1件の温泉沈澱物 ― 1928年に国の指定

中房温泉の膠状珪酸および珪華は、長野県安曇野市にある温泉の沈澱物で、1928年(昭和3年)10月4日に国の指定を受けた。区分は天然記念物である。

ふりがなの欄は、なかぶさおんせんのこうじょうけいさんおよびけいかである。管理団体名の欄は空である。

文化庁は、信濃鉄道有明駅の西方約10キロメートルの所に位置する、と記す。

名称の二つのうち、一方は稀ではないと断られる

名に並ぶ二つのものが、同じ重さで評価されていない。

名称は、膠状珪酸および珪華である。珪華は温泉から沈澱した珪酸の固まりをいう。膠状珪酸は、固まりきらない寒天のような状態の珪酸をいう。

文化庁は、硅華の沈澱は火山地方の温泉において必ずしも稀ではない、と記す。

続けて、しかれども膠状硅酸の沈澱せる所ならびに硅酸の沈澱と微生物との関係を示す所は他に多く類例を見ず、と結ぶ。

御坂隧道では、坑口部の意匠は比較的に簡素だが、と断ってから価値が述べられた。あちらは一つのものの一面を断る。

本件は、名称に並ぶ二つのうち一方を稀ではないと断り、もう一方に価値を置く。評価の言い方として25型目にあたる。

淡い紫の色が、微生物の関わりを示す

沈澱物の色が、生き物の働きの手がかりとされている。

文化庁は、大弾正温泉の流下する地面には淡紫色のチーズ様の膠状硅酸の現に沈澱しつつあるものあり、と記す。

続けて、その淡紫色を帯びるは微生物の硅酸の沈澱に関係あるを示すものなり、とある。

チーズのような柔らかさの沈澱が、いまも積もりつつある。その淡い紫が、微生物が沈澱に関わることを示す。

土黒川のオキチモズク発生地では、藻そのものが指定の理由だった。あちらは生き物が対象である。

本件は、生き物ではなく沈澱物が対象で、その色から生き物の関わりが読み取られる。石と生き物の境にあたることになる。

湧出口が、30余りに達する

湯の出る口が、数多く記録されている。

文化庁は、湧出口はなはだ多くその数三十有余に達す、と記す。

続けて、白滝の湯、御座の湯、滝の湯、小鍋立、蒸湯、飯蒸の湯、薬師の湯、小弾正、大弾正付近は硅華の沈澱ことに顕著にして、と個々の湯の名を挙げる。

その面積は東西百数十メートル、南北40メートルに及び、厚さは最も厚い所で2メートルに達する、とされる。

姫島の黒曜石産地では、島が七つの火山に分けて数えられた。あちらは地形が単位になる。

本件は、湯の出る口が一つずつ名を持つ。沈澱の広がりは、その湯の流れ出す範囲に重なることになる。

見学

所在は長野県安曇野市である。

文化庁は、位置を信濃鉄道有明駅からの距離で示す。1928年当時の鉄道名で記されている。

若桜鉄道隼駅でも、位置が他の駅からの距離で示されていた。駅を起点に場所を述べる書き方になる。

解説文は片仮名の文語体で書かれる。八女古墳群の前半と同じく、指定時の文がそのまま残る。名称は珪、解説文は硅と、字も分かれる。

温泉施設の敷地に関わるものであり、見学の可否や条件は所有者と自治体の定めによる。訪問前に確認したい。

Q&A

Qいつ指定されましたか。
A1928年(昭和3年)10月4日に国の指定を受けました。区分は天然記念物です。
Q珪華と膠状珪酸はどう違うのですか。
A珪華は温泉から沈澱した珪酸の固まり、膠状珪酸は固まりきらない寒天のような状態の珪酸です。本件ではチーズのようなものと記されます。
Q何が評価されているのですか。
A文化庁は珪華の沈澱は稀ではないとしたうえで、膠状珪酸の沈澱する所と、珪酸の沈澱と微生物との関係を示す所は他に類例が少ないとします。
Qなぜ淡い紫色なのですか。
A文化庁は、淡紫色を帯びるのは微生物が珪酸の沈澱に関係していることを示す、と記します。
Qどのくらいの広さですか。
A珪華の沈澱は東西百数十メートル、南北40メートルに及び、厚さは最も厚い所で2メートルに達します。

基本情報

名称中房温泉の膠状珪酸および珪華(なかぶさおんせんのこうじょうけいさんおよびけいか)/解説文では硅の字を用いる
所在地長野県安曇野市
指定区分天然記念物/建造物や美術品ではなく自然の地質現象としての指定
指定年1928年(昭和3年)10月4日 指定
員数1件。湧出口は30余りに達する
寸法珪華の沈澱は東西百数十メートル、南北40メートルに及び、厚さは最も厚い所で2メートル。位置は信濃鉄道有明駅の西方約10キロメートルと記される
所有者管理団体名の欄は空で、記録に記載なし
公開状況温泉施設の敷地に関わり、見学の可否や条件は所有者と自治体の定めによる

参考文献

文化遺産オンライン 中房温泉の膠状珪酸および珪華
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/210170
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/
八十二文化財団 信州の文化財
https://www.82bunka.or.jp/bunkazai/detail.php?no=1543
安曇野市
https://www.city.azumino.nagano.jp/

最終更新日: 2026.09.21