昭和前期の茶室 ― 2022年に登録

蒲郡クラシックホテル鶯宿亭(旧常磐館別館茶室)は、愛知県蒲郡市竹島町451-1他にある茶室で、2022年(令和4年)2月17日に国の登録有形文化財に登録された。員数は1棟。構造は木造平屋建、瓦葺、建築面積90平方メートル。所有は株式会社蒲郡クラシックホテルである。

文化庁は年代を「昭和前/1926年から1945年」とする。建築年が幅で示されているのは、正確な年が確定していないためである。所有者側の説明も昭和6年から11年(1931年から1936年)とし、建築年が定かではないと記す。大正時代の建築とする記述も見られるが、文化庁の年代欄は昭和前期である。本稿はいずれか一つを採らず、記述に幅があることを記すにとどめる。

文化庁の解説はこう記す。本館南の丘に建つ茶室。平屋建、複雑な構成の入母屋造桟瓦葺。西面玄関から畳廊下、次の間を介して南東に床棚付8畳客室を配し、南西に三畳台目茶室及び水屋を配する。丸太材を多用する数寄屋風で、ガラス戸越しに三河湾を望む、趣ある近代和風の離れ、と。

三畳台目という茶室の広さ

南西に配される茶室は三畳台目である。

三畳台目は、三畳に台目畳を加えた広さの茶室をいう。台目畳は通常の畳の四分の三の長さで、点前座に用いられる。畳三枚と四分の三枚という構成である。

この広さは、千利休以来の小間の茶室に用いられてきた寸法の一つである。狭い空間で亭主と客が向き合う形をとる。水屋は茶事の準備をする場で、茶室に隣接して設けられる。

茶室のほかに、南東には床棚付8畳の客室がある。茶室と客室が別に設けられている構成で、茶事のための小間と、人を迎える広間を併せ持つ。

丸太材と数寄屋風

文化庁は「丸太材を多用する数寄屋風」と記す。

数寄屋は茶室の様式を住宅に取り入れた造りをいう。角材ではなく丸太を使い、面皮柱のように木の表皮を残す部材を用いる。製材で角を落とさず、木の形をそのまま見せる手法である。

屋根は入母屋造の桟瓦葺で、文化庁は「複雑な構成」と記す。入母屋を組み合わせて起伏をつけているためで、平屋でありながら屋根の輪郭が単純にならない。

西面に玄関を置き、畳廊下と次の間を介して奥へ進む。玄関から茶室まで、いくつかの空間を経る動線である。茶室に直接入るのではなく、間を置いて到達する。

ガラス戸越しに三河湾を望む

文化庁の解説の結びに、この建物の位置づけを示す一句がある。ガラス戸越しに三河湾を望む、趣ある近代和風の離れ。

茶室にガラス戸を用いるのは近代の手法である。伝統的な茶室は障子と土壁で外を遮り、内側に閉じた空間をつくる。ここではガラス戸を建て、外の景色を取り込んでいる。

文化庁が蒲郡クラシックホテル鶯宿亭を「近代和風」と呼ぶのは、この組み合わせを指す。三畳台目という伝統的な茶室の寸法と、ガラス戸による眺望が一棟の中にある。

2022年2月17日には、この鶯宿亭を含む4棟が同時に登録された。本館(旧蒲郡ホテル本館)、料亭竹島(旧常磐館梅別館)、六角堂(旧蒲郡ホテル聚美堂)である。それぞれ別件の登録で、旧称を見ると旧蒲郡ホテル系と旧常磐館系の二系統に分かれる。鶯宿亭は料亭竹島と同じ旧常磐館系である。

利用

蒲郡クラシックホテル鶯宿亭は2025年に改装され、茶室を備えた「茶寮 鶯宿亭」として使われている。内部を見るには利用者となることが前提である。

利用条件や料金は変わりうるため、訪問前に確認したい。登録有形文化財であっても、公開日や拝観料は設定されていない。

登録は「指定」とは別の制度で、届出制を基本とし、所有者が使い続ける自由を広く残す。改装しながら使い続けられるのは、この枠組みによる。

交通はJR東海道本線の蒲郡駅から車で約5分、徒歩約15分である。

Q&A

Q鶯宿亭はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A文化庁は年代を昭和前期(1926年から1945年)とし、幅で示しています。所有者側の説明も昭和6年から11年とし、建築年が定かではないと記します。登録は2022年(令和4年)2月17日で、員数は1棟、木造平屋建、瓦葺、建築面積90平方メートルです。
Q三畳台目とは何ですか。
A三畳に台目畳を加えた広さの茶室です。台目畳は通常の畳の四分の三の長さで点前座に用いられます。畳三枚と四分の三枚という構成で、千利休以来の小間の茶室に用いられてきた寸法の一つです。
Q建物の間取りはどうなっていますか。
A西面の玄関から畳廊下、次の間を介して、南東に床棚付8畳の客室、南西に三畳台目の茶室と水屋を配します。茶事のための小間と人を迎える広間を併せ持ち、玄関から茶室まではいくつかの空間を経る動線です。
Qなぜ「近代和風」と呼ばれるのですか。
A文化庁は「ガラス戸越しに三河湾を望む、趣ある近代和風の離れ」と記します。伝統的な茶室は障子と土壁で外を遮りますが、ここではガラス戸を建てて景色を取り込んでいます。三畳台目という伝統的な寸法とガラス戸による眺望が一棟の中にあります。
Q鶯宿亭は見学できますか。
A2025年に改装され、茶室を備えた「茶寮 鶯宿亭」として使われています。内部を見るには利用者となることが前提です。登録有形文化財であっても公開日や拝観料は設定されていません。利用条件や料金は変わりうるため事前に確認してください。

基本情報

名称蒲郡クラシックホテル鶯宿亭(旧常磐館別館茶室)
所在地愛知県蒲郡市竹島町451-1他
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2022年(令和4年)2月17日 登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積90平方メートル。複雑な構成の入母屋造桟瓦葺。西面玄関から畳廊下と次の間を経て、南東に床棚付8畳客室、南西に3畳台目の茶室と水屋。丸太材を多用する数寄屋風。昭和前期
所有者株式会社蒲郡クラシックホテル
公開状況改装され茶室を備えた施設として使用。内部は利用者となることが前提。公開日や拝観料の設定はない

参考文献

文化遺産オンライン 蒲郡クラシックホテル鶯宿亭(旧常磐館別館茶室)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/584026
文化遺産オンライン 蒲郡クラシックホテル本館(旧蒲郡ホテル本館)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/587713
蒲郡市観光協会 蒲郡クラシックホテル
https://www.gamagori.jp/spot/750
文化庁 登録有形文化財(建造物)の制度
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/

最終更新日: 2026.09.04