一対の太鼓 ― 2020年に国宝

鼉太鼓は、奈良県の春日大社が所有する鎌倉時代の工芸品で、1901年(明治34年)3月27日に重要文化財となり、2020年(令和2年)9月30日に国宝に指定された。指定番号は00257である。

重要文化財から国宝まで119年が経っている。ここまで扱ったなかで最も長い。これまでは木造五智如来坐像の109年が最長だった。

1901年3月27日の重要文化財は、金銅錫杖頭と同じ日である。あちらは国宝まで80年、本件は119年である。

員数が「一対」と漢数字で記される

数え方の表記が、他と違っている。

員数の欄は一対とされる。漢数字で書かれ、単位も対である。

ここまで1棟、1躯、1口、1巻、1合、1基、1箇、1領、1帳、1面、1枚、1柄、1具と数えてきた。いずれも算用数字である。

本件は漢数字で、しかも二つで一組と数えている。

霧島神宮では、三つの建物が屋根でつながって1棟と数えられていた。あちらは一体になっている。

本件は離れた二基が、対として一つに数えられる。

一対でありながら、二基の図が違う

対になっているが、同じものが二つあるのではない。

文化庁は、下方は雲文、上方には、一基は双龍、一基は鳳凰を別材貼付けとして、それぞれ相向かう形に表す、と記す。

下の雲文は共通である。上は、一方が双龍、他方が鳳凰である。

頂についても、尖頂は火炎状の透かし彫りとし、それぞれに光芒を備えた金または銀の輪光を据える、とされる。

金または銀、と書かれる。二基で金と銀に分かれていると読める。

春日大社の三口の太刀は、それぞれ別の物件として指定されていた。本件は一つの物件でありながら、二基の意匠が揃っていない。

寸法の欄は空だが、解説文が形を述べる

欄と本文で、情報の置かれ方が入れ替わっている。

寸法・重量の欄と品質・形状の欄は、どちらも空である。

ところが解説文は形を詳しく述べる。中央に大型の太鼓を据え、その周囲に火炎型太鼓縁を廻らす、と始まる。

続けて、縁は、檜寄木造りで、両面彫出しとし、中央に太鼓型を刳り、周縁に連珠文帯を設ける、とされる。基台は、木製で、周囲に朱漆塗りの欄干を廻らす、とも記される。

一字一仏法華経序品では、欄がほとんど空で解説も一文だった。延喜式では、年代の欄が空でト書の欄に手がかりがあった。

本件は、形状の欄が空でありながら解説文がその役割を担っている。書かれる場所が入れ替わっている例になる。

鑑賞

所有は春日大社である。所在都道府県の欄は奈良県とされるが、所在地の欄は空で、これで20件目になる。

造形の評価も記される。火炎型の縁の左右が大きく張り出して丸みが強く、龍、鳳凰、雲文や火炎型なども彫りが肉厚で、力強い造形を示す、とある。

結びは、平安時代の雰囲気を残す鎌倉最初期の遺例として、極めて貴重な資料である、とされる。

鎌倉の作でありながら、前の時代の雰囲気を残すとされている。功山寺仏殿では、わずかな寸法の違いが後の時代の兆しとされていた。あちらは先を示す例である。

本件は前を残す例になる。同じ春日大社は三口の太刀も所有している。神社が保管する太鼓であり、常設で公開される性格のものではない。訪問前に確認したい。

Q&A

Q鼉太鼓はいつ指定されましたか。
A1901年(明治34年)3月27日に重要文化財、2020年(令和2年)9月30日に国宝へ指定されました。あいだは119年で、ここまで扱ったなかで最も長いものです。
Q員数はどう書かれていますか。
A一対と、漢数字で記されます。単位も対で、二つを一組として数えています。他の物件は算用数字で1棟、1口などと記されます。
Q二基は同じ意匠ですか。
A違います。文化庁は「一基は双龍、一基は鳳凰」とし、頂の輪光についても「金または銀」と記します。対でありながら意匠が揃っていません。
Q寸法はどのくらいですか。
A記載がありません。寸法・重量の欄と品質・形状の欄はどちらも空です。ただし解説文が形を詳しく述べています。
Q何が評価されているのですか。
A文化庁は「平安時代の雰囲気を残す鎌倉最初期の遺例として、極めて貴重な資料である」と記します。鎌倉の作でありながら前の時代の雰囲気を残すとされています。

基本情報

名称鼉太鼓(だだいこ)/員数は漢数字で「一対」と記される
所在地所在都道府県の欄は奈良県。所在地の欄は空で、所有者は春日大社とされる
指定区分国宝(工芸品)/指定番号00257
指定年1901年(明治34年)3月27日 重要文化財/2020年(令和2年)9月30日 国宝
員数一対
寸法寸法・重量の欄と品質・形状の欄はどちらも空。解説文によれば、中央に大型の太鼓を据え周囲に火炎型の縁を廻らす。縁は檜寄木造りで、上方は一基が双龍、一基が鳳凰。尖頂に金または銀の輪光を据え、基台の周囲に朱漆塗りの欄干を廻らす。時代は鎌倉
所有者春日大社
公開状況神社が保管する太鼓で、常設の公開ではない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 鼉太鼓
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/5383
春日大社 公式サイト
https://www.kasugataisha.or.jp/
春日大社 国宝殿
https://www.kasugataisha.or.jp/museum/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.06