永遠の守護者との出会い:国宝・埴輪武装男子立像
東京・上野の静寂な展示室に、1400年の時を超えて立ち続ける戦士がいます。高さ130.5センチメートル、赤褐色の素焼きの体躯。右手は刀の柄を握り、左手には弓を持ち、背中には矢筒を背負う完全武装の姿。これが国宝・埴輪武装男子立像です。
なぜ国宝なのか:その歴史的価値
この埴輪が国宝に指定された理由は、その卓越した保存状態と芸術的完成度、そして考古学的重要性にあります。1974年6月8日の国宝指定は、単体の埴輪としては極めて稀な栄誉でした(2020年まで唯一の存在)。
群馬県太田市飯塚町から出土したこの武人埴輪は、6世紀後半の古墳時代後期に制作されました。同じ工房で作られた6体の「兄弟」埴輪の中でも最も完全な形で残り、当時の軍事技術と精神文化を現代に伝える第一級の資料となっています。
挂甲(けいこう)と呼ばれる小札を革紐で綴じ合わせた鎧、衝角付冑(しょうかくつきかぶと)と呼ばれる鍔のない兜、そして腰に下げた大刀。これらの武具の細部まで粘土で丁寧に表現された技術は、古墳時代の工人たちの卓越した技量を物語ります。
見どころ:時を超えた芸術性
圧倒的な存在感
まず驚かされるのは、そのサイズと存在感です。ほぼ等身大に近い大きさで作られたこの武人は、見る者に威圧感すら与えます。しかし同時に、単純化された顔の表現——細い切れ込みで表された目と口——は、現実の人間を超越した、永遠の守護者としての性格を強調しています。
精巧な武具の表現
鎧の表面には、実際の挂甲の小札を表す縦の刻線が丁寧に施されています。胸部には蝶結びで結ばれた2つの大きな紐、兜には鉄鋲を表す小さな粘土の突起。これらの細部は、実際の武具を熟知した工人による制作であることを示しています。
発見された彩色の痕跡
2017年から2019年にかけて行われた最新の保存修復調査では、白、赤、灰色の顔料の痕跡が発見されました。かつてこの武人は、今よりもはるかに鮮やかな姿で古墳の上に立っていたのです。
周辺環境:上野の文化の森で過ごす一日
東京国立博物館へのアクセス
JR上野駅公園口から徒歩6〜10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅からも徒歩圏内です。博物館は上野恩賜公園内にあり、春の桜、秋の紅葉と共に日本の四季を感じながら訪れることができます。
開館時間:火〜木・日曜日 9:30〜17:00、金・土曜日 9:30〜20:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
入館料:一般1,000円、大学生500円、18歳未満および70歳以上無料
上野公園の魅力
東京国立博物館の周辺には、国立科学博物館、国立西洋美術館(世界遺産)、東京都美術館、上野動物園など、日本を代表する文化施設が集まっています。また、不忍池や寛永寺、清水観音堂などの歴史的建造物も点在し、一日では回りきれないほどの見どころがあります。
アメ横商店街も徒歩圏内にあり、日本の下町文化と活気ある商店街の雰囲気を楽しむことができます。
おすすめの鑑賞ルート
平成館の考古展示室で埴輪武装男子立像を鑑賞した後は、同じ階の他の埴輪コレクションもぜひご覧ください。踊る埴輪、馬形埴輪、家形埴輪など、古墳時代の生活と文化を物語る貴重な資料が展示されています。
その後、本館で日本美術の通史展示を見学し、法隆寺宝物館で飛鳥時代の仏教美術に触れることで、古墳時代から仏教伝来後への日本文化の変遷を体感できます。
古墳時代を知る:関連施設の紹介
埴輪についてさらに深く知りたい方には、千葉県の芝山古墳・はにわ博物館、埼玉県のさきたま古墳群と埼玉県立さきたま史跡の博物館、そして群馬県立歴史博物館(2020年に国宝指定された別の武人埴輪を所蔵)の訪問もおすすめです。
また、大阪の百舌鳥・古市古墳群は2019年にユネスコ世界遺産に登録され、巨大前方後円墳の壮大さを実感できます。
よくある質問
- 埴輪武装男子立像はいつでも見ることができますか?
- 常設展示されていますが、保存のため展示替えがあります。東京国立博物館の公式サイトで「e国宝」データベースを確認するか、事前に問い合わせることをおすすめします。特別展で他館に貸し出されることもあります。
- 写真撮影は可能ですか?
- 考古展示室では基本的に撮影可能ですが、フラッシュ、三脚、自撮り棒の使用は禁止されています。作品によっては撮影禁止の場合もあるので、展示室の表示をご確認ください。
- なぜ顔の表現が簡略化されているのですか?
- 埴輪の特徴的な表現方法で、現実の人間を写実的に表現するのではなく、永遠の存在として抽象化することで、死者の世界と生者の世界を結ぶ霊的な役割を果たすと考えられています。
- 他の国宝埴輪はどこで見られますか?
- 2020年に群馬県立歴史博物館所蔵の「埴輪 挂甲の武人」が国宝に指定されました。これは太田市内の別の古墳から出土したもので、東京国立博物館の武人と「兄弟」のような関係にあります。
- 古墳時代とはどのような時代ですか?
- 3世紀半ば〜6世紀末の約350年間で、日本に統一的な政治権力(ヤマト政権)が成立し、巨大な前方後円墳が各地に築かれた時代です。仏教伝来(538年)直前の、日本独自の精神文化が花開いた時期でもあります。
基本情報
| 名称 | 埴輪武装男子立像(はにわぶそうだんしりつぞう) |
|---|---|
| 文化財指定 | 国宝(1974年6月8日指定、指定番号00035) |
| 時代 | 古墳時代後期(6世紀) |
| 出土地 | 群馬県太田市飯塚町 |
| 材質 | 素焼き(テラコッタ) |
| 寸法 | 高さ130.5cm、重量30.5kg |
| 所蔵 | 東京国立博物館 |
| 展示場所 | 平成館考古展示室(展示替えあり) |
参考文献
- Smarthistory – Haniwa Warrior
- https://smarthistory.org/haniwa-warrior/
- 東京国立博物館 - e国宝データベース
- https://emuseum.nich.go.jp/detail?content_base_id=100200&content_part_id=001&content_pict_id=033
- Wikipedia - Haniwa Warrior in Keiko Armor
- https://en.wikipedia.org/wiki/Haniwa_Warrior_in_Keiko_Armor
- 文化遺産オンライン - 埴輪 挂甲の武人
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/126064
- 東京国立博物館 公式サイト
- https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=113&lang=ja