1幅の頂相 ― 1952年に国宝

絹本著色無準師範像は、京都の東福寺が所有する南宋時代の絵画で、1952年(昭和27年)3月29日に国宝に指定された。員数は1幅、分類は絵画、年代は南宋/1238である。

文化庁データベースの重要文化財指定年月日の欄は空欄である。重要文化財を経ずに国宝へ指定されたことになる。これまで扱った中で4件目にあたる。

文化庁の解説文は「南宋時代の作品。」の一文のみである。絹本著色十六羅漢像、絹本著色普賢延命像に続き、一文だけの解説が3件続いた。

同じ木箱に納められていた二幅

この作品については、別の記録に重要な記述がある。

東福寺には同名の「絹本著色無準師範像」がもう一幅あり、こちらは2016年(平成28年)8月17日に重要文化財となっている。年代は南宋時代/1254で、本件より16年後にあたる。

その記録の解説に、次の一文がある。東福寺では、全身を描く国宝「無準師範像」と同じ木箱に納められて伝来したもので、その文化史的重要性は高く評価される。

二幅が同じ木箱に入っていた。本件は全身を描き、もう一幅は半身を描く。同じ人物を、異なる構図で描いた二幅が、一つの箱に納められて伝わった。

本件の記録には、この事実が書かれていない。一文の解説には「南宋時代の作品。」とあるだけで、木箱のことも、もう一幅のことも出てこない。片方の記録にしかない情報である。

指定まで64年の開きがある

二幅の扱いには大きな差がある。

本件は1952年に国宝、もう一幅は2016年に重要文化財である。64年の開きがある。

記録の詳しさも異なる。本件の解説は一文だが、もう一幅には寸法(縦116.0センチメートル、横50.4センチメートル)も、装丁(掛幅装、画絹一副一鋪)も、着賛による年代の根拠も記されている。

分類も違う。本件は絵画、もう一幅は東洋画(日本画を除く)である。同じ寺の同じ人物を描いた二幅が、別の分類に置かれている。

同じ木箱に入っていた二幅が、区分も指定年も記録の詳しさも異なる。登録や指定は品ごとに行われるため、こうした差が生じる。

名称の誤読を正した

この物件については、英語名称に誤りがあった。

Portrait of Shiromu Jun Shihan on Silk Book となっていた。無準師範の読みは「ぶじゅんしばん」であり、「Shiromu Jun Shihan」は誤読である。

また on Silk Book も誤りにあたる。絹本は絹に描くことを指し、Book(本)ではない。

Portrait of Wuzhun Shifan, Colour on Silk に修正した。無準師範は南宋の僧であり、中国語の読みでは Wuzhun Shifan にあたる。

絹本著色五大尊像の Statue、絹本著色普賢延命像の Statue に続き、絹本著色で始まる名称の英訳を正した3件目である。

鑑賞

所有は東福寺で、京都市東山区にある。寺が所蔵する絵画であり、常設で公開される性格のものではない。

絵は光に弱く、公開期間が限られるのが通例である。博物館の特別展などで出陳されることがあるため、公開の告知を確かめて訪ねたい。

もう一幅と同時に展示されるとは限らない。二幅は別の物件として扱われており、出陳の判断も別に行われる。

東福寺には東福寺三門も別に指定を受けている。同じ寺に複数の物件があり、それぞれ別の記録をもつ。拝観の条件は変わることがあるため、訪問前に確認したい。

Q&A

Q絹本著色無準師範像はいつ国宝に指定されましたか。
A1952年(昭和27年)3月29日です。員数は1幅、分類は絵画、年代は南宋の1238年、所有は東福寺です。重要文化財指定年月日の欄は空欄で、重要文化財を経ずに国宝へ指定されています。
Q同じ名前の作品が他にもあるのですか。
Aあります。東福寺には同名の絹本著色無準師範像がもう一幅あり、2016年(平成28年)8月17日に重要文化財となっています。年代は南宋時代の1254年で、本件より16年後です。
Q二幅の関係は分かっていますか。
Aもう一幅の記録に「東福寺では、全身を描く国宝『無準師範像』と同じ木箱に納められて伝来したもの」とあります。本件は全身、もう一幅は半身を描き、二幅が一つの箱に納められて伝わりました。この記述は本件の記録にはありません。
Q二幅の扱いに差はありますか。
Aあります。指定は1952年と2016年で64年の開きがあり、分類も絵画と東洋画で異なります。記録の詳しさも、本件が一文であるのに対し、もう一幅には寸法や装丁、年代の根拠まで記されています。
Q鑑賞できますか。
A寺が所蔵する絵画であり、常設で公開される性格のものではありません。絵は光に弱く公開期間が限られるのが通例です。二幅は別の物件として扱われるため、同時に展示されるとは限りません。

基本情報

名称絹本著色無準師範像(けんぽんちゃくしょくぶじゅんしばんぞう)
所在地文化庁データベースの所在地の欄は空欄。所有者は京都の東福寺
指定区分国宝(絵画)/重要文化財を経ずに国宝へ指定/同名の別の一幅は重要文化財
指定年1952年(昭和27年)3月29日 国宝
員数1幅
寸法文化庁の解説文は「南宋時代の作品。」の一文のみで、寸法も画面の構成も記されていない。年代は南宋の1238年。全身を描く
所有者東福寺
公開状況寺が所蔵する絵画で、常設の公開ではない。絵は光に弱く公開期間が限られる

参考文献

文化遺産オンライン 絹本著色無準師範像(国宝)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/125447
文化遺産オンライン 絹本著色無準師範像(半身像)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/444443
東福寺 境内のご案内
https://tofukuji.jp/guide/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.05