1躯の埴輪 ― 1974年に国宝
埴輪武装男子立像は、東京国立博物館(東京都台東区上野公園13-9)にある古墳時代の考古資料で、1958年(昭和33年)2月8日に重要文化財となり、1974年(昭和49年)6月8日に国宝に指定された。員数は1躯、所有は独立行政法人国立文化財機構である。
重要文化財から国宝まで16年である。奈良県藤ノ木古墳出土品と同じ間隔にあたる。
員数の単位は躯である。木造五智如来坐像でも躯が使われたが、あちらは彫刻だった。考古資料で躯を使うのは初めてになる。
考古資料でありながら、一体ずつ数えられている
考古資料の数え方には、これまで別の形があった。
武蔵埼玉稲荷山古墳出土品、奈良県藤ノ木古墳出土品、福岡県平原方形周溝墓出土品は、いずれも一括とされた。数を書かず、ひとまとまりとして扱う書き方である。
本件は違う。1躯と数えられている。
違いは名称にも現れる。一括の三件はいずれも「出土品」で終わる。どこから出たものかで括られている。本件は「埴輪武装男子立像」で、物そのものを指す。
関連作品にも、埴輪女子立像、埴輪男子跪坐像、埴輪馬、埴輪猪、埴輪家、埴輪船、埴輪猿といった名が並ぶ。いずれも個体の名である。出土地でまとめるか、物ごとに名を付けるか。同じ考古資料でも扱いが分かれている。
比較の範囲を示したうえで、最上級が使われている
評価の書き方に注目したい。
東日本では武人埴輪が多く発見されているが、本埴輪は大きさもあり、各部分の製作もていねいで保存状態もよく、最も優れた作品である、とある。
最も優れた、と言い切っている。ただしその前に、東日本では武人埴輪が多く発見されている、と置かれている。
何と比べての最上級かが示されている。東日本の武人埴輪という母集団のなかで最も優れる、という意味になる。
武蔵埼玉稲荷山古墳出土品は「現存最古の日本の文章」、福岡県平原方形周溝墓出土品は「一遺構からの発見では他を凌駕した数量」だった。前者は範囲が日本全体、後者は一遺構という単位である。本件は地域と種類で範囲を切っている。
理由も三つ挙げられる。大きさ、各部分の製作の丁寧さ、保存状態のよさである。
顔の造作が、評価に含まれている
解説は、この埴輪の表情に触れる。
きりっと結んだ口元と、深く切りこまれた目には武人としての気品と風格があり、とある。
口元と目という、顔の二つの部分が挙げられている。深く切りこまれた、という作りの説明と、気品と風格という受け取り方が並んでいる。
姿勢についても、甲胄を着け、弓や大刀の柄をにぎりしめてその動作を巧みにとらえている、と記される。手が何を握っているかまで書かれる。
線刻釈迦三尊等鏡像では、九体の像が一体ずつ追われていた。本件は一体の、しかも顔の部分にまで記述が及ぶ。員数が1躯であることと、記述の細かさが対応している。
鑑賞
所在は東京国立博物館で、所有は独立行政法人国立文化財機構である。館が保管する資料であり、常設で公開される性格のものではない。
文化庁は寸法を記していない。旧来の記述に「高さ130.5センチメートル」とするものが見られるが、記録では確認できなかった。本稿はこの数値を記さない。
出土地についても、文化庁の記録に記載はない。旧来の記述に群馬県太田市とするものがあるが、本稿は記さない。
関連作品に、埴輪武装男子像という一字違いの名がある。立像の二字が入るかどうかで別の物件になる。名称だけでは取り違えやすい。
展示の予定は変わることがあるため、訪問前に館の案内で確認したい。
Q&A
- 埴輪武装男子立像はいつ指定されましたか。
- 1958年(昭和33年)2月8日に重要文化財、1974年(昭和49年)6月8日に国宝へ指定されました。員数は1躯、所在は東京国立博物館、所有は独立行政法人国立文化財機構です。
- なぜ一括ではなく1躯なのですか。
- 出土地でまとめるのではなく、物そのものが名称になっているためです。稲荷山や藤ノ木や平原の出土品はいずれも「出土品」で終わり一括とされますが、本件は個体を指す名称をもち1躯と数えられます。
- 何が評価されているのですか。
- 文化庁は「東日本では武人埴輪が多く発見されているが、本埴輪は大きさもあり、各部分の製作もていねいで保存状態もよく、最も優れた作品である」と記します。比較の範囲が東日本の武人埴輪と示されています。
- どのような姿ですか。
- 「きりっと結んだ口元と、深く切りこまれた目には武人としての気品と風格があり、甲胄を着け、弓や大刀の柄をにぎりしめてその動作を巧みにとらえている」と記されます。顔の造作と手の動作まで書かれています。
- 大きさや出土地は分かりますか。
- 文化庁の記録に寸法も出土地も記載がありません。旧来の記述に高さ130.5センチメートル、群馬県太田市出土とするものが見られますが、本稿はこれらを記していません。
基本情報
| 名称 | 埴輪武装男子立像(はにわぶそうだんしりゅうぞう)/関連作品の埴輪武装男子像は別の物件 |
|---|---|
| 所在地 | 東京国立博物館 東京都台東区上野公園13-9 |
| 指定区分 | 国宝(考古資料) |
| 指定年 | 1958年(昭和33年)2月8日 重要文化財/1974年(昭和49年)6月8日 国宝 |
| 員数 | 1躯 |
| 寸法 | 文化庁は寸法を記していない。甲胄を着け、弓や大刀の柄をにぎりしめた姿で、口元と目の造作が評価される。時代は古墳 |
| 所有者 | 独立行政法人国立文化財機構 |
| 公開状況 | 館が保管する資料で、常設の公開ではない |
参考文献
- 文化遺産オンライン 埴輪武装男子立像
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/126064
- 東京国立博物館 公式サイト
- https://www.tnm.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
- 文化庁 文化財の紹介 美術工芸品
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/bijutsu_kogei/
最終更新日: 2026.09.05