旧六十八銀行八木支店:橿原市に佇むルネサンス風近代建築の名作

奈良県橿原市の国道165号線沿いに、ひときわ目を引く洋風建築が佇んでいます。旧六十八銀行八木支店は、1928年(昭和3年)に建てられた鉄筋コンクリート造2階建ての銀行建築です。イオニア式の円柱やアーチ型の窓が織りなすルネサンス風の意匠は、近代日本の建築美を今に伝えています。2006年に橿原市初の登録有形文化財に指定されたこの建物は、現在フレンチレストラン「ジュールフェリエ ラ・バンク」として新たな命を吹き込まれ、歴史と美食が融合する特別な空間となっています。

六十八銀行の歴史と八木支店の誕生

六十八銀行(第六十八国立銀行)は、1879年(明治12年)に旧郡山藩主・柳沢保申の提唱により設立された国立銀行です。八木支店が建設された八木町は、古くから南北の下ツ道(のちの中街道)と東西の横大路が交わる交通の要衝として栄え、多くの旅人や商人が行き交う活気ある町でした。

1934年(昭和9年)、六十八銀行は吉野銀行、八木銀行、御所銀行と合併し、現在の南都銀行が誕生しました。その後、八木支店の建物は戦後一時的に映画館として使われた時代を経て、1963年(昭和38年)からは和歌山相互銀行(のちの和歌山銀行)橿原支店として利用されました。支店統合後は空き店舗となりましたが、1993年(平成5年)にフレンチレストラン兼ウェディング会場「ジュールフェリエ ラ・バンク」として再生され、現在に至ります。

建築の特徴と文化財としての価値

本建築の設計者は、元奈良県技手の舟橋俊一です。舟橋は1924年(大正13年)に奈良県初の鉄筋コンクリート造建築である郡山小学校を設計した人物であり、関東大震災(1923年)以降に全国で広まった耐震・耐火建築の潮流を、いち早く奈良に取り入れた先駆者でした。

建物の外観は、両翼を薄く張り出したシンメトリーな構成が特徴です。中央の玄関上部には半円形のアーチ窓を配し、その両脇にはイオニア式のオーダー(円柱)を据えることで、ルネサンス建築の格調高い雰囲気を醸し出しています。幾何学的な装飾モチーフや玄関周りのタイルの芋目地貼りなど、大正から昭和初期にかけての新しいデザイン感覚も見て取れます。

奈良県南部に現存する最古の鉄筋コンクリート造建築のひとつとされるこの建物は、2006年(平成18年)10月18日に登録有形文化財(建造物)に登録されました。橿原市としては初の登録有形文化財です。また、2013年(平成25年)頃には国道の拡幅工事に伴い、伝統的な曳家技術によって建物が後方に移動されました。文化財を保存しながら都市基盤の整備を両立させた好例として注目されています。

見どころ・楽しみ方

外観だけでも十分に見応えのある建築です。周囲の現代的な建物の中にあって、堂々としたファサードはひときわ存在感を放ちます。左右に張り出した両翼、中央のアーチ窓とイオニア式円柱が織りなす端正な佇まいは、昭和初期の近代建築の気概を感じさせてくれます。建築や近代史に興味のある方はもちろん、散策中にふと足を止めてその造形美に見入る方も少なくありません。

内部は1993年の創業以来、フレンチレストラン「ジュールフェリエ ラ・バンク」として営業しています。かつての銀行の広々とした空間を活かした高い天井と、クラシカルな建築意匠が残る店内で、厳選された食材を使った本格フランス料理を堪能できます。ランチ・ディナーのほか、レストランウェディングや貸切パーティ、ライブ演奏なども開催されており、歴史的建造物の中で特別なひとときを過ごすことができます。

周辺の見どころ

旧六十八銀行八木支店の周辺には、橿原市ならではの歴史的見どころが豊富に揃っています。徒歩圏内にある今井町は、重要伝統的建造物群保存地区に選定された江戸時代の町並みが残る貴重なエリアです。約760戸のうち約500件が伝統的建造物という圧倒的な密度で、国の重要文化財に指定された町家が9件も集中しています。古民家カフェやレストランも点在し、タイムスリップしたかのような散策を楽しめます。

また、初代天皇・神武天皇を祀る橿原神宮、694年に造営された日本初の本格的都城である藤原宮跡、バラの寺として知られるおふさ観音なども近隣に位置しています。古代から近代まで、日本の歴史を幅広く体感できるのが橿原エリアの大きな魅力です。

Q&A

Q旧六十八銀行八木支店の内部を見学できますか?
A現在はフレンチレストラン「ジュールフェリエ ラ・バンク」として営業しており、ランチやディナーの予約をすることで内部を体験できます。貸切パーティやウェディングにも対応しています。最新の営業時間やメニューについては、レストランの公式サイトまたは予約サイトをご確認ください。外観は自由に見学・撮影が可能です。
Qアクセス方法を教えてください。
AJR桜井線(万葉まほろば線)畝傍駅から徒歩約1分、近鉄橿原線八木西口駅から徒歩約3分、近鉄大阪線・橿原線の大和八木駅から徒歩約7分です。大阪市内から大和八木駅までは近鉄特急で約40分とアクセス良好です。専用駐車場はありませんので、近隣の有料駐車場をご利用ください。
Q周辺の今井町と合わせて楽しめますか?
Aはい、おすすめの組み合わせです。今井町は徒歩圏内にあり、昭和初期の近代建築である旧六十八銀行と江戸時代の町並みが残る今井町を合わせて巡ることで、異なる時代の建築美を存分に堪能できます。今井まちなみ交流センター「華甍」で散策マップを入手してから回ると効率的です。
Q建物はいつ登録有形文化財に指定されましたか?
A2006年(平成18年)10月18日に登録有形文化財(建造物)に登録されました。橿原市としては初の登録有形文化財です。

基本情報

名称 旧六十八銀行八木支店(旧和歌山銀行橿原支店)
設計 舟橋俊一(元奈良県技手)
竣工 1928年(昭和3年)
構造 鉄筋コンクリート造2階建、建築面積157㎡
文化財指定 登録有形文化財(建造物)2006年(平成18年)10月18日登録
所在地 〒634-0078 奈良県橿原市八木町1-2-13
現在の用途 フレンチレストラン・ウェディング会場「ジュールフェリエ ラ・バンク」(1993年創業)
アクセス JR畝傍駅より徒歩約1分、近鉄八木西口駅より徒歩約3分、近鉄大和八木駅より徒歩約7分

参考文献

旧六十八銀行八木支店 (旧和歌山銀行橿原支店) — 橿原市公式ホームページ
https://www.city.kashihara.nara.jp/soshiki/1058/gyomu/3/4/3825.html
旧六十八銀行八木支店 — 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/153205
旧六十八銀行八木支店(旧和歌山銀行橿原支店) — 橿原市観光情報サイト
https://kashihara-kanko.or.jp/spot/detail.php?sid=S00091
旧六十八銀行八木支店 — Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A7%E5%85%AD%E5%8D%81%E5%85%AB%E9%8A%80%E8%A1%8C%E5%85%AB%E6%9C%A8%E6%94%AF%E5%BA%97
ジュールフェリエ ラ・バンク — 公式サイト
https://jourferielabank.com/

最終更新日: 2026.03.03

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