1基の塔 ― 1953年に国宝
鉄宝塔は、奈良県の西大寺が所有する鎌倉時代の工芸品で、1953年(昭和28年)11月14日に重要文化財となり、同じ1953年11月14日に国宝に指定された。員数は1基である。
重要文化財と国宝が同じ日である。天寿国繡帳残闕、春日大社の二口の太刀に続いて4件目になる。
寸法は総高163.6センチメートル、基壇方65.1センチメートル、塔身下端径43.3センチメートル、軒幅67.6センチメートルとされる。年代の欄は1284年である。
所在と所有が、別の場所で記される
保管している施設と、持ち主が分かれている。
文化庁の記録は、保管施設を奈良国立博物館、住所を奈良県奈良市登大路町50とする。一方、所有者名は西大寺である。
寺が所有し、博物館が預かっていることになる。
ここまで所在地の欄が空である物件を14件扱ってきた。宝相華蒔絵経箱、赤絲威鎧、金銅錫杖頭などである。
それらは所在が書かれていない例である。本件は逆で、所在が博物館として明記され、所有者と分かれていることがはっきり分かる。
博物館が保管する品であるため、展示の機会は博物館の予定による。
別の書物から、二つの日付が引かれる
年代の根拠が、外部の文献にある。
鉄宝塔に関しては、『思円上人一期形像記』弘安七年八月七日条に「鐵塔造立終功」、同九月二日「鐵塔供養」とある、と記される。
弘安七年は1284年である。八月七日に造立が終わり、九月二日に供養が行われた。二つの日付のあいだは26日である。
明王院五重塔では、伏鉢の刻銘によって九輪を上げた日が分かった。大善寺本堂では、柱の墨書で建立年代が確認された。正福寺地蔵堂も持送りの墨書である。
いずれも物そのものに刻まれた文字である。本件は、別の書物の記事から日付が引かれている。
物にも銘はある。檫に陰刻銘がある、と記される。ただし年代の根拠として挙げられているのは文献のほうである。
無いものが、二度書かれる
形の説明に、備わっていない部分が並ぶ。
下層について、四方開きとなすが、建造物の多宝塔に見るような軒は設けない、とある。
上層については、扉は設けない、とされる。
軒がないこと、扉がないことが、それぞれ書かれている。
金剛峯寺不動堂では、四周には高欄のない縁をめぐらし、と無いことが構造の記述に入っていた。白絲威褄取鎧では、鍬形はないが、と続けて別の特徴が述べられた。
本件は二か所で無いものが記され、しかも一方は建造物の多宝塔と比べて述べられている。工芸品でありながら、建物を引き合いに出して形が説明されている。
鑑賞
所有は西大寺、保管は奈良国立博物館である。
作らせた人と作った人の両方が記録される。西大寺中興の叡尊が弘安六・七年に大工藤原宗安らをして作らせた舎利塔一具で、とある。
叡尊が命じ、藤原宗安らが作った。太刀〈銘三条〉や薙刀〈銘備前国長船住人長光造〉では、銘によって作者が分かった。本件は文章のなかに二人が並ぶ。
評価は、鎌倉時代における舎利奉安の最も完備した遺品である、とされる。最も完備した、という言い方である。
形態は美しく、鋳銅および鍛鉄の妙技を見せる製作である、とも記される。鋳た銅と鍛えた鉄の二つの技法が挙げられている。展示の予定は変わることがあるため、訪問前に博物館の案内で確認したい。
Q&A
- 鉄宝塔はいつ指定されましたか。
- 1953年(昭和28年)11月14日に重要文化財となり、同じ日に国宝へも指定されました。二段階が同じ日になる例で、これで4件目にあたります。
- どこにあるのですか。
- 保管施設は奈良国立博物館(奈良県奈良市登大路町50)です。所有者は西大寺で、寺が所有し博物館が預かっていることになります。
- いつ作られたのですか。
- 1284年です。文化庁は『思円上人一期形像記』の弘安七年八月七日条に造立が終わったこと、同九月二日に供養が行われたことが記されると引きます。
- 誰が作ったのですか。
- 文化庁は「西大寺中興の叡尊が弘安六・七年に大工藤原宗安らをして作らせた」と記します。作らせた人と作った人の両方が挙げられています。
- どのような形ですか。
- 方形の基壇を有する二層の塔婆です。下層は「建造物の多宝塔に見るような軒は設けない」、上層は「扉は設けない」とされ、無いものが二度書かれています。
基本情報
| 名称 | 鉄宝塔(てつほうとう) |
|---|---|
| 所在地 | 奈良国立博物館(奈良県奈良市登大路町50)/所有者は西大寺 |
| 指定区分 | 国宝(工芸品)/重要文化財と国宝が同じ日 |
| 指定年 | 1953年(昭和28年)11月14日 重要文化財および国宝 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 総高163.6センチメートル、基壇方65.1センチメートル、塔身下端径43.3センチメートル、軒幅67.6センチメートル。方形の基壇を有する二層の塔婆で、下層は覆鉢形の四方開き、上層は円筒形で回縁と高欄をつける。軒と扉は設けない。檫に陰刻銘がある。年代は1284年、時代は鎌倉 |
| 所有者 | 西大寺 |
| 公開状況 | 奈良国立博物館が保管する品で、展示の機会は博物館の予定による |
参考文献
- 文化遺産オンライン 鉄宝塔
- https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/159355
- 奈良国立博物館 公式サイト
- https://www.narahaku.go.jp/
- 西大寺 公式サイト
- https://saidaiji.or.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
最終更新日: 2026.09.06