唐時代の書跡 ― 1953年に国宝
真草千字文は、京都府にある中国の書跡で、1953年(昭和28年)11月14日に国宝に指定された。員数は1帖、種別は書跡・典籍、指定番号は00180。読みは「しんそうせんじもん」である。
文化庁は国を中国、時代を唐とし、作者欄は空欄である。年代欄と西暦欄もいずれも空欄で、解説文は「唐時代の作品。」の一行にとどまる。
重文指定年月日欄も空欄で、国宝指定年月日のみが記録されている。ほとんどの国宝が重要文化財を経ているのに対し、この物件は重文の記録をもたない。
作者は記録されていない
この書跡は、隋の僧である智永の筆とされることが多い。
智永は王羲之の七世の孫と伝えられ、真草千字文を八百本書いたという。京都国立博物館の記録もその伝承を記す。ただし文化庁は作者欄を空欄とし、時代を唐とする。
智永は隋代(6世紀)の人であり、唐は隋の次の王朝である。作者を智永とすれば時代は隋になるはずだが、文化庁の記載は唐である。この物件を唐代の写しとみる立場と対応する。
旧来の記述に「智永が書写した唯一無二の書跡」という断定が見られるが、公的記録は作者を特定していない。本稿は文化庁の記載に従い、智永の筆とする説があることを記すにとどめる。
千字文という書物
千字文は、四字一句、二百五十句からなる四言古詩である。京都国立博物館の記録によれば、古来より識字や習字の手本として広く用いられた。
千字がすべて異なる文字で構成される。同じ字を使わずに千字を並べることで、文字を覚える教材として機能した。
「真草」は真書と草書をさす。真書は楷書のことで、一字ずつ整えて書く。草書は続けて崩して書く。同じ千字を二つの書体で並べて書くのがこの形式である。
一つの文字を二通りの書き方で示すため、手本としての性格が強い。書体の対応を一目で確かめられる構成になっている。
拓本とは別の物件である
京都国立博物館は「宋拓智永真草千字文」を所蔵している。これは本件とは別の物件である。
同館の記録によれば、この拓本は大観3年(1109年)に長安の崔氏所蔵の真跡本によって関中で刻された「関中本」と呼ばれる系統である。時代は隋・6世紀、材質・技法は拓本、法量は縦23.9センチメートル、横13.0センチメートル、上野精一の寄贈である。
拓本は石に刻んだものを紙に写し取ったもので、筆で書いた原本とは別の資料にあたる。国宝に指定されているのは京都府にある1帖であって、京都国立博物館の拓本ではない。
資料を参照する際、「真草千字文」で検索すると拓本の記録が出ることがある。種別(書跡か拓本か)と所蔵先で見分けたい。
鑑賞
文化庁のデータベースは所有者名を「個人」とし、所在地欄と保管施設欄はいずれも空欄である。公的記録から現在の保管場所が読み取れない物件である。所在都道府県は京都府である。
個人が所有する国宝は、常設で公開されるとは限らない。展覧会に出陳される機会を待つことになる。
書跡は光や湿度に弱く、展示期間が限られることが多い。出陳されても期間は短いので、公開の告知を確かめて訪ねたい。
類似の資料として、京都国立博物館の宋拓本がある。原本を見られない場合でも、拓本から字形を確かめることはできる。
Q&A
- 真草千字文はいつ国宝に指定されましたか。
- 1953年(昭和28年)11月14日です。員数は1帖、種別は書跡・典籍、指定番号は00180。文化庁は国を中国、時代を唐とします。重文指定年月日欄は空欄で、国宝指定年月日のみが記録されています。
- 誰が書いたものですか。
- 隋の僧である智永の筆とされることが多く、智永は王羲之の七世の孫と伝えられます。ただし文化庁は作者欄を空欄とし、時代を唐とします。智永は隋代の人ですから、この記載は唐代の写しとみる立場と対応します。本稿は作者を断定していません。
- 千字文とは何ですか。
- 四字一句、二百五十句からなる四言古詩で、古来より識字や習字の手本として広く用いられました。千字がすべて異なる文字で構成されており、同じ字を使わずに千字を並べることで文字を覚える教材として機能しました。
- 「真草」とはどういう意味ですか。
- 真書と草書をさします。真書は楷書のことで一字ずつ整えて書き、草書は続けて崩して書きます。同じ千字を二つの書体で並べて書く形式で、一つの文字を二通りの書き方で示すため、手本としての性格が強くなります。
- 真草千字文は見られますか。
- 文化庁のデータベースは所有者名を「個人」とし、所在地欄と保管施設欄はいずれも空欄です。公的記録から現在の保管場所は読み取れません。書跡は光や湿度に弱く展示期間が限られることが多いため、公開の告知を確かめて訪ねてください。
基本情報
| 名称 | 真草千字文(しんそうせんじもん) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府(文化庁データベースの所在地欄は空欄) |
| 指定区分 | 国宝(書跡・典籍)/指定番号00180 |
| 指定年 | 1953年(昭和28年)11月14日 国宝(重文指定年月日欄は空欄) |
| 員数 | 1帖 |
| 寸法 | 千字文を真書と草書の二体で並べて書いた書跡。千字文は4字一句、250句からなる四言古詩。文化庁は国を中国、時代を唐とし、作者欄は空欄 |
| 所有者 | 個人(文化庁データベースの記載) |
| 公開状況 | 常設の公開はない。展覧会への出陳を待つことになる |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 真草千字文
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/699
- 京都国立博物館 館蔵品データベース 宋拓智永真草千字文(拓本/別の物件)
- https://knmdb.kyohaku.go.jp/3182.html
- 文化庁 国宝・重要文化財(美術工芸品)の制度
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_bijutsu/
- 京都国立博物館 公式サイト
- https://www.kyohaku.go.jp/
最終更新日: 2026.09.04