋が、440年余を経て今も残る。

10棟で一件である理由

本殿だけを見れば現存最古最大の八幡造である。廻廊だけを見れば長い通路にすぎない。10棟を並べて初めて、囲われた一個の祭祀空間という構成が読み取れる。

楼門をくぐると幣殿及び舞殿があり、その奥に本殿が構える。この中軸を、瑞籬が内側から、廻廊3棟が外側から取り囲む。東門と西門は廻廊の左右に開き、摂社武内社本殿は本殿に寄り添って建つ。参拝者が立てる位置と、神の座と、その間を隔てる仕切りが、建物の配置そのものによって定められている。

明治30年に8棟が、昭和42年に瑞籬と摂社武内社本殿が加わり、平成28年に10棟が国宝へ移されたという順序も、この理解の深まりを示している。瑞籬は本殿を囲む垣であり、単体では建物と呼びにくい。それが指定に加えられ、最終的に本殿と同格の国宝となったことは、囲むという行為そのものが評価の対象になったことを意味する。

造営の経緯も一連である。天正8年(1580年)に織田信長が社殿を修復し、豊臣秀頼が慶長年間に境内を再興、寛永11年(1634年)に三代将軍徳川家光の命によって現在の社殿群が造替された。10棟はいずれもこの寛永の造営に属する。

見どころ ― 彫刻を探して歩く

社殿の第一印象は色である。八幡大神がもともと九州・宇佐の海の神であったことから、海中の龍宮城を模した極彩色が施されたと伝えられる。平成16年(2004年)から約8年をかけた彩色の塗り直しにより、造営当時の色が戻っている。

蟇股や外壁には動植物の彫刻が並ぶ。本殿西側の象は、江戸時代の職人が実物を見ずに文献をもとに彫ったもので、猫のような肉球がついている。リスとブドウの組み合わせは子孫繁栄を表し、満腹になると尻尾で身を覆うと信じられていたリスの尾が誇張されている。紅葉に跳ねる鹿もある。近づいて一つずつ確かめる価値がある。

西廻廊の上部には、隠れるように彫られた猿がある。目貫の猿と呼ばれ、左甚五郎の作と伝わる。夜になると抜け出して山麓の畑を荒らしたため右目に釘を打って動けなくした、という言い伝えがあり、注意して見れば釘の跡が確認できる。

境内にはトーマス・エジソンの記念碑も建つ。1880年、白熱電球のフィラメント素材を探していたエジソンの助手が男山の竹を採取し、その竹が1,000時間以上の点灯に耐えたと伝えられる。毎年、エジソンの誕生日と命日に記念祭が行われている。

一の鳥居の扁額を見上げると、八幡宮の「八」の字が向かい合う二羽の鳩の形になっている。江戸初期の社僧、松花堂昭乗の書に由来する。鳩は八幡大神の使いとされ、境内の随所にその意匠がある。

参拝と、社殿に近づく方法

境内の参拝は無料である。開門時間は4月から9月が5時30分から18時30分、10月が6時から18時、11月から3月が6時30分から18時まで。

楼門の外からでも社殿群の正面と極彩色は見える。ただし瑞籬の内側、本殿を間近に見るには昇殿参拝が要る。実施は11時と14時の1日2回、期間は2月4日から12月31日まで、所要は約30分。初穂料は高校生以上1,000円、小中学生500円である。象やリスの彫刻を近くで確かめたい場合はこれを申し込むことになる。撮影の可否は当日の案内に従いたい。

毎年9月15日の石清水祭は、賀茂祭・春日祭と並ぶ日本三大勅祭の一つである。午前2時に本殿で神事が始まり、約500名の奉仕者が松明と提灯の灯りのなか3基の御鳳輦を奉じて山上から山麓の頓宮へ渡御する。この日は境内の様相が大きく変わる。

交通は京阪本線の石清水八幡宮駅から参道ケーブルで約3分、山上駅から徒歩約5分。徒歩で参道を登る場合は約30分かかる。

Q&A

Q石清水八幡宮本社の国宝10棟とは何ですか。
A本殿、瑞籬、幣殿及び舞殿、楼門、東門、西門、廻廊3棟(楼門西門間・楼門東門間・背面)、摂社武内社本殿です。平成28年(2016年)2月9日に附・棟札3枚とともに国宝に指定されました。いずれも寛永11年(1634年)の造営に属します。
Q八幡造とはどのような建築様式ですか。
A切妻造の内殿と外殿を前後に並べて一体化させる形式で、横から見ると二つの屋根が谷を挟んで並ぶためM字型に見えます。石清水八幡宮の本殿は桁行約40メートルにおよび、八幡造の本殿としては現存最古にして最大です。
Q石清水八幡宮本社が10棟で一件の指定なのはなぜですか。
A囲われた一個の祭祀空間として構成されているからです。楼門・幣殿及び舞殿・本殿という中軸を、瑞籬が内側から、廻廊3棟が外側から取り囲みます。本殿だけを見れば現存最古最大の八幡造、廻廊だけを見れば長い通路ですが、10棟を並べて初めてこの構成が読み取れます。
Q石清水八幡宮本社の指定はいつ行われましたか。
A三段階です。楼門・東門・西門・本殿・幣殿及び舞殿・廻廊3棟の8棟が明治30年(1897年)12月28日に重要文化財となり、瑞籬と摂社武内社本殿が昭和42年(1967年)6月15日に加わりました。平成28年(2016年)2月9日に10棟がまとめて国宝へ格上げされています。
Q石清水八幡宮本社の本殿を間近で見ることはできますか。
A昇殿参拝で可能です。11時と14時の1日2回、2月4日から12月31日まで、所要約30分。初穂料は高校生以上1,000円、小中学生500円です。境内の参拝は無料で、楼門の外からでも社殿群の正面と極彩色は見られます。

基本情報

名称石清水八幡宮本社(いわしみずはちまんぐうほんしゃ)
所在地京都府八幡市八幡高坊30(男山山頂)
指定区分国宝(建造物)/境内は国史跡「石清水八幡宮境内」
指定年平成28年(2016年)2月9日 国宝指定/明治30年(1897年)12月28日 8棟を重要文化財指定/昭和42年(1967年)6月15日 瑞籬・摂社武内社本殿を追加/平成24年(2012年) 境内を史跡指定
員数10棟(本殿、瑞籬、幣殿及び舞殿、楼門、東門、西門、廻廊3棟、摂社武内社本殿)/附 棟札3枚
寸法本殿 八幡造(切妻造の内殿と外殿を前後に並べて一体化)、桁行約40メートル/いずれも寛永11年(1634年)造営
所有者石清水八幡宮
公開状況境内参拝は無料。開門は4月から9月が5時30分から18時30分、10月が6時から18時、11月から3月が6時30分から18時。瑞籬内の昇殿参拝は11時・14時(2月4日から12月31日、約30分)、高校生以上1,000円、小中学生500円

参考文献

文化遺産オンライン 石清水八幡宮本社
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/200919
八幡市 石清水八幡宮本社が国宝に指定されました
https://www.city.yawata.kyoto.jp/0000000457.html
八幡市 やわた物語 石清水八幡宮
https://www.city.yawata.kyoto.jp/yawata-story/introduction/introduction003.html
京都府 山城広域振興局 やましろの文化財
https://www.pref.kyoto.jp/kyotoyamashiro/treasure_8.html
石清水八幡宮 公式サイト
https://iwashimizu.or.jp/
石清水八幡宮 当宮について
https://iwashimizu.or.jp/about/

最終更新日: 2026.08.31

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  1. 石清水八幡宮本社 楼門 0.00 km
  2. 石清水八幡宮本社 幣殿及び舞殿 0.01 km
  3. 石清水八幡宮本社 廻廊 (楼門西門間) 0.02 km
  4. 石清水八幡宮本社 廻廊 (楼門東門間) 0.02 km
  5. 石清水八幡宮本社 西門 0.03 km
  6. 石清水八幡宮本社 東門 0.03 km
  7. 石清水八幡宮本社 本殿 0.03 km
  8. 石清水八幡宮本社 廻廊 (背面) 0.04 km
  9. 石清水八幡宮本社 瑞籬 0.08 km
  10. 石清水八幡宮本社 摂社武内社本殿 0.08 km