1口の太刀 ― 1951年に国宝
太刀〈銘三条(名物三日月宗近)〉は、東京国立博物館(東京都台東区上野公園13-9)にある平安時代の工芸品で、1933年(昭和8年)1月23日に重要文化財となり、1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定された。員数は1口、所有は独立行政法人国立文化財機構である。
寸法は刃長80.0センチメートル、反り2.7センチメートル、元幅2.9センチメートル、先幅1.4センチメートル、鋒長2.1センチメートルである。刀〈金象嵌銘正宗本阿花押〉と同じくメートル法で記される。
重要文化財となった1933年1月23日は、青井阿蘇神社の社殿が重要文化財となった日と同じである。国宝となった1951年6月9日は、二つの曜変天目茶碗と同じ日にあたる。
名が、刃の模様から来ている
三日月という号の由来が記録されている。
室町時代以来「天下五剣」の一つに数えられ、刃文の形から三日月の号がある、とある。
刃文は焼き入れによって刃に現れる模様をいう。その形が三日月に見えることから名が付いた。
文化庁は刃文をこう記す。刃縁に反って半月形の打のけ風の模様が頻りにかかる、とある。半月形の模様が繰り返し現れる。
名の由来はここまでさまざまだった。太刀〈銘久国〉は銘文の転記、喪乱帖は本文の冒頭語、和漢朗詠集(雲紙)は料紙、志津川のオキチモズク発生地は地名、曜変天目茶碗の稲葉天目は所持者の家名、中務正宗は所持者の官名である。本件は物の表面の模様から名が来ている。
銘は「三条」で、作者の名ではない
名称の山括弧に入るのは、銘三条である。三条は個人の名ではない。
文化庁は、三条銘については、古来宗近同人と伝え、その有銘確実の現存作は極めて少ない、と記す。
三条と銘のあるものは、古くから宗近という人物のものと伝えられてきた。銘そのものは人を指していない。伝承によって人物と結びつけられている。
作者を定める方法が、これで四つ目になる。太刀〈銘久国〉は刀工が刻んだ銘で確定した。太刀〈銘正恒〉は銘があっても同名の刀工が複数いた。刀〈金象嵌銘正宗本阿花押〉は鑑定した人が金で名を入れた。本件は、銘が人名でないものを伝承が人に結びつける。
銘の位置も細かい。茎は生ぶで、雉子股形となり、鑢目不詳、目釘孔二。佩裏の目釘孔中央に銘がある、とある。目釘孔が二つあり、そのどちらかの中央に銘がある。太刀〈銘正恒〉は「原目釘孔の下」だった。
附の鞘は、柄を失ったまま指定されている
この太刀には附がある。
附の糸巻太刀は、柄を失うが、金平目地に五七桐紋を金蒔絵し、赤銅魚々子地に三日月、雲、桐を配した金具を施した桃山時代の鞘である、とある。
柄がない。欠けた状態のまま附として指定されている。
刀身は平安時代、鞘は桃山時代である。数百年の隔たりがある二つが、一つの物件のなかで本体と附になっている。
刀〈金象嵌銘正宗本阿花押〉では、拵が付属品として寸法欄に現れ、総長93.5センチメートルと記されていた。本件の鞘は附指定であり、寸法は記されない。同じ外装でも扱いが違う。
鞘の金具には三日月が配されている、とも記される。刃の模様から付いた号が、外装の意匠にも用いられている。
鑑賞
所在は東京国立博物館で、所有は独立行政法人国立文化財機構である。館が保管する刀であり、常設で公開される性格のものではない。
評価も記される。本太刀は、優れて美しい姿、肉置きにも湾刀としての最古の風韻を漂わせる、とある。
分類には食い違いがある。文化庁の記録は工芸品とし、東京国立博物館の記録は「その他」とする。時代も、文化庁は平安、所蔵館は平安時代・12世紀と世紀まで示す。
金剛場陀羅尼経と冥報記でも、二つのデータベースで分類が食い違っていた。
展示の予定は変わることがあるため、訪問前に館の案内で確認したい。
Q&A
- この太刀はいつ指定されましたか。
- 1933年(昭和8年)1月23日に重要文化財、1951年(昭和26年)6月9日に国宝へ指定されました。員数は1口、所在は東京国立博物館、所有は独立行政法人国立文化財機構です。
- 三日月という名の由来は何ですか。
- 文化庁は「刃文の形から三日月の号がある」と記します。刃文は焼き入れによって刃に現れる模様で、「刃縁に反って半月形の打のけ風の模様が頻りにかかる」とされます。物の表面の模様が名になっています。
- 銘の「三条」は作者名ですか。
- いいえ。文化庁は「三条銘については、古来宗近同人と伝え、その有銘確実の現存作は極めて少ない」と記します。銘そのものは人を指しておらず、伝承によって宗近という人物と結びつけられています。
- 附指定は何ですか。
- 糸巻太刀の鞘です。文化庁は「柄を失うが、金平目地に五七桐紋を金蒔絵し、赤銅魚々子地に三日月、雲、桐を配した金具を施した桃山時代の鞘である」と記します。柄がない状態のまま指定されています。
- 分類は何ですか。
- 文化庁の記録は工芸品とし、東京国立博物館の記録は「その他」とします。時代も文化庁は平安、所蔵館は平安時代・12世紀と世紀まで示します。本稿は文化庁の記載を優先しています。
基本情報
| 名称 | 太刀〈銘三条(名物三日月宗近)〉(たち めいさんじょう めいぶつみかづきむねちか) |
|---|---|
| 所在地 | 東京国立博物館 東京都台東区上野公園13-9 |
| 指定区分 | 国宝(工芸品)/桃山時代の糸巻太刀の鞘が附指定/所蔵館の記録は分類を「その他」とする |
| 指定年 | 1933年(昭和8年)1月23日 重要文化財/1951年(昭和26年)6月9日 国宝 |
| 員数 | 1口 |
| 寸法 | 刃長80.0センチメートル、反り2.7センチメートル、元幅2.9センチメートル、先幅1.4センチメートル、鋒長2.1センチメートル。鎬造、庵棟、小鋒で、茎は生ぶ、雉子股形、目釘孔は2つ。作者は宗近、時代は平安 |
| 所有者 | 独立行政法人国立文化財機構 |
| 公開状況 | 館が保管する刀で、常設の公開ではない |
参考文献
- 文化遺産オンライン 太刀〈銘三条(名物三日月宗近)/〉
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/125494
- 文化遺産オンライン 太刀 銘 三条(東京国立博物館)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/453801
- 東京国立博物館 公式サイト
- https://www.tnm.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
最終更新日: 2026.09.05