1枚の櫛 ― 1953年に国宝

玳瑁装牙櫛は、大阪府の道明寺天満宮が所有する平安時代の工芸品で、1951年(昭和26年)6月9日に重要文化財となり、1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定された。員数は1枚である。

員数の単位は枚である。ここまで棟、躯、口、巻、合、基、箇、領、帳、面と数えてきたなかで初めてになる。

寸法は幅10.1センチメートル、高さ6.0センチメートルとされる。文化庁データベースの所在地の欄は空で、これで13件目になる。

べっ甲の下に色を伏せ、透かして見せる

装飾の順序が、上下で入れ替わっている。

文化庁は、棟幅の花には、玳瑁を象嵌して、下に伏せた紅緑の彩文を透かし見せ、と記す。

玳瑁はウミガメの甲から作る材で、べっ甲ともいう。透けるという性質がある。

その下に紅と緑の彩色を置き、上から玳瑁をかぶせて透かして見せている。目に映る色は、上にあるものではなく下にあるものである。

宝相華蒔絵経箱では、蓋の裏まで文様が及んでいた。籬菊螺鈿蒔絵硯箱では、懸子を取り除いた底にまで蒔絵があった。いずれも見えにくい場所に装飾を及ぼす例である。

本件は、見えないところに置いた色を、上から透かして見せている。隠したうえで見せていることになる。

五つの材が使い分けられ、一つは脱落している

小さな櫛に、材が幾種類も入っている。

本体は象牙製である。棟幅と峯に玳瑁を象嵌し、蔓は銅の細線を象嵌する、とされる。

珠文は金の鑢粉を混ぜた黒漆で描き表す、とある。さらに、その間にさらに珠文を染角を嵌め加える、と続く。

象牙、玳瑁、銅、金、染角の五つになる。幅10.1センチメートルのなかで使い分けられている。

宝相華蒔絵経箱では、金と銀が部位で分けられていた。澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃では、金と青金という同じ金属の色が分けられていた。

本件は材そのものが五種類ある。そして最後に、現在は脱落している部分がある、と記される。五つのうち染角が失われつつある。

犀角柄刀子と、二段階とも同じ日である

同じ由来の品と、指定の日が完全に一致する。

本件は1951年6月9日に重要文化財、1953年3月31日に国宝である。犀角柄刀子も、同じ1951年6月9日と1953年3月31日である。

どちらも道明寺天満宮の所有で、解説文も同じ六種の遺物についての文を共有している。

赤絲威鎧と白絲威褄取鎧も、二段階とも同じ日だった。あちらは櫛引八幡宮の二領である。

専修寺如来堂と専修寺御影堂も、二段階とも同じ日だった。あちらは同じ寺の二棟である。

本件と犀角柄刀子は、同じ人物の遺品として伝わった一群のうちの二つである。まとまりが指定の日にも表れている。

鑑賞

所有は道明寺天満宮である。所在都道府県の欄は大阪府とされるが、所在地の欄は空である。

形についても記される。蒲鉾型の駆使で、幅細長く、雄柱を太めに作る、とある。

伝来は六種に共通する文で述べられる。菅原道真が薨じた後、氏寺である土師寺の住職であった姨覚寿尼に伝えた遺品といわれ、土師寺の後身である道明寺天満宮に伝えられた、とある。

六種の遺物は中国唐から舶載したものと、本邦製作によるものとがあるが、いずれも中国、唐時代の様式を伝える遺例の少ないものである、とも記される。

関連作品には伯牙弾琴鏡、牙笏、犀角柄刀子が並ぶ。いずれも同じ六種のうちである。神社が保管する櫛であり、常設で公開される性格のものではない。訪問前に確認したい。

Q&A

Q玳瑁装牙櫛はいつ指定されましたか。
A1951年(昭和26年)6月9日に重要文化財、1953年(昭和28年)3月31日に国宝へ指定されました。同じ由来の犀角柄刀子も二段階とも同じ日です。
Q玳瑁とは何ですか。
Aウミガメの甲から作る材で、べっ甲ともいいます。透ける性質があり、この櫛では下に置いた紅と緑の彩色を上から透かして見せています。
Qどのような材が使われていますか。
A象牙、玳瑁、銅、金、染角の五つです。本体は象牙で、蔓は銅の細線、珠文は金の鑢粉を混ぜた黒漆と染角によって表されています。
Q欠けている部分はありますか。
Aあります。文化庁は染角で加えた珠文について「現在は脱落している部分がある」と記します。五つの材のうち一つが失われつつあります。
Qどのように伝わったのですか。
A文化庁は「菅原道真が薨じた後、氏寺である土師寺の住職であった姨覚寿尼に伝えた遺品といわれ、土師寺の後身である道明寺天満宮に伝えられた」と記します。

基本情報

名称玳瑁装牙櫛(たいまいそうげのくし)/同じ由来の六種の遺物が同じ解説文を共有する
所在地所在都道府県の欄は大阪府。所在地の欄は空で、所有者は道明寺天満宮とされる
指定区分国宝(工芸品)
指定年1951年(昭和26年)6月9日 重要文化財/1953年(昭和28年)3月31日 国宝
員数1枚
寸法幅10.1センチメートル、高さ6.0センチメートル。象牙製で蒲鉾型、幅は細長く雄柱を太めに作る。棟幅と峯に玳瑁を象嵌し、下に伏せた紅緑の彩文を透かし見せる。蔓は銅の細線、珠文は金の鑢粉を混ぜた黒漆と染角による。時代は平安
所有者道明寺天満宮
公開状況神社が保管する櫛で、常設の公開ではない

参考文献

文化遺産オンライン 玳瑁装牙櫛
https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/197440
藤井寺市 国指定文化財
https://www.city.fujiidera.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkai/bunkazaihogo/fuziiderasinositeibunnkazai/kunifusiteibunkazai/1387694428536.html
道明寺天満宮 公式サイト
https://www.domyojitenmangu.com/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.06