河床に露出する珪化木 ― 1941年に天然記念物

姉帯小鳥谷根反の珪化木地帯は、岩手県二戸郡一戸町にある珪化木の分布域で、1941年(昭和16年)2月21日に国の天然記念物に指定された。管理団体は一戸町である。

珪化木は、火山灰などに含まれる珪酸分が地下水に溶け込み、地中に埋まった樹木の内部に侵入してできた木の化石をいう。

文化庁の解説文は、指定された当時の文語体のまま残っている。カタカナ交じりで旧字を用いた文章で、記録そのものが1941年時点の文書である。

化石の樹種が現在の森と同じ

文化庁の解説で最も重い一節は、樹種についての記述である。

樹種はすぎ、なら、くり、かへで等を主とし、当時の群落が略現時と同様なりし事を示せり。

すなわち、化石になった森の樹種が、現在この地に生えている森とほぼ同じだということである。およそ17百万年前とされる時期の森が、今と変わらない構成をもっていたことになる。

化石は普通、失われたものを伝える。この珪化木は、変わらなかったことを伝えている。指定の理由がここに置かれている点が、この物件の特徴である。

文化庁は続けて評価を記す。珪化木の保存の良好なることと、その分布の広きことと、数の多きこととは、本邦稀に見る所なり。保存状態、分布の広さ、数の三点が並べられている。

根株は横たわっている

珪化木がどのような状態で残るかも記されている。

珪化木の大部分は馬淵川本流ならびにその支流である平糠川および根反川の河床に露出し、根株は概ね横臥す。

横臥とは横たわっていることをいう。立ったまま埋まったのではなく、倒れた状態で化石になっている。木が倒れてから埋没したことを示す。

露出しているのは河床である。川の流れが火山灰を削り、埋まっていた珪化木が現れるという関係になる。地層は馬淵川上流に分布する第三紀層である。

一戸町は、河川敷が珪化木地帯として指定されているが、その周辺の山には化石林が埋もれていると記す。見えているのは分布の一部にあたる。

指定範囲は川に沿った距離で示される

一戸町は指定範囲を具体的に記す。

馬淵川本流と平糠川との合流点より本流に沿って上流5,000メートル、平糠川に沿って上流3,000メートル、ならびに根反川と馬淵川本流との合流点より根反川に沿って上流5,500メートル以内の河川敷である。

三本の川に沿った距離で範囲が定められている。面積や境界線ではなく、合流点からの距離という示し方になっている。河川という細長い地形に対応した指定である。

一戸町は注意事項も記す。指定区域内(馬淵川、平糠川、根反川の河川敷)での珪化木採取は禁じられている。河床に露出しているため持ち去りやすいが、採取は認められない。

なお同じ一戸町にある根反の大珪化木は、この地帯とは別の指定である。地帯と、その中の一本は別に扱われている。

訪問

指定の対象は河川敷である。施設ではないので、開場時間や入場料はない。

河床の珪化木は水量によって見え方が変わる。増水時には近づけないことがあるため、天候と川の状況を確かめて訪ねたい。

採取は禁じられている。見ることはできても、持ち帰ることはできない。

所在は岩手県二戸郡一戸町である。詳しい場所と現在の状況は、一戸町の案内で確認したい。

Q&A

Q姉帯小鳥谷根反の珪化木地帯はいつ指定されましたか。
A1941年(昭和16年)2月21日に国の天然記念物に指定されました。管理団体は一戸町です。一戸町は平成27年(2015年)3月10日に追加指定があったと記しています。
Q珪化木とは何ですか。
A一戸町の説明によれば、火山灰などに含まれる珪酸分が地下水に溶け込み、地中に埋まった樹木の内部に侵入してできた木の化石です。文化庁は、馬淵川上流に分布する第三紀層が多数の珪化木を埋蔵していると記します。
Qどのような点が評価されているのですか。
A文化庁は、樹種がすぎ、なら、くり、かえで等を主とし、当時の群落がほぼ現在と同様であったことを示すと記します。また保存の良好なこと、分布の広いこと、数の多いことを本邦稀に見る所としています。
Q指定の範囲はどこまでですか。
A一戸町によれば、馬淵川本流と平糠川との合流点より本流に沿って上流5,000メートル、平糠川に沿って上流3,000メートル、根反川と馬淵川本流との合流点より根反川に沿って上流5,500メートル以内の河川敷です。三本の川に沿った距離で示されています。
Q珪化木を拾って持ち帰れますか。
Aできません。一戸町は「指定区域内(馬淵川、平糠川、根反川の河川敷)での珪化木採取は禁じられています」と記しています。河床に露出していますが、採取は認められません。

基本情報

名称姉帯小鳥谷根反の珪化木地帯(あねたいこずやねそりのけいかぼくちたい)/一戸町の表記は姉帯・小鳥谷・根反の珪化木地帯
所在地岩手県二戸郡一戸町
指定区分天然記念物(記念物)/根反の大珪化木は別の指定
指定年1941年(昭和16年)2月21日 天然記念物
員数文化庁データベースの員数欄は空欄
寸法指定範囲は、馬淵川本流と平糠川との合流点より本流に沿って上流5,000メートル、平糠川に沿って上流3,000メートル、根反川と馬淵川本流との合流点より根反川に沿って上流5,500メートル以内の河川敷(一戸町による)
所有者管理団体は一戸町
公開状況河川敷であり施設ではない。指定区域内での珪化木採取は禁じられている

参考文献

文化遺産オンライン 姉帯小鳥谷根反の珪化木地帯
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/162011
一戸町 姉帯・小鳥谷・根反の珪化木地帯
https://www.town.ichinohe.iwate.jp/soshikikarasagasu/sekaiisanka/bunkazaikakari/1/01/958.html
一戸町観光協会 珪化木
https://www.ichinohekankou.jp/sightseeing/history-2/keikaboku-2/
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.04