109年を経て国宝へ ― 2020年

八坂神社本殿は、京都府京都市東山区祇園町北側にある社殿で、2020年(令和2年)12月23日に国宝に指定された。それに先立つ1911年(明治44年)4月17日には重要文化財となっている。員数は1棟、所有は宗教法人八坂神社である。

重要文化財から国宝まで109年が経っている。萬福寺の111年に次ぐ長さで、北野天満宮の62年、安国寺経蔵の54年を大きく上回る。

文化庁は、四代将軍徳川家綱により、承応3年(1654年)の建立と記す。建立から国宝指定まで366年である。

構造の記述が七つ並ぶ

構造及び形式等の欄は長い。桁行七間、梁間六間、入母屋造、正面向拝三間、両側面及び背面庇付、背面三間突出、檜皮葺。

七つの要素が並ぶ。規模、屋根の形、正面の向拝、庇の付き方、背面の突出、葺き方である。

「背面三間突出」に注意したい。建物の背面が三間分、後ろへ突き出している。正面ではなく背面が張り出す。

庇も「両側面及び背面庇付」と、三方向に付くことが記される。正面には向拝が付き、他の三方には庇が付く。

文化庁は本殿の外観を「入母屋造で、両側面と背面に庇をつけた独特の外観をもつ」とする。「独特」という語が用いられている。

大屋根の下に四つの区画が入れ子になる

内部の構成は、外から内へ向かって重なる。

身舎は奥側の内々陣と前側の内陣に区画する。身舎の四周には外陣がまわり、正面に礼堂が取り付く。ここまでが入母屋造、檜皮葺の大屋根に収まる。

内々陣、内陣、外陣、礼堂。中心から外へ四つの層が重なり、一つの大屋根の下に入る。

その外側にさらに庇が付く。文化庁はさらに庇をつけて規模を拡張するのは、平安時代の建築の方法とし、側面の庇は小部屋に分かれていると記す。

大屋根の内側に四つ、その外に庇。外から見える屋根の数と、内部の区画の数は一致しない。

内々陣と内陣には、それぞれ正面に三間通しの棚を設けて他に例を見ない。「他に例を見ない」と断定されている。

建物が何かを「伝え」「示す」

文化庁の評価の言葉は、伝達の語で組まれている。

八坂神社本殿は、平安時代の建築の空間構成を伝え、中世の信仰儀礼と建物の関係をよく示しており、こうした伝統を継承した建物として、江戸時代前期に建立されたことは我が国建築史上、高い価値を有する。

「伝え」「示し」「継承した」と、三つの語が重なる。建物そのものの美しさや技術ではなく、建物が何を伝えているかが評価されている。

伝えているのは二つである。一つは平安時代の建築の空間構成、もう一つは中世の信仰儀礼と建物の関係。いずれも建立より前の時代のものである。

文化庁は、この本殿の形式は、鎌倉時代には成立していたことが明らかであるとする。1654年の建立でありながら、形式は鎌倉時代までさかのぼる。

維持してきた人々

評価にはもう一段ある。

また、この本殿が、祇園祭を担う人々によって現在まで維持されてきたことには、深い文化史的意義が認められる。

建物ではなく、維持してきた人々が評価に書き込まれている。誰が守ってきたかが公的記録に記される例は多くない。

八坂神社は京都市東山区祇園町北側にある。境内は参拝が可能で、本殿の外観は見られる。

内部の内々陣や内陣に立ち入れるかは神社の運用による。参拝時間も変わることがあるため、訪問前に八坂神社の案内で確認したい。外からは入母屋造の大屋根と、三方に付く庇の重なりが確かめられる。

Q&A

Q八坂神社本殿はいつ国宝に指定されましたか。
A2020年(令和2年)12月23日です。それに先立つ1911年(明治44年)4月17日に重要文化財となっており、重文から国宝まで109年が経っています。員数は1棟、所有は宗教法人八坂神社です。
Qどのような構造ですか。
A桁行七間、梁間六間、入母屋造、正面向拝三間、両側面及び背面庇付、背面三間突出、檜皮葺です。文化庁は「入母屋造で、両側面と背面に庇をつけた独特の外観をもつ」とします。背面が三間分、後ろへ突き出しています。
Q内部はどう区画されていますか。
A身舎を奥側の内々陣と前側の内陣に区画し、四周に外陣がまわり、正面に礼堂が取り付きます。ここまでが一つの大屋根に収まり、その外側にさらに庇が付きます。内々陣と内陣には、それぞれ正面に三間通しの棚を設けて他に例を見ないとされます。
Q何が評価されているのですか。
A文化庁は「平安時代の建築の空間構成を伝え、中世の信仰儀礼と建物の関係をよく示しており、こうした伝統を継承した建物として、江戸時代前期に建立されたことは我が国建築史上、高い価値を有する」と記します。建物が何を伝えているかが評価されています。
Q評価に他の要素はありますか。
A文化庁は「この本殿が、祇園祭を担う人々によって現在まで維持されてきたことには、深い文化史的意義が認められる」と記します。建物ではなく、維持してきた人々が評価に書き込まれています。

基本情報

名称八坂神社本殿(やさかじんじゃほんでん)
所在地京都府京都市東山区祇園町北側
指定区分国宝(建造物)/境内の29棟は別に指定を受けている
指定年1911年(明治44年)4月17日 重要文化財/2020年(令和2年)12月23日 国宝
員数1棟
寸法桁行7間、梁間6間、入母屋造、正面向拝3間、両側面及び背面庇付、背面3間突出、檜皮葺。身舎を内々陣と内陣に区画し、四周に外陣、正面に礼堂が取り付いて一つの大屋根に収まる。内々陣と内陣にはそれぞれ正面に3間通しの棚を設ける。1654年建立
所有者宗教法人八坂神社
公開状況境内の参拝は可能で外観は見られる。内部への立ち入りは神社の運用による

参考文献

文化遺産オンライン 八坂神社本殿
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/194450
八坂神社 社殿について
https://www.yasaka-jinja.or.jp/about/architecture/
八坂神社 本殿
https://www.yasaka-jinja.or.jp/shrine_deity/honden/
八坂神社 公式サイト
https://www.yasaka-jinja.or.jp/about/

最終更新日: 2026.09.05