1枚の硯 ― 1953年に国宝
青白磁円硯は、大阪府の道明寺天満宮が所有する工芸品で、1951年(昭和26年)6月9日に重要文化財となり、1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定された。員数は1枚である。
この二つの日は、同じ道明寺天満宮の犀角柄刀子、玳瑁装牙櫛とまったく同じである。いずれも六種の遺物と呼ばれる一群に属する。
寸法は径27.0センチメートル、高さ6.4センチメートルとされる。文化庁データベースの所在地の欄は空で、これで18件目になる。
六種が、一つの指定番号を枝番で分け合う
指定番号の付け方に、これまでにない形がある。
本件の指定番号は00106、枝番は02である。
同じ00106のもとに、牙笏が枝番01、伯牙弾琴鏡が枝番06として登録されている。
六種の遺物が、一つの番号を枝番で分け合っていることになる。ここまで扱った物件の枝番はすべて00だった。
青井阿蘇神社では5棟が別々に数えられ、霧島神宮では三つの建物が1棟としてまとめられていた。それらは員数の扱いである。
本件は指定番号の階層で分かれている。まとまりが番号の形に表れている。
国の欄は日本だが、唐代の製作とされる
欄の内容と説明文が、食い違っている。
国の欄は日本、時代の欄は平安である。同じ00106の牙笏も伯牙弾琴鏡も、国は日本、時代は平安とされる。
ところが品質・形状の欄は、唐代に製作された青白磁の伝世品として稀有のもの、と結ぶ。
唐代は中国の時代である。国の欄が日本でありながら、説明では中国製とされている。
解説文自身も、六種の遺物は中国唐から舶載したものと、本邦製作によるものとがある、と混在を認めている。
六種をまとめて登録した結果、国と時代の欄が一律になり、個別の産地が反映されていないことになる。六祖恵能伝や金銅錫杖頭では、国の欄がはっきり中国とされていた。
二十本の脚があり、古くから下部を欠く
形と、欠けている部分が続けて書かれる。
中央がへこんだ円形の硯で、池を周囲に造り、二十本の脚を胴に付しているが、古くからその下部を欠失する、とある。
脚は二十本である。そのうえで、下部を欠いていることが記される。
古くから、という語が付く。いつからかは書かれていないが、近年の損傷ではないことが示されている。
玳瑁装牙櫛では、染角の珠文について現在は脱落している部分がある、とされた。線刻千手観音等鏡像では、火を受けた跡が残っていた。
本件は、欠けた時期に幅を持たせて述べている。釉のかかり方も細かく、外周には白釉がかかっているが、硯面、池および硯面の裏にあたる部分は露胎である、と記される。
鑑賞
所有は道明寺天満宮である。所在都道府県の欄は大阪府とされるが、所在地の欄は空である。
ト書の欄には、伝菅公遺品とある。菅原道真の遺品と伝えられる、という意味である。
延喜式ではト書の欄に奥書の日付が、六祖恵能伝では中国の元号による日付があった。本件は伝来がト書に置かれている。
器地についても記される。純白に近い堅い磁質である、とされる。
同じ六種のうち、犀角柄刀子と玳瑁装牙櫛はすでに扱った。神社が保管する硯であり、常設で公開される性格のものではない。訪問前に確認したい。
Q&A
- 青白磁円硯はいつ指定されましたか。
- 1951年(昭和26年)6月9日に重要文化財、1953年(昭和28年)3月31日に国宝へ指定されました。同じ六種の犀角柄刀子、玳瑁装牙櫛も同じ二つの日です。
- 指定番号に枝番があるのはなぜですか。
- 六種の遺物が一つの番号00106を分け合っているためです。本件は枝番02、牙笏が01、伯牙弾琴鏡が06です。
- どこで作られたものですか。
- 国の欄は日本、時代の欄は平安ですが、品質・形状の欄は「唐代に製作された青白磁の伝世品として稀有のもの」と結びます。欄と説明が食い違っています。
- 欠けている部分はありますか。
- あります。文化庁は「二十本の脚を胴に付しているが、古くからその下部を欠失する」と記します。いつからかは書かれていません。
- どのように伝わったのですか。
- ト書の欄に「伝菅公遺品」とあります。解説文では「菅原道真が薨じた後、氏寺である土師寺の住職であった姨覚寿尼に伝えた遺品といわれ」とされます。
基本情報
| 名称 | 青白磁円硯(せいはくじえんけん)/六種の遺物が指定番号00106を枝番で分け合う |
|---|---|
| 所在地 | 所在都道府県の欄は大阪府。所在地の欄は空で、所有者は道明寺天満宮とされる |
| 指定区分 | 国宝(工芸品)/指定番号00106、枝番02 |
| 指定年 | 1951年(昭和26年)6月9日 重要文化財/1953年(昭和28年)3月31日 国宝 |
| 員数 | 1枚 |
| 寸法 | 径27.0センチメートル、高さ6.4センチメートル。中央がへこんだ円形の硯で、周囲に池を造り、20本の脚を胴に付すが古くから下部を欠失する。器地は純白に近い堅い磁質で、外周に白釉がかかり、硯面と池は露胎。国の欄は日本、時代の欄は平安だが、品質・形状の欄は唐代の製作とする |
| 所有者 | 道明寺天満宮 |
| 公開状況 | 神社が保管する硯で、常設の公開ではない |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 青白磁円硯
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/397
- 文化庁 国指定文化財等データベース 牙笏(同じ00106・枝番01)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/398
- 道明寺天満宮 宝物
- https://www.domyojitenmangu.com/treasure.html
- 藤井寺市 国指定文化財
- https://www.city.fujiidera.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkai/bunkazaihogo/fuziiderasinositeibunnkazai/kunifusiteibunkazai/1387694428536.html
最終更新日: 2026.09.06