1口の茶碗 ― 1953年に国宝
玳玻天目茶碗は、京都府の相国寺が所有する南宋時代の工芸品で、1931年(昭和6年)1月19日に重要文化財となり、1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定された。員数は1口である。
重要文化財から国宝まで22年が経っている。1931年の指定は、ここまで扱った物件のなかでも早い部類にあたる。
寸法は高さ6.7センチメートル、口径11.8センチメートル、高台径3.5センチメートルとされる。手のひらに載る大きさである。
釉薬をかけないことで文様が現れる
玳玻天目茶碗の作り方について、文化庁の記録は具体的である。
素地は淡卵殻色の堅い半磁質で、内外全面に黒飴色の光沢の強い天目釉をかけ、さらにその上から失透性の藁灰釉をかけて文様を表す、とある。
ここまでは釉薬を重ねる説明である。ところが続く一文が逆を示す。内面は文様の部分だけ藁灰釉をかけずに、団花文15個を斑状に配し、そのまわりに唐草文帯を廻らす、とある。
文様の部分だけ藁灰釉をかけない。かけなかったところに下の黒飴色が残り、それが文様になる。描き加えるのではなく、覆わないことで形が出る。
玳玻天目茶碗の外側は逆の作りである。外側は天目釉の上に藁灰釉をふりかけて斑文様を表す、とある。内側はかけずに残し、外側はふりかける。同じ茶碗の内と外で、文様の出し方が反対になっている。
出土品はあるが、伝わったものは少ない
玳玻天目茶碗の評価の一文にも、独特の観点がある。
玳玻天目は中国出土のものがあるが、古くから伝世したものはほとんどなく、特に本茶碗のように文様が整い、釉薬が美しいものは非常に珍しいため、古来より名碗として著名である、とある。
出土したものと伝わったものが区別されている。土中から掘り出されたものは中国にあるが、人の手から手へ伝えられてきたものは少ない、という指摘である。
絹本著色六道絵では「遺例の少ない」、紙本墨書帝系図の周辺では「古系図の遺例」と、残っている数の少なさが評価に関わっていた。この記録は、残り方の種類まで分けている。
珍しさの理由も二つ挙げられる。文様が整っていること、釉薬が美しいことである。
所持者の名が記録されている
玳玻天目茶碗の伝来についても記述がある。
江戸時代中期頃には、大阪の上田三郎右衛門が所持していたものを松平不昧公が入手し、大名物として愛玩したと言われる、とある。
二人の名が挙がる。ただし文末は「と言われる」であり、断定ではない。
紙本著色西行法師行状絵詞の断簡では、鑑定書と鑑定控という文書から所蔵者が特定されていた。本件は文書の裏付けが示されず、伝聞の形で記される。
形についても記録がある。形は縁を僅かに捻り返し、高台の低く小さい天目形、底裏は露胎、縁に真鍮の覆輪を廻らす、とある。覆輪は縁に金属を巻いて補強する装いをいう。
鑑賞
玳玻天目茶碗の所有は相国寺で、京都府にある。寺が所蔵する茶碗であり、常設で公開される性格のものではない。
陶磁器は絵画や文書ほど光に弱くはないが、展示の機会は所有者の運営による。
1口であるから、出陳されれば全体を見ることができる。ただし内面の団花文15個は、上から覗き込まなければ見えない。
展示の予定は変わることがあるため、訪問前に確認したい。
Q&A
- 玳玻天目茶碗はいつ指定されましたか。
- 1931年(昭和6年)1月19日に重要文化財、1953年(昭和28年)3月31日に国宝へ指定されました。員数は1口、所有は京都府の相国寺です。
- 文様はどのように作られていますか。
- 文化庁は「内面は文様の部分だけ藁灰釉をかけずに、団花文15個を斑状に配し、そのまわりに唐草文帯を廻らす」と記します。かけなかったところに下の黒飴色が残り、それが文様になります。外側は逆に、藁灰釉をふりかけて斑文様を表します。
- 大きさはどれくらいですか。
- 高さ6.7センチメートル、口径11.8センチメートル、高台径3.5センチメートルです。手のひらに載る大きさです。
- なぜ珍しいのですか。
- 文化庁は「玳玻天目は中国出土のものがあるが、古くから伝世したものはほとんどなく」と記し、出土したものと伝わったものを区別します。そのうえで文様が整い釉薬が美しいものは非常に珍しいとします。
- 誰が持っていたのですか。
- 文化庁は「江戸時代中期頃には、大阪の上田三郎右衛門が所持していたものを松平不昧公が入手し、大名物として愛玩したと言われる」と記します。ただし文末は「と言われる」であり、断定ではありません。
基本情報
| 名称 | 玳玻天目茶碗(たいひてんもくちゃわん) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府。所有者は相国寺 |
| 指定区分 | 国宝(工芸品) |
| 指定年 | 1931年(昭和6年)1月19日 重要文化財/1953年(昭和28年)3月31日 国宝 |
| 員数 | 1口 |
| 寸法 | 高さ6.7センチメートル、口径11.8センチメートル、高台径3.5センチメートル。素地は淡卵殻色の堅い半磁質で、黒飴色の天目釉の上に失透性の藁灰釉をかけ、内面は文様の部分だけかけずに団花文15個と唐草文帯を表す。縁に真鍮の覆輪。南宋時代 |
| 所有者 | 相国寺 |
| 公開状況 | 寺が所蔵する茶碗で、常設の公開ではない。展示の機会は所有者の運営による |
参考文献
- 文化遺産オンライン 玳玻天目茶碗
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/125777
- 相国寺承天閣美術館
- https://www.shokoku-ji.jp/museum/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
- 文化庁 文化財の紹介 美術工芸品
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/bijutsu_kogei/
最終更新日: 2026.09.05