南宋の天目茶碗 ― 昭和28年に国宝

曜変天目茶碗は、大阪市都島区網島町の藤田美術館が所蔵する中国・南宋時代の茶碗で、昭和28年(1953年)3月31日に重要文化財、同年11月14日に国宝に指定された。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は00129。所有は公益財団法人藤田美術館である。

文化庁の解説は伝来と位置づけを短く記す。もとは水戸徳川家に伝わった天目茶碗。静嘉堂、龍光院の曜変天目茶碗と並んで曜変中の三絶とされている。曜変は稲葉天目ほど鮮やかではないが、内外両面に美しい曜変のあるのは本茶碗だけで、大名物として古来とくに珍重されたものである、と。

藤田家に入ったのは大正7年(1918年)である。実業家の藤田傳三郎と長男平太郎、次男徳次郎の二代三人が収集した美術品を公開するため、昭和29年(1954年)に藤田美術館が開館した。

内外両面に曜変があるのは本茶碗だけ

国宝の曜変天目茶碗は3口あり、藤田美術館のほか静嘉堂文庫美術館と大徳寺龍光院が所蔵する。文化庁はこの3口を「曜変中の三絶」と呼ぶ。

そのうえで、本茶碗を他の2口から分ける特徴を一点だけ挙げている。という一句、内外両面に美しい曜変のあるのは本茶碗だけ、である。

天目茶碗は内側を見て鑑賞するのが通例で、曜変も内面に現れるものが多い。本茶碗は外側にも曜変が及ぶ。碗を持ち上げて外から見ても、内を覗いても、斑文と光沢が現れる。文化庁が「大名物として古来とくに珍重された」と続けるのは、この点を受けてのことである。

あわせて、鮮やかさでは静嘉堂の稲葉天目に及ばないとも記している。三口それぞれに違いがあり、優劣ではなく特質として整理されていることが、この解説から読み取れる。

器の形と釉 ― 文化庁の記載

寸法は高さ6.8センチメートル、口径13.6センチメートル、高台径3.6センチメートル。手のひらに収まる大きさである。

品質・形状について文化庁はこう記す。素地は鉄分の多い灰黒色の陶胎。これに光沢のつよい漆黒の釉薬が厚くかかり、腰以下は露胎である。形は口辺が捻り返しとなり、腰がすぼみ、高台の小さく底の削り込みの浅いいわゆる天目形。

露胎とは釉薬がかからず素地が見えている部分をいう。腰から下に釉をかけないのは、焼成時に釉が流れて窯道具に付着するのを避けるためで、建窯の天目茶碗に共通する。口辺の捻り返しは、飲み口をわずかに外へ反らせた形である。

曜変そのものについては次のように書かれる。漆黒の釉面に粒状の斑文が一面に浮かび、そのまわりが暈状に玉虫色の光沢を放っている。縁に金覆輪をめぐらす。

斑文とその周囲の暈という二層の構造が、曜変の定義にあたる。金覆輪は口縁に金属の輪をかぶせる仕立てで、天目茶碗にしばしば施される。

付属物 ― 袋と二重の箱

文化庁の記録は付属物も列挙する。袋は紫縮緬で緒つがりも紫。内箱は黒漆に金粉で字形が記され、筆者は不明で「御茶碗」とある。外箱は桐の春慶塗で、黒漆の書付があり、筆者は不明で「御茶碗曜変」とある。

曜変天目茶碗が袋に入り、内箱に納まり、外箱に収まる。この三重の仕立ては、古来とくに珍重されてきた茶碗の保管の形をそのまま残している。外箱の書付が「曜変」と記していることから、この名で呼ばれていたことも分かる。

筆者が不明のまま記録されている点も、文化庁の記載の性格を示す。誰が書いたかは分からないが、書付があるという事実は残す。

鑑賞

藤田美術館は令和4年(2022年)4月にリニューアル開館した。開館時間は午前10時から午後6時まで、入館料は1,000円で19歳以下は無料である。休館日は年末年始。

展示は毎月入れ替わる。曜変天目茶碗が常に展示されているとは限らないので、訪問前に美術館の展示予定を確認したい。館外へ貸し出される場合もある。

展示室の照明は暗めに設定されており、目が慣れるにつれて作品が浮かび上がる。低反射ガラスを使っているため映り込みが少ない。曜変は光の当たり方によって見え方が変わるので、位置を変えながら見ると斑文の周囲の暈が現れる。

交通はJR東西線の大阪城北詰駅から徒歩約2分。大阪メトロ長堀鶴見緑地線の大阪ビジネスパーク駅から徒歩約10分である。

Q&A

Q藤田美術館の曜変天目茶碗はいつ国宝に指定されましたか。
A昭和28年(1953年)3月31日に重要文化財、同年11月14日に国宝に指定されました。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は00129です。中国・南宋時代の作で、大正7年(1918年)に藤田家に入りました。
Qこの茶碗と他の曜変天目茶碗の違いは何ですか。
A文化庁は「内外両面に美しい曜変のあるのは本茶碗だけ」と記しています。天目茶碗は内側を見て鑑賞するのが通例で曜変も内面に現れるものが多いのですが、本茶碗は外側にも曜変が及びます。ただし鮮やかさでは静嘉堂の稲葉天目に及ばないとも記されています。
Q曜変とはどのような文様ですか。
A文化庁は「漆黒の釉面に粒状の斑文が一面に浮かび、そのまわりが暈状に玉虫色の光沢を放っている」と記します。斑文とその周囲の暈という二層の構造が曜変の定義にあたります。口縁には金覆輪がめぐらされています。
Qこの茶碗の大きさと形は。
A高さ6.8センチメートル、口径13.6センチメートル、高台径3.6センチメートルです。鉄分の多い灰黒色の陶胎に光沢の強い漆黒の釉が厚くかかり、腰以下は釉のかからない露胎。口辺が捻り返しとなり腰がすぼむ、いわゆる天目形です。
Q曜変天目茶碗はいつ見られますか。
A藤田美術館の開館は午前10時から午後6時、入館料1,000円で19歳以下は無料です。展示は毎月入れ替わるため、常に展示されているとは限りません。館外へ貸し出される場合もあるので、訪問前に美術館の展示予定を確認してください。

基本情報

名称曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)
所在地大阪府大阪市都島区網島町10-32 藤田美術館
指定区分国宝(工芸品)/指定番号00129
指定年1953年(昭和28年)3月31日 重要文化財/1953年(昭和28年)11月14日 国宝
員数1口/付属物 袋(紫縮緬)、内箱(黒漆金粉「御茶碗」)、外箱(桐春慶塗「御茶碗曜変」)
寸法高さ6.8センチメートル、口径13.6センチメートル、高台径3.6センチメートル。灰黒色の陶胎に漆黒の釉、腰以下は露胎。口辺は捻り返し、縁に金覆輪。中国・南宋
所有者公益財団法人藤田美術館
公開状況藤田美術館は午前10時から午後6時、入館料1,000円、19歳以下無料。展示は毎月入れ替わるため常設ではない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 曜変天目茶碗
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/423
藤田美術館 公式サイト
https://fujita-museum.or.jp/
大阪観光局 藤田美術館
https://osaka-info.jp/spot/fujita-art-museum/

最終更新日: 2026.09.03