承元3年の銘をもつ磬 ― 1953年に国宝

孔雀文磬は、大分県宇佐市の宇佐神宮宝物館で展示されている鎌倉時代の磬で、1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定された。それに先立つ1935年(昭和10年)4月30日には重要文化財となっている。員数は1面、種別は工芸品、指定番号は00113。文化庁は年代を1209年(承元3年)とする。

磬は法要の際に磬架に懸けて導師の脇に置き、儀礼の合間に打ち鳴らす仏具である。吊るして打つ道具であり、装身具でも飾り布でもない。祖型は中国古代の石製打楽器で、後に金属の鋳造品となった。

指定名称の括弧内には銘文が組み込まれている。弥勒寺金堂承元三年八月五日奉鋳法印祐清在銘。銘文が名称の一部になっているのは、この磬の年と由来が銘文で確定しているためである。

文化庁が評価する点

文化庁の解説はこう記す。荘重な形姿で、文様や銘文などは篦押技法の粋を示す。肉取りが厚く重厚で、中央の弧に比べて左右の弧が縮まっているなど、様式的には鎌倉時代の特色をよく示す。製作時期や由来が明かな基準作として貴重である。

「基準作」という語が評価の中心にある。製作年と由来が銘文で確定しているため、年代の分からない他の磬を位置づける物差しになる。大分県も「その製作時期、施入者などがほぼ明らかであり、史料的にも貴重である」と記す。

篦押しは、鋳型に篦で文様を押して形を作る技法である。文化庁はこれを「粋を示す」と評する。

様式上の指標として挙げられるのは、中央の弧に比べて左右の弧が縮まっている点である。弧の比率が時代を示すという見方になっている。

表と裏で構成が違う

文化庁の品質・形状の記載は、表裏の違いを具体的に示す。

鋳銅製。山形低平で、袖先大きく左右に開き、縁幅広く厚めで重厚な造りである。表は中央に肉の厚い荘重な撞座を、左右に同じく篦押しでやや小さめの孔雀を鋳出す。裏面は素文で、表面と同径の撞座の左右に豪快な書体で一面に銘文を篦押し陽鋳している。

表は孔雀、裏は銘文という配分である。撞座は撥で打つ位置で、表裏の同じ場所に同じ径で置かれる。その左右が、表では文様、裏では文字になる。

寸法は肩幅28.8センチメートル、裾張り34.1センチメートル、高さ12.9センチメートル、縁厚0.7から0.9センチメートル、重さ1118グラムである。裾のほうが肩より広い山形で、手に持てる重さではない。

銘文が示す由来

裏面の銘文は次のとおりである。承元三秊己巳、八月五日丙寅、奉鋳之、弥勒寺金堂、御磬自京遣之、法印祐清。

承元3年は1209年で、鋳造の年月日が記される。「弥勒寺金堂」は納められた場所、「御磬自京遣之」は京から送られたことを示す。「法印祐清」が施入者である。

鋳た年、納めた堂、運ばれた経路、施入者の四点が一つの銘文に収まっている。文化庁が「製作時期や由来が明かな基準作」とするのは、この情報量による。

弥勒寺は宇佐神宮の神宮寺であった。神社の記事で扱う物件だが、由来は寺の仏具である。神仏習合の時代の遺物にあたる。

鑑賞

文化庁のデータベースは所有者名を「個人」とし、保管施設欄は空欄である。個人が所有する国宝であり、宇佐神宮の宝物館で展示されている。

大分県は「宇佐神宮の宝物館に展示している」と記す。ただし宝物館の開館日は限られることがあるため、訪問前に宇佐神宮の案内で確認したい。県外の博物館へ貸し出される場合もある。

大分県は、この磬を県内にある三つの国宝のうちの一つとする。他の二つは宇佐神宮本殿と富貴寺大堂である。

宇佐神宮へは、JR日豊本線の宇佐駅からバスで約10分、宇佐八幡下車である。

Q&A

Q磬とは何ですか。
A法要の際に磬架に懸けて導師の脇に置き、儀礼の合間に打ち鳴らす仏具です。祖型は中国古代の石製打楽器で、後に金属の鋳造品となりました。吊るして打つ道具であり、身に着けるものではありません。
Q孔雀文磬はいつ国宝に指定されましたか。
A1953年(昭和28年)3月31日です。それに先立つ1935年(昭和10年)4月30日に重要文化財となっています。員数は1面、種別は工芸品、指定番号は00113。文化庁は年代を1209年(承元3年)とします。
Qなぜ国宝に指定されたのですか。
A文化庁は、荘重な形姿で文様や銘文が篦押技法の粋を示すこと、中央の弧に比べて左右の弧が縮まっているなど様式的に鎌倉時代の特色をよく示すこと、製作時期や由来が明かな基準作として貴重であることを挙げています。基準作という評価が中心です。
Q銘文には何が書かれていますか。
A承元3年(1209年)8月5日に鋳造したこと、弥勒寺金堂に納めること、京から送られたこと、施入者が法印祐清であることが記されます。鋳た年、納めた堂、運ばれた経路、施入者の四点が一つの銘文に収まっています。
Q孔雀文磬は見られますか。
A文化庁のデータベースは所有者名を「個人」とし、宇佐神宮の宝物館で展示されています。ただし宝物館の開館日は限られることがあり、県外へ貸し出される場合もあるため、訪問前に宇佐神宮の案内で確認してください。

基本情報

名称孔雀文磬(くじゃくもんけい)/指定名称は弥勒寺金堂承元三年八月五日奉鋳法印祐清在銘を含む
所在地大分県宇佐市南宇佐 宇佐神宮宝物館
指定区分国宝(工芸品)/指定番号00113
指定年1935年(昭和10年)4月30日 重要文化財/1953年(昭和28年)3月31日 国宝
員数1面
寸法肩幅28.8センチメートル、裾張り34.1センチメートル、高さ12.9センチメートル、縁厚0.7から0.9センチメートル、重さ1118グラム。鋳銅製で山形低平、表は撞座の左右に孔雀、裏面は素文で銘文。1209年
所有者個人(文化庁データベースの記載)
公開状況宇佐神宮の宝物館で展示。開館日は限られることがあり、県外へ貸し出される場合もある

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 孔雀文磬
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/406
大分県 おおいたデジタルアーカイブ 孔雀文磬
https://www.pref.oita.jp/site/archive/200680.html
宇佐神宮御鎮座1300年 宇佐神宮の文化財
https://www.millennium-roman.jp/usajingu1300/history/cultural_property/
宇佐市観光協会 宇佐神宮
https://www.usa-kanko.jp/pages/116/

最終更新日: 2026.09.04