1口の刀 ― 1958年に重要文化財

刀〈金象嵌銘来国光スリ上/本阿(花押)〉は、東京都台東区上野公園13-9の東京国立博物館が保管する鎌倉時代の工芸品で、1958年(昭和33年)2月8日に重要文化財に指定された。国宝ではなく、重要文化財としての指定である。所有は独立行政法人国立文化財機構である。

員数は1口である。作者の欄には来国光とある。

1958年2月8日は、{金銅荘環頭大刀拵/大刀身}が国宝に指定された日と同じである。同じ日に、一方は国宝、他方は重要文化財となっている。

ふりがなに、山括弧も斜線もそのまま入る

読みの欄が、記号まで写している。

ふりがなの欄は、かたな〈きんぞうがんめいらいくにみつすりあげ/ほんあ(かおう)〉である。

山括弧も斜線も丸括弧も、名称のとおりに置かれている。読める字だけを拾うのではなく、記号ごと再現している。

旧小西家住宅では、名称の旧の字がふりがなに入っていなかった。旧学習院初等科正堂では、文化庁が旧を落とし、成田市が入れていた。

土偶/宮城県遠田郡田尻町蕪栗恵比須田出土では、斜線以降にふりがながなかった。

本件は逆で、記号を含めて全体に読みが与えられている。ふりがなの与え方は物件ごとに大きく違う。

斜線の後ろが空の名称が、数多くある

刀剣類の名称には、決まった形がある。

本件の名称は、刀〈金象嵌銘来国光スリ上/本阿(花押)〉である。斜線の前に銘の内容、後ろに本阿弥家の極めが置かれる。

ところが関連する物件を見ると、刀〈無銘正宗(名物観世正宗)/〉、太刀〈無銘伝国俊/〉のように、斜線の後ろが空のものが並ぶ。

刀剣以外にも、幼学指南鈔巻第十六〈武部上/〉、聖徳太子伝私記(古今目録抄)〈顕真筆/〉がある。

斜線は常に置かれ、後ろに入る内容は物件によってある場合とない場合がある。二つの欄を持つ枠が、片方だけ埋まっている状態になる。

日本書紀神代巻〈上下〉では、山括弧のなかに斜線がなかった。同じ記号でも、内側の作りが違っている。

解説は「鎌倉時代の作品。」の一文である

文化庁の解説が、一文で終わる。

解説文は、鎌倉時代の作品。とだけ記される。

寸法の欄と品質・形状の欄にも記載がない。年代の欄も空で、時代の欄に鎌倉とあるのみである。

鎏金獣帯鏡では、古墳時代の資料。の一文だった。あちらは考古資料であり、作品ではなく資料とされていた。

本件は工芸品であり、作品とされる。時代の名だけが入れ替わる形になる。

ただし本件には作者の欄がある。来国光の名が記録され、鎏金獣帯鏡には作者の記載がなかった。一文の解説でも、欄に入る情報の量は物件によって違う。

鑑賞

所在は東京都台東区上野公園13-9の東京国立博物館で、所有は独立行政法人国立文化財機構である。

土偶/宮城県遠田郡田尻町蕪栗恵比須田出土も同じ場所、同じ所有者である。あちらは考古資料、本件は工芸品になる。

名称のスリ上は磨上のことで、刀身の茎を切り詰めて短くすることをいう。もとの銘が失われるため、後から金象嵌で銘を入れ直している。

沃懸地獅子文毛抜形太刀では、名の由来が記録自身に説明されていた。太刀〈銘光世作〉では、山括弧が銘を示していた。

本件は、銘が後から入れられたものであることまで名称が示している。博物館が保管する品であり、常設で公開される性格のものではない。訪問前に確認したい。

Q&A

Qこの刀はいつ指定されましたか。
A1958年(昭和33年)2月8日に重要文化財へ指定されました。国宝ではなく重要文化財で、員数は1口、所有は独立行政法人国立文化財機構です。
Qふりがなはどう記されていますか。
A「かたな〈きんぞうがんめいらいくにみつすりあげ/ほんあ(かおう)〉」です。山括弧も斜線も丸括弧も、名称のとおりに置かれています。
Q斜線は何を分けているのですか。
A前に銘の内容、後ろに本阿弥家の極めが置かれます。ただし関連する物件には「刀〈無銘正宗(名物観世正宗)/〉」のように後ろが空のものが数多くあります。
Qどのような解説が付いていますか。
A「鎌倉時代の作品。」の一文だけです。寸法の欄と品質・形状の欄にも記載がありません。ただし作者の欄に来国光とあります。
Q「スリ上」とは何ですか。
A磨上のことで、刀身の茎を切り詰めて短くすることをいいます。もとの銘が失われるため、後から金象嵌で銘を入れ直しています。

基本情報

名称刀〈金象嵌銘来国光スリ上/本阿(花押)〉(かたな〈きんぞうがんめいらいくにみつすりあげ/ほんあ(かおう)〉)/ふりがなに記号がそのまま入る
所在地東京国立博物館(東京都台東区上野公園13-9)
指定区分重要文化財(美術品・工芸品)/国宝ではない
指定年1958年(昭和33年)2月8日 重要文化財
員数1口
寸法寸法の欄と品質・形状の欄に記載はなく、年代の欄も空で時代の欄に鎌倉とあるのみ。作者の欄に来国光とある。名称のスリ上は茎を切り詰めることをいい、失われた銘を金象嵌で入れ直している
所有者独立行政法人国立文化財機構
公開状況博物館が保管する品で、常設の公開ではない

参考文献

文化遺産オンライン 刀〈金象嵌銘来国光スリ上/本阿(花押)〉
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/209889
e国宝
https://emuseum.nich.go.jp/
東京国立博物館 公式サイト
https://www.tnm.jp/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.07