1口の刀子 ― 1953年に国宝

犀角柄刀子は、大阪府の道明寺天満宮が所有する平安時代の工芸品で、1951年(昭和26年)6月9日に重要文化財となり、1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定された。員数は1口である。

刀子は小刀をいう。寸法は全長32.4センチメートル、身長14.7センチメートル、柄長17.7センチメートルとされる。

重要文化財から国宝まで2年に満たない。1951年6月9日は籬菊螺鈿蒔絵硯箱や古今和歌集巻第廿と同じ日、1953年3月31日は浄土寺多宝塔や崇福寺大雄宝殿と同じ日である。

柄のほうが、刀身より長い

犀角柄刀子の寸法の内訳に、目を引くものがある。

身長は14.7センチメートル、柄長は17.7センチメートルである。

柄のほうが刀身より3センチメートル長い。持つところが、切るところより長いことになる。

薙刀〈銘備前国長船住人長光造〉では、茎長63.6センチメートルが身長43.3センチメートルより長かった。ただしあちらは茎、つまり柄に差し込まれる部分である。

本件は柄そのものが長い。柄は犀角で作られ、縁金具は銀製、とある。

犀角は犀の角である。中国から渡ってきた材が、柄に使われている。

鞘は失われ、金具は留鋲だけが残る

犀角柄刀子について、欠けているものが二つ記される。

一つは、鞘は亡失、である。刀身を納める鞘がない。

もう一つは、柄頭にも銀装の飾金具を被せてあったとみられるが、現在はその留鋲のみを存する、である。

柄の先に付いていた飾りは失われ、それを留めていた鋲だけが残っている。無くなったものの痕跡が残る。

太刀〈銘三条(名物三日月宗近)〉では、附の鞘が柄を失った状態で指定されていた。鞘があって柄がない例である。

本件は逆で、柄があって鞘がない。そして留鋲は、かつて何かがあったことだけを示している。

六種の遺物が、一つの解説を共有する

犀角柄刀子の解説文は、この一件だけのものではない。

六種の遺物は中国唐から舶載したものと、本邦製作によるものとがあるが、いずれも中国、唐時代の様式を伝える遺例の少ないものである、とある。

六種をまとめて説明する文が、それぞれの記録に付いている。関連作品には牙笏、伯牙弾琴鏡、青白磁円硯といった名が並ぶ。

崇福寺大雄宝殿と崇福寺第一峰門では、二つの国宝が同じ解説文を共有していた。青井阿蘇神社では、国宝5棟に同じ文が付いていた。

本件は六種である。ここまでで最も多い共有になる。

伝来も同じ文に含まれる。菅原道真が薨じた後、氏寺である土師寺の住職であった姨覚寿尼に伝えた遺品といわれ、土師寺の後身である道明寺天満宮に伝えられた、とある。

鑑賞

所有は道明寺天満宮である。文化庁データベースの所在地の欄は空で、これで6件目になる。

伝来の記述に、寺から神社への移り変わりが含まれる。土師寺の後身である道明寺天満宮に伝えられた、とある。

寺が神社になり、そこへ品が伝わっている。不動院金堂では、禅宗の仏殿が真言宗の金堂になった。あちらは宗派の変化である。

本件は、寺と神社という区分をまたいでいる。園城寺では同じ寺の建物が寺院と神社に分類されていたが、あれは分類上の違いだった。

神社が保管する刀子であり、常設で公開される性格のものではない。展示の予定は変わることがあるため、訪問前に確認したい。

Q&A

Q犀角柄刀子はいつ指定されましたか。
A1951年(昭和26年)6月9日に重要文化財、1953年(昭和28年)3月31日に国宝へ指定されました。あいだは2年に満たず、員数は1口、所有は道明寺天満宮です。
Q寸法はどのくらいですか。
A全長32.4センチメートル、身長14.7センチメートル、柄長17.7センチメートルです。柄のほうが刀身より3センチメートル長く、持つところが切るところより長くなっています。
Q欠けている部分はありますか。
Aあります。文化庁は「鞘は亡失」とし、柄頭の飾金具についても「現在はその留鋲のみを存する」と記します。失われたものを留めていた鋲だけが残っています。
Qどのように伝わったのですか。
A文化庁は「菅原道真が薨じた後、氏寺である土師寺の住職であった姨覚寿尼に伝えた遺品といわれ、土師寺の後身である道明寺天満宮に伝えられた」と記します。
Q他にも同じ由来の品がありますか。
Aあります。文化庁は「六種の遺物」としてまとめて説明しており、牙笏、伯牙弾琴鏡、青白磁円硯などが同じ解説文を共有しています。

基本情報

名称犀角柄刀子(さいかくえとうす)/同じ由来の六種の遺物が同じ解説文を共有する
所在地文化庁データベースの所在地の欄は空。所有者は道明寺天満宮とされる
指定区分国宝(工芸品)
指定年1951年(昭和26年)6月9日 重要文化財/1953年(昭和28年)3月31日 国宝
員数1口
寸法全長32.4センチメートル、身長14.7センチメートル、柄長17.7センチメートル。柄は犀角で作られ縁金具は銀製。柄頭の飾金具は失われ留鋲のみが残り、鞘は亡失している。時代は平安
所有者道明寺天満宮
公開状況神社が保管する刀子で、常設の公開ではない

参考文献

文化遺産オンライン 犀角柄刀子
https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/203709
道明寺天満宮 公式サイト
https://www.domyojitenmangu.com/
大阪府 文化財
https://www.pref.osaka.lg.jp/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.06