重要文化財から国宝まで43年
曜変天目茶碗は、京都府の竜光院が所有する茶碗で、1908年(明治41年)4月23日に重要文化財となり、1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定された。
両者のあいだは43年である。1908年4月23日は、紙本著色当麻曼荼羅縁起が重要文化財となった日と同じである。同じ日に重要文化財となった二件が、1951年と1955年に別々に国宝へ進んでいる。
本件そのもののレコードは、文化遺産オンラインおよび国指定文化財等データベースの検索では確認できなかった。本稿はCMSの値と、同種の物件の記録に基づいて構成している。員数と寸法は記していない。
同じ主題に「重要美術品」の物件がある
曜変天目という名の物件は、これだけではない。
根津美術館に曜変天目という物件があり、建窯、中国、南宋時代、一口とされる。高さ6.7センチメートル、口径11.8センチメートル、底径3.9センチメートルである。
この物件は国宝でも重要文化財でもない。区分は重要美術品とされる。
紙本墨画拾得図の周辺では、登録美術品という制度が現れた。重要美術品はそれとも違う。同じ主題の作品が、三つの異なる制度のもとに並ぶことになる。
絹本著色不動明王像では国・県・市という主体の違いがあり、拾得図では重要文化財と登録美術品という違いがあった。ここには重要美術品という第三の区分が加わる。
「むしろ油滴と分類されるべき」という見方
根津美術館の物件の記録には、注目すべき一文がある。
内箱の蓋表に「曜変」と小堀遠州の筆になる金粉字形の書付があるが、むしろ油滴と分類されるべきとの見方もある、とある。
箱に「曜変」と書かれている。それが名の由来になっている。ところが、実際には油滴と分類すべきだという見方が併記されている。
名称が実体と一致しないかもしれない、という指摘である。ここまで名称が作者の不記載を示したり(松に草花図)、欠損を書き込んだり(五部心観)する例を見てきたが、名称そのものが疑われる例は初めてになる。
これは根津美術館の物件についての記述であり、竜光院の物件の記録ではない。両者を混同しないよう注意が要る。
天目形は寸法が揃っている
寸法を並べると、興味深いことが分かる。
根津美術館の曜変天目は、高さ6.7センチメートル、口径11.8センチメートル。玳玻天目茶碗は、高さ6.7センチメートル、口径11.8センチメートルである。
高さと口径が一致している。違うのは底の径で、根津本が3.9センチメートル、玳玻天目が3.5センチメートルである。
天目形と呼ばれる形が、寸法の面でも揃っていることになる。文化庁は玳玻天目茶碗の形を、縁を僅かに捻り返し、高台の低く小さい天目形と記していた。
釉の表れ方についても、根津本の記録は詳しい。内外ともに片身には斑文が大きく出て、青貝のような輝きと光彩を見せるが、他面には油滴のような斑が細かく一面にあらわれている、とある。同じ一碗のなかで、面によって表れ方が違う。
鑑賞
所有は竜光院で、京都府にある。寺が所蔵する茶碗であり、常設で公開される性格のものではない。
陶磁器は絵画や文書ほど光に弱くはないが、展示の機会は所有者の運営による。
旧来の記述に「世界に3碗しか現存しない」とするものが見られるが、文化庁の記録に現存数の記載は確認できなかった。本稿はこの記述を記さない。
展示の予定は変わることがあるため、訪問前に確認したい。
Q&A
- 曜変天目茶碗はいつ指定されましたか。
- 1908年(明治41年)4月23日に重要文化財、1951年(昭和26年)6月9日に国宝へ指定されました。両者のあいだは43年で、所有は京都府の竜光院です。
- 同じ名前の物件が他にもあるのですか。
- あります。根津美術館の曜変天目は建窯、中国、南宋時代、一口とされ、区分は重要美術品です。国宝でも重要文化財でもなく、第三の制度にあたります。
- 曜変という名は確かなのですか。
- 根津美術館の物件の記録は「内箱の蓋表に『曜変』と小堀遠州の筆になる金粉字形の書付があるが、むしろ油滴と分類されるべきとの見方もある」と記します。ただしこれは根津本についての記述で、竜光院の物件の記録ではありません。
- 大きさは分かりますか。
- 本件の寸法は確認できなかったため記していません。根津美術館の曜変天目は高さ6.7センチメートル、口径11.8センチメートルで、玳玻天目茶碗と高さも口径も一致します。
- 世界に3碗しかないのですか。
- 文化庁の記録に現存数の記載は確認できませんでした。旧来の記述にそうするものが見られますが、本稿は記録に基づき、指定の年月日と所有者を記すにとどめています。
基本情報
| 名称 | 曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府。所有者は竜光院 |
| 指定区分 | 国宝/根津美術館の曜変天目は重要美術品で別の制度 |
| 指定年 | 1908年(明治41年)4月23日 重要文化財/1951年(昭和26年)6月9日 国宝 |
| 員数 | 文化庁の記録で確認できなかったため記していない |
| 寸法 | 文化庁の記録で確認できなかったため記していない。参考として、根津美術館の曜変天目は高さ6.7センチメートル、口径11.8センチメートル、底径3.9センチメートル |
| 所有者 | 竜光院 |
| 公開状況 | 寺が所蔵する茶碗で、常設の公開ではない。展示の機会は所有者の運営による |
参考文献
- 文化遺産オンライン 曜変天目(根津美術館、重要美術品)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/146654
- 文化遺産オンライン 玳玻天目茶碗
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/125777
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
- 文化庁 文化財の紹介 美術工芸品
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/bijutsu_kogei/
最終更新日: 2026.09.05