1棟の社殿 ― 1953年に国宝
園城寺新羅善神堂は、滋賀県大津市園城寺町にある室町時代前期の建造物で、1901年(明治34年)3月27日に重要文化財となり、1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定された。員数は1棟、指定番号は00110、所有は園城寺である。
年代は貞和3年、西暦1347年とされる。構造は桁行三間、梁間三間、一重、流造、向拝一間、檜皮葺である。
1901年3月27日の重要文化財は、ここまで扱った物件のなかで最も早い。同じ寺の園城寺金堂は1906年4月14日で、5年遅い。
寺の建物でありながら、種別が「神社」である
種別の欄に注目したい。
園城寺新羅善神堂の種別は、近世以前/神社とされる。一方、園城寺金堂の種別は近世以前/寺院である。
所有者はどちらも園城寺で、同じ寺のものである。それでいて、一方は神社、一方は寺院に分類されている。
名称も「堂」で終わる。堂は仏教の建物に使う語だが、種別は神社になっている。
三井寺の記録は、三井寺の鎮守社のひとつで、北院伽藍の中心建築です、とする。寺を守る神を祀る社という位置づけである。
青井阿蘇神社では国宝と登録有形文化財が一つの境内に並び、歓喜院では三つの区分が並んだ。それらは指定の区分の違いだった。本件は分類そのものが寺院と神社に分かれている。
建物が国宝で、中の像も国宝である
この社殿には、別の国宝が納められている。
三井寺の記録は、堂内の須弥壇には素木の厨子が安置され、三井寺の開祖・智証大師ゆかりの国宝・新羅明神坐像がまつられています、とする。
建物が国宝であり、そのなかの像も国宝である。二つの国宝が入れ子になっている。
三十帖冊子では、中身の冊子と容れ物の箱がそれぞれ国宝だった。文祢麻呂墓出土品では、箱と壺とガラスの壺が一括のなかに収まっていた。
本件は建物と彫刻という、区分の違う二つが重なっている。建造物の国宝のなかに、美術工芸品の国宝がある。
厨子については素木とされる。塗らない木のままである。
解説文の欄が、二件続けて空である
国指定文化財等データベースの解説文の欄は空である。
直前に扱った園城寺金堂も、解説文の欄が空だった。同じ寺で二件続けて、解説が書かれていないことになる。
創建及び沿革の欄も、棟礼、墨書、その他参考となるべき事項の欄も空である。金堂と同じ形である。
それでも構造の欄は詳しい。桁行三間、梁間三間、一重、流造、向拝一間、檜皮葺と記される。年代も貞和3年、1347年と和暦と西暦の両方で示される。
建造物の記録では、解説文がなくても構造と年代から性格が読める。金堂と本件を並べれば、桁行と梁間は同じ三間でも、屋根が入母屋造と流造で違うことが分かる。
参拝
所在は滋賀県大津市園城寺町で、所有は園城寺である。境内に建つ建物であり、外観は参拝の際に見ることができる。
三井寺の記録は、現在の建物は、足利尊氏によって貞和3年(1347年)に再興されました、とする。年代の欄の1347年は、再興の年にあたる。
また、檜皮葺屋根の流れるような美しさをもつ社殿建築で、流造の代表的遺構として知られています、とも記される。
同じ境内には、重要文化財の園城寺閼伽井屋(慶長5年、1600年)、園城寺一切経蔵(室町中期)などがある。いずれも1906年4月14日の重要文化財で、種別は近世以前/寺院である。
内部の拝観については寺の定めによる。訪問前に確認したい。
Q&A
- 園城寺新羅善神堂はいつ指定されましたか。
- 1901年(明治34年)3月27日に重要文化財、1953年(昭和28年)3月31日に国宝へ指定されました。重要文化財の日はここまで扱った物件のなかで最も早く、同じ寺の金堂より5年早い指定です。
- なぜ種別が神社なのですか。
- 寺を守る神を祀る社にあたるためです。三井寺は「三井寺の鎮守社のひとつで、北院伽藍の中心建築です」と記します。所有者は園城寺ですが、種別の欄は近世以前・神社とされ、金堂の寺院とは分かれています。
- 中には何がありますか。
- 三井寺は「堂内の須弥壇には素木の厨子が安置され、三井寺の開祖・智証大師ゆかりの国宝・新羅明神坐像がまつられています」と記します。国宝の建物のなかに国宝の像があります。
- 解説文はありますか。
- ありません。国指定文化財等データベースの解説文の欄は空で、創建及び沿革の欄も空です。同じ寺の金堂も同様で、二件続けて解説が書かれていません。
- いつ建てられたのですか。
- 年代の欄は貞和3年、西暦1347年とします。三井寺は「現在の建物は、足利尊氏によって貞和3年(1347年)に再興されました」と記しており、この年は再興の年にあたります。
基本情報
| 名称 | 園城寺新羅善神堂(おんじょうじしんらぜんしんどう) |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県大津市園城寺町 |
| 指定区分 | 国宝(建造物)/種別の欄は近世以前・神社。同じ寺の金堂は寺院/指定番号00110 |
| 指定年 | 1901年(明治34年)3月27日 重要文化財/1953年(昭和28年)3月31日 国宝 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行3間、梁間3間、一重、流造、向拝1間、檜皮葺。年代は貞和3年、西暦1347年。時代は室町前期。解説文の欄と創建及び沿革の欄はいずれも空 |
| 所有者 | 園城寺 |
| 公開状況 | 境内に建つ建物で、外観は参拝の際に見ることができる。内部の拝観は寺の定めによる |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 園城寺新羅善神堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/1330
- 文化庁 国指定文化財等データベース 園城寺金堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/1333
- 三井寺文化遺産ミュージアム 新羅善神堂
- https://miidera-museum.jp/cultural-property/contents/19/
- 総本山三井寺 公式サイト
- https://www.shiga-miidera.or.jp/
最終更新日: 2026.09.05