3巻の典籍 ― 1952年に国宝

冥報記は、京都府の高山寺が所有する唐時代の典籍で、1952年(昭和27年)11月22日に国宝に指定された。員数は3巻、指定番号は00143である。附指定はない。

文化庁データベースの重要文化財指定年月日の欄は空欄で、重要文化財を経ずに国宝へ指定されている。これまで扱った中で18件目にあたる。

解説文は「唐時代の作品。」の一文のみである。一文だけの解説は、これで17件目となる。高山寺については、紙本墨画鳥獣人物戯画もすでに扱った。

国の欄が「中国」である

この物件で目を引くのは、国の欄である。

国指定文化財等データベースの国の欄は、中国とする。日本ではない。

金剛場陀羅尼経の国の欄は日本だった。今昔物語集も日本で作られた写本である。本件は違う。中国で作られたものが、日本の制度で国宝に指定されている。

文化財保護の制度は、物が作られた場所を問わない。日本にあり、日本で保護されているかどうかが問題になる。

ここまで扱った物件にも、絹本著色夏景山水図や玳玻天目茶碗のように南宋時代のものがあった。いずれも中国で作られ、日本に伝わって指定を受けている。本件は国の欄がそれを明示している点が違う。

二つのデータベースで分類が違う

分類についても、前に見た食い違いが繰り返されている。

国指定文化財等データベースの種別の欄は、書跡・典籍とする。一方、文化遺産オンラインの表示は「その他」である。

金剛場陀羅尼経でも同じ食い違いがあった。これで2例目になる。

本稿は、より詳細な項目をもつ国指定文化財等データベースの記載を優先し、書跡・典籍として扱う。

なお旧来の記述に「中国では失われ、日本にのみ現存する」とするものが見られるが、文化庁の記録に他国での現存状況の記載はない。本稿はこの評価を記さない。

唐代の典籍が並んでいる

関連作品を見ると、同じ系統の物件が並ぶ。

華厳略疏刊定記〈巻第八本残巻〉、玉篇巻第廿七〈前半〉、大般涅槃経集解〈巻第十四、第卅二残巻〉、開元釈教録〈巻第十八残巻〉、舎利弗阿毘曇論〈巻第一〉、発菩提心経論〈巻上〉といった名が挙がる。

山括弧の中に、残巻や巻の番号が入る。全体が残っていないことを、名称が示している。

紙本墨画五部心観の「巻初を欠く」、太刀の「以下不明」と同じく、名称が欠落を書き込む方式である。典籍では、どの巻が残っているかを名称で示す。

本件の名称は「冥報記」だけで、残巻の注記がない。3巻が揃った形で記録されている。

閲覧

所有は宗教法人高山寺で、京都府にある。寺が所蔵する典籍であり、常設で公開される性格のものではない。

紙に書かれたものは光に弱く、公開期間が限られるのが通例である。3巻すべてが同時に展示されるとは限らない。

寸法は記録されていない。文化庁の寸法・重量の欄は空欄である。

閲覧や調査については寺の定める手続きによる。訪問前に確認したい。

Q&A

Q冥報記はいつ国宝に指定されましたか。
A1952年(昭和27年)11月22日です。員数は3巻、指定番号は00143、所有は京都府の高山寺で、附指定はありません。重要文化財指定年月日の欄は空欄です。
Qどこで作られたものですか。
A国指定文化財等データベースの国の欄は中国とし、時代は唐とします。中国で作られたものが、日本の制度で国宝に指定されています。文化財保護の制度は、物が作られた場所を問いません。
Q分類は何ですか。
A国指定文化財等データベースは書跡・典籍とし、文化遺産オンラインは「その他」と表示します。金剛場陀羅尼経でも同じ食い違いがあり、本稿はより詳細な項目をもつ前者を優先しています。
Q日本にしか残っていないのですか。
A文化庁の記録に他国での現存状況の記載はありません。旧来の記述にそうするものが見られますが、本稿は記録に基づき、3巻の典籍であること、唐時代のものであること、高山寺が所有することを記すにとどめています。
Q大きさは分かりますか。
A文化庁の寸法・重量の欄は空欄です。解説文も「唐時代の作品。」の一文のみで、寸法は記録されていません。

基本情報

名称冥報記(めいほうき)
所在地所在都道府県は京都府。所有者は宗教法人高山寺
指定区分国宝(書跡・典籍)/指定番号00143/附指定はない/文化遺産オンラインの分類表示は「その他」
指定年1952年(昭和27年)11月22日 国宝
員数3巻
寸法文化庁の寸法・重量の欄は空欄。解説文は「唐時代の作品。」の一文のみ。国の欄は中国、時代は唐
所有者宗教法人高山寺
公開状況寺が所蔵する典籍で、常設の公開ではない。3巻すべてが同時に展示されるとは限らない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 冥報記
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/671
文化遺産オンライン 冥報記
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/189206
高山寺 国宝のご紹介
https://kosanji.com/about/national_treasure/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.05