平安時代の大鎧 ― 1952年に国宝

赤絲威鎧〈兜、大袖付〉は、東京都青梅市の武蔵御嶽神社が所蔵する平安時代の大鎧で、1952年(昭和27年)11月22日に国宝に指定された。それに先立つ1899年(明治32年)8月1日には重要文化財となっている。員数は1領、種別は工芸品、指定番号は00075。読みは「あかいとおどしよろい〈かぶと、おおそでつき〉」である。

文化庁の解説は短い。関東随一の名品として古来著名な本鎧は、明治年間に修理が施され、威糸の色彩感が失われているが、部分的には全て完存している。総体の形姿は豪壮雄大で源平時代武将の趣致を徴するに充分な遺品であろう。

「威糸の色彩感が失われている」という一句は押さえておきたい。名称は赤絲威だが、明治の修理を経て当初の色は残っていない。旧来の記述に「紅の鎧」という表現が見られるが、現状は文化庁が記すとおりである。

同名の別件がある ― 大山祇神社の鎧

「赤絲威鎧」という名の国宝は、これ一件ではない。愛媛県今治市の大山祇神社にも「赤絲威鎧〈大袖付〉」があり、こちらも国宝である。

二件は名称が近く、混同されやすい。区別は次のとおりである。

本件は武蔵御嶽神社(東京都)の所蔵で、兜が付く。重要文化財が明治32年8月1日、国宝が昭和27年11月22日。大山祇神社(愛媛県)のものは大袖のみで兜を欠き、重要文化財と国宝が同じ昭和27年3月29日である。

名称の〈 〉内が「兜、大袖付」か「大袖付」かが、二件を分ける決定的な違いにあたる。資料を参照する際は、この括弧書きと所在地を確かめたい。

寸法と品質・形状

寸法は胴高85.0センチメートル、兜高12.1センチメートル、大袖長42.4センチメートルである。

文化庁の品質・形状の記載を追う。平札は黒漆塗で、革札に所々鉄札が交じる。威毛は赤糸、耳糸と畦目は樫鳥糸、菱縫は紅鞣である。

札は鎧を構成する小さな板をいい、これを糸で綴じ合わせて胴や袖を作る。革札に鉄札を交ぜるのは、軽さと防御力を両立させるためである。威毛はその綴じ糸で、赤糸を用いることが名称の由来にあたる。

胴の構成は、前立挙二段、後押付・逆板・三の板、衝胴四段、草摺は脇楯共に四間五段下がりである。大袖は六段で、水呑緒鐶を裏に打つ。

兜鉢は鉄の黒漆塗りで十七枚張、十三間の厳星である。しころは五段、吹返は四段で杉立形。十七枚の鉄板を張り合わせた鉢という構成が記録されている。

染韋の文様

金具廻りと革所には、雲文襷入獅子円文の染韋が包まれている。

染韋は文様を染めた革で、鎧の要所を包んで補強と装飾を兼ねる。雲文を襷状に配し、その中に獅子を円形に収めた文様である。化粧板には菖蒲韋が包まれる。

小縁は紅韋、伏組は紫と白縹の糸。金具廻りの覆輪は鍍金、八双鋲や居文鍍金菊座笠鋲が打たれる。革・糸・金物の三種で色と質感を作り分けていることが、記載の細かさから読み取れる。

文化庁が「豪壮雄大」と評するのは、これらの要素が総体として作る印象を指す。

伝来と拝観

文化庁は伝来の欄に「社伝 畑山重忠奉納」と記す。畠山重忠の奉納という社伝である。データベースの表記は「畑山」となっているが、これは「畠山」の誤記と考えられる。公的記録の表記をそのまま採らず、相違があることを記すにとどめる。

ただし社伝であって、奉納の年を示す一次資料は本稿の調査範囲では確認できなかった。文化庁も時代を「平安」とのみ記し、年代欄は空欄である。

鎧は武蔵御嶽神社の宝物殿で保管・展示されている。開館日と拝観料は変更されることがあるため、訪問前に神社へ確認したい。通年の常時公開とは限らないので、実物を目当てにする場合は特に確かめたい。

武蔵御嶽神社は御岳山の山上にある。JR青梅線の御嶽駅からバスでケーブル下、御岳登山鉄道で御岳山駅、そこから徒歩約25分である。

Q&A

Q赤絲威鎧〈兜、大袖付〉はいつ国宝に指定されましたか。
A1952年(昭和27年)11月22日です。それに先立つ1899年(明治32年)8月1日に重要文化財となっています。員数は1領、種別は工芸品、指定番号は00075。時代は平安で、所有は御嶽神社です。
Q同じ名前の国宝が他にもあると聞きました。
A愛媛県今治市の大山祇神社に「赤絲威鎧〈大袖付〉」があり、こちらも国宝です。本件は兜が付き、重文が明治32年8月1日、国宝が昭和27年11月22日。大山祇神社のものは兜を欠き、重文と国宝が同じ昭和27年3月29日です。名称の括弧書きと所在地で区別してください。
Q今も赤いのですか。
A文化庁は「明治年間に修理が施され、威糸の色彩感が失われている」と記しています。名称は赤絲威ですが、当初の色は残っていません。ただし部分的には全て完存しているとも記されています。
Qどのような構造の鎧ですか。
A胴高85.0センチメートル、兜高12.1センチメートル、大袖長42.4センチメートル。平札は黒漆塗で革札に所々鉄札が交じり、威毛は赤糸です。胴は前立挙二段、衝胴四段、草摺は四間五段下がり。兜鉢は鉄黒漆塗の十七枚張、十三間の厳星です。
Q赤絲威鎧はどこで見られますか。
A武蔵御嶽神社の宝物殿で保管・展示されています。開館日と拝観料は変更されることがあり、通年の常時公開とは限らないため、訪問前に神社へ確認してください。御岳山の山上にあり、御岳山駅から徒歩約25分です。

基本情報

名称赤絲威鎧〈兜、大袖付〉(あかいとおどしよろい かぶと、おおそでつき)
所在地東京都青梅市御岳山176 武蔵御嶽神社
指定区分国宝(工芸品)/指定番号00075
指定年1899年(明治32年)8月1日 重要文化財/1952年(昭和27年)11月22日 国宝
員数1領
寸法胴高85.0センチメートル、兜高12.1センチメートル、大袖長42.4センチメートル。平札黒漆塗、革札に所々鉄札交じり、威毛赤糸。胴は前立挙2段、衝胴4段、草摺は4間5段下がり。兜鉢は鉄黒漆塗の17枚張、13間の厳星。大袖6段。平安時代
所有者御嶽神社
公開状況武蔵御嶽神社の宝物殿で保管・展示。開館日と拝観料は変更されることがあり、通年の常時公開とは限らない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 赤絲威鎧〈兜、大袖付〉
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/363
文化遺産オンライン 赤絲威鎧〈大袖付〉(大山祇神社/別件)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/188886
武蔵御嶽神社 宝物 赤糸威大鎧
https://musashimitakejinja.jp/homotsu_multilingual/ja/akaito_ja.html
武蔵御嶽神社 公式サイト
https://musashimitakejinja.jp/

最終更新日: 2026.09.03