1口の茶碗 ― 1951年に国宝
曜変天目茶碗は、東京都にある静嘉堂文庫美術館の南宋時代の茶碗で、1941年(昭和16年)7月3日に重要文化財となり、1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定された。員数は1口、指定番号は00017、所有は公益財団法人静嘉堂である。附指定はない。
寸法は高さ6.8センチメートル、口径12.0センチメートル、高台径3.8センチメートルである。国の欄は中国とする。冥報記と同じく、中国で作られたものが日本の制度で国宝に指定されている。
重要文化財となった1941年7月3日は、刀〈金象嵌銘正宗本阿花押〉が重要文化財となった日と同じである。
同じ名の二碗が、同じ日に国宝になっている
曜変天目茶碗という名の国宝は、これだけではない。
京都府の竜光院にも曜変天目茶碗があり、こちらも1951年6月9日に国宝に指定されている。国宝となった日が同じである。
重要文化財となった日は違う。竜光院のものは1908年(明治41年)4月23日、本件は1941年(昭和16年)7月3日である。33年の開きがある。
太刀〈銘正恒〉では同じ銘の刀が複数あり、佐敷城跡では同じ名の城跡が熊本と沖縄にあった。それらは指定の日が別だった。
本件と竜光院のものは、名称が同じで、国宝の指定日まで同じである。区別できるのは所在地、所有者、指定番号、そして寸法だけになる。
所在地が、二つの記録で違う
所在地についても食い違いがある。
国指定文化財等データベースは、所在地を千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F、保管施設の名称を静嘉堂文庫美術館とする。
一方、CMSの所在地は東京都世田谷区岡本2-23-1である。
美術館の展示施設が移ったことによると考えられる。物件そのものが動いたのではなく、置かれる場所が変わった。
福岡県平原方形周溝墓出土品では、記録が前原市とし、旧来の記述が糸島市としていた。あちらは市町村の名の問題で、本件は施設の場所の問題である。どちらも、記録がいつの時点のものかによって値が変わる。
伝来が、記号でつないで記される
伝来の書き方が簡潔である。
伝来・その他参考となるべき事項の欄に、稲葉家-小野家-岩崎家-静嘉堂、とある。
四つの持ち主が、ダッシュで並べられている。文章ではない。
喪乱帖では、遣唐使から皇室への献上まで七段階が文章で語られていた。本件は同じ経路を記号で示す。記録の書き方が、物件によって違う。
通称についても記される。摂津淀の稲葉家に伝わったことから、一般に稲葉天目の名で知られる名碗である、とある。
名の由来がまた新しい。刀〈金象嵌銘正宗本阿花押〉の中務は所持者の官名だった。本件の稲葉は所持者の家名である。
鑑賞
所有は公益財団法人静嘉堂で、静嘉堂文庫美術館が保管する。館が保管する茶碗であり、常設で公開される性格のものではない。
形についても細かい。口部下に捻り返しのある建戔特有の碗形。総体に引き締まる。高台を浅く平らに削り、蛇の目状の高台に仕上げる、とある。
釉についても、器の内面全体と外側腰まで黒釉が厚くかかるが、口縁釉は流下して薄くなり、見込みと裾には厚い釉溜まりが生じる。内部全面にまるい斑文が不規則に散る、と記される。
旧来の記述に「世界に3碗しかない」とするものが見られるが、文化庁の記録に現存数の記載はない。本稿はこの数字を記さない。
展示の予定は変わることがあるため、訪問前に館の案内で確認したい。
Q&A
- この曜変天目茶碗はいつ指定されましたか。
- 1941年(昭和16年)7月3日に重要文化財、1951年(昭和26年)6月9日に国宝へ指定されました。員数は1口、指定番号は00017、所有は公益財団法人静嘉堂です。
- 同じ名前の国宝が他にもあるのですか。
- あります。京都府の竜光院の曜変天目茶碗も同じ1951年6月9日に国宝へ指定されています。重要文化財の日は1908年4月23日で異なりますが、国宝の指定日は同じです。
- 大きさはどのくらいですか。
- 高さ6.8センチメートル、口径12.0センチメートル、高台径3.8センチメートルです。国の欄は中国、時代は南宋とされます。
- 稲葉天目という名の由来は何ですか。
- 文化庁は「摂津淀の稲葉家に伝わったことから、一般に稲葉天目の名で知られる名碗である」と記します。伝来の欄には「稲葉家-小野家-岩崎家-静嘉堂」と四つの持ち主がダッシュで並べられています。
- 世界に3碗しかないのですか。
- 文化庁の記録に現存数の記載はありません。旧来の記述にそうするものが見られますが、本稿はこの数字を記していません。
基本情報
| 名称 | 曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)/通称は稲葉天目/竜光院の曜変天目茶碗は別の国宝 |
|---|---|
| 所在地 | 静嘉堂文庫美術館。国指定文化財等データベースは千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1Fとし、CMSは東京都世田谷区岡本2-23-1とする |
| 指定区分 | 国宝(工芸品)/指定番号00017/附指定はない |
| 指定年 | 1941年(昭和16年)7月3日 重要文化財/1951年(昭和26年)6月9日 国宝 |
| 員数 | 1口 |
| 寸法 | 高さ6.8センチメートル、口径12.0センチメートル、高台径3.8センチメートル。口部下に捻り返しのある碗形で、蛇の目状の高台に仕上げる。国は中国、時代は南宋 |
| 所有者 | 公益財団法人静嘉堂 |
| 公開状況 | 館が保管する茶碗で、常設の公開ではない |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 曜変天目茶碗(静嘉堂)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/303
- 静嘉堂文庫美術館
- https://www.seikado.or.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
- 文化庁 文化財の紹介 美術工芸品
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/bijutsu_kogei/
最終更新日: 2026.09.05