1巻の写経 ― 1951年に国宝
金剛場陀羅尼経は、京都府にある飛鳥時代の写経で、1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定された。員数は1巻、指定番号は00036、所有は国(文化庁)である。附指定はない。
年代欄と西暦欄には、いずれも686と記される。年が特定されている。
解説文は「飛鳥時代の作品。」の一文のみである。一文だけの解説は、これで16件目となる。所有が国(文化庁)である物件は、紙本著色西行法師行状絵詞に続いて2件目にあたる。
ト書が「云々」で終わっている
この物件のト書の欄には、奥書の文言が写されている。
奥書歳次丙戌年五月川内国志貴評内知識云々、とある。丙戌の年の五月、川内国志貴評の内知識、と読める。
末尾の「云々」に注目したい。奥書はここで終わっているのではない。以下を省略した、という印である。
太刀〈銘備州長船師光/応永九年(以下不明)〉では、名称の末尾に(以下不明)とあった。関連物件には□で一文字ずつの欠字を示すものもあった。どちらも読めないことを表す。
云々は違う。読めるが、記録には全部を写さないという意味である。読めないのか、省いたのか。記録の書き方は、その二つを区別している。
丙戌の年が686年と換算されている
奥書は干支で年を示す。歳次丙戌年とある。
丙戌は干支の組み合わせの一つで、60年ごとに巡ってくる。それだけでは西暦が定まらない。
ところが文化庁は、年代欄にも西暦欄にも686と記す。時代が飛鳥であることと合わせて、どの丙戌の年かが特定されている。
紙本著色当麻曼荼羅縁起では、本体の年代が「鎌倉」とだけで年が特定されず、附の添書だけが1793年という年をもっていた。本件は本体の年が確定している。
年を確定させる手がかりが奥書にあることになる。ト書の欄が、年代欄の根拠を示している。
二つのデータベースで分類が違う
分類についても、注意すべき点がある。
国指定文化財等データベースの種別の欄は、書跡・典籍とする。一方、文化遺産オンラインの表示は「その他」である。
同じ物件について、二つのデータベースが違う分類を示している。本稿は、より詳細な項目をもつ国指定文化財等データベースの記載を優先し、書跡・典籍として扱う。
三十帖冊子も文化遺産オンラインでは「その他」と表示されていた。表示の系統によって分類の粒度が違う可能性がある。
なお旧来の記述に「日本最古の写経」とするものが見られるが、文化庁の記録に他の写経との比較はない。本稿はこの評価を記さない。
閲覧
所有は国(文化庁)で、所在都道府県は京都府である。常設で公開される性格のものではない。
紙に書かれたものは光に弱く、公開期間が限られるのが通例である。
1巻であるから、出陳されれば全体を見ることができる。ただし長い巻では一部のみが広げられることも考えられる。
博物館の特別展などで出陳されることがあるため、公開の告知を確かめて訪ねたい。
Q&A
- 金剛場陀羅尼経はいつ国宝に指定されましたか。
- 1951年(昭和26年)6月9日です。員数は1巻、指定番号は00036、所有は国(文化庁)で、附指定はありません。重要文化財指定年月日の欄は空欄です。
- ト書の「云々」とは何ですか。
- 以下を省略したという印です。奥書がそこで終わっているのではありません。太刀の名称に見られる(以下不明)や□が読めないことを示すのに対し、云々は読めるが全部を写さないという意味です。
- なぜ686年と分かるのですか。
- 奥書に「歳次丙戌年」とあります。丙戌は60年ごとに巡るため単独では西暦が定まりませんが、文化庁は時代を飛鳥とし、年代欄と西暦欄にいずれも686と記しています。
- 分類は何ですか。
- 国指定文化財等データベースは書跡・典籍とし、文化遺産オンラインは「その他」と表示します。二つのデータベースで違うため、本稿はより詳細な項目をもつ前者を優先しています。
- 日本最古の写経ですか。
- 文化庁の記録に他の写経との比較はありません。旧来の記述にそうするものが見られますが、本稿は記録に基づき、1巻の写経であること、686年の年代をもつこと、国が所有することを記すにとどめています。
基本情報
| 名称 | 金剛場陀羅尼経(こんごうじょうだらにきょう) |
|---|---|
| 所在地 | 所在都道府県は京都府。所有者は国(文化庁) |
| 指定区分 | 国宝(書跡・典籍)/指定番号00036/附指定はない/文化遺産オンラインの分類表示は「その他」 |
| 指定年 | 1951年(昭和26年)6月9日 国宝 |
| 員数 | 1巻 |
| 寸法 | 文化庁の解説文は「飛鳥時代の作品。」の一文のみで、寸法は記されていない。ト書の欄に「奥書歳次丙戌年五月川内国志貴評内知識云々」とあり、年代欄と西暦欄はいずれも686。時代は飛鳥 |
| 所有者 | 国(文化庁) |
| 公開状況 | 常設の公開ではない。紙に書かれたものは光に弱く、公開期間が限られる |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 金剛場陀羅尼経
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/582
- 文化遺産オンライン 金剛場陀羅尼経
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/125977
- 文化庁 文化財の紹介 美術工芸品
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/bijutsu_kogei/
- 文化庁 公式サイト
- https://www.bunka.go.jp/
最終更新日: 2026.09.05