文久3年造替の本殿2棟と、寛永6年の社殿31棟

賀茂御祖神社は、京都府京都市左京区下鴨泉川町にある神社で、寛永6年(1629年)造営の社殿31棟と文久3年(1863年)造替の本殿2棟、計33棟が明治34年(1901年)8月2日に重要文化財に指定され、うち東本殿と西本殿の2棟が昭和28年(1953年)3月31日に国宝に指定された。通称を下鴨神社という。所有は賀茂御祖神社である。

国宝の東本殿・西本殿は文久3年(1863年)の造替で、いずれも三間社流造、檜皮葺。他の31棟は寛永6年(1629年)の造営で、楼門、楼門東西廻廊、中門、中門東西廻廊、舞殿、細殿、橋殿、神服殿、供御所、祝詞舎、東西楽屋、叉蔵、摂社出雲井於神社本殿、摂社三井神社の本殿3棟・拝殿・棟門・東西廊下などからなる。

文化庁の指定解説は、この33棟が二段階で指定されたことを記す。いわゆる下鴨神社であって、すでに24棟が一括指定されているが、いずれも本社関係建物のみであるので、楼門以内に存在する叉蔵、摂社出雲井於神社本殿、摂社三井神社本殿3棟、同拝殿、同棟門、同東西廊下の9棟を追加した。いずれも既指定建物と同じく寛永6年の造営になるものである、と。

境内の糺の森は国の史跡で、神社全体は平成6年(1994年)に世界遺産「古都京都の文化財」の構成資産として登録された。

三間社流造 ― 流造本殿の代表例

東本殿と西本殿は同じ規模、同じ様式で並んで建つ。三間社流造とは、正面三間の本殿で、屋根の前面を長く伸ばして向拝を覆う形式をいう。屋根の勾配が前へ流れるように見えることから流造と呼ばれ、全国の神社本殿で最も多く採用されている。

文化遺産オンラインは、この2棟を賀茂別雷神社の本殿・権殿と同様、流造本殿の代表例と位置づける。素木造で、周囲の高欄と階段のみを朱漆塗とする。江戸末期の建造だが、式年遷宮によって古式の様式が受け継がれてきたとされる。

向かって左が西本殿、右が東本殿である。東本殿に賀茂建角身命、西本殿に玉依媛命を祀る。玉依媛命は賀茂別雷神社に祀られる賀茂別雷命の母にあたり、御祖の名はここに由来する。

式年造替 ― 文久3年で止まった建て替え

国宝の本殿が1863年という新しい年代であることには理由がある。

文化遺産オンラインによれば、賀茂御祖神社では長元9年(1036年)から元亨2年(1322年)までほぼ20年ごとに式年造替が繰り返されていた。損傷した時を造替の機会としていた賀茂別雷神社とは異なり、周期を定めて建て替える制度をとっていた。戦乱で遅滞したのち、寛永6年(1629年)に再興されて平安時代の状況が再現された。

再興後は17世紀に1回、18世紀に3回、19世紀に3回の本殿造替が行われた。文久3年がその最後で、以後は造替が行われなくなった。明治34年の重要文化財指定によって、建て替えではなく修理で維持する対象となったからである。近代には東西本殿の半解体修理(1913年)と屋根葺替修理(1973年)が実施されている。

つまり現在の本殿は、式年造替という制度が最後に生んだ建物である。建て替えを繰り返して古式を保ってきた社殿が、指定によって建て替えを止め、その時点の姿で残された。

33棟で一件である理由

本殿2棟だけを見れば文久3年の流造である。舞殿だけを見れば寛永6年の一棟である。33棟を並べて初めて、賀茂御祖神社の境内が寛永6年の再興以来どう構成されてきたかが読み取れる。

楼門をくぐると舞殿、細殿、橋殿が並び、中門を経て本殿へ至る。この中軸を東西の廻廊が囲む。祝詞舎、神服殿、供御所は祭祀と運営を支え、叉蔵は宝物を納める。摂社出雲井於神社と摂社三井神社は、それぞれ本殿・拝殿・門・廊下を備えた小さな社殿群として、大きな社殿群の内側に収まる。

文化庁が本社関係の24棟に摂社の9棟を追加したのは、楼門以内の建物をすべて同じ寛永6年の造営として一体に扱うためである。追加指定の理由が「楼門以内に存在する」ことと「同じく寛永6年の造営になる」ことの二点だけで語られているのは、境内という単位と造営年という単位が一致していることを示す。

本殿2棟だけが国宝へ移されたのは、その2棟が式年造替の伝統を最後まで受け継いだ建物であり、流造本殿の代表例だからである。他の31棟は造替されず、寛永6年の姿を屋根葺替と部分修理で保ってきた。二つの保存の仕方が、一つの境内に同居している。

参拝

境内の参拝は無料で、開門は午前6時30分から午後5時まで。本殿は中門の内側にあり、通常は中門の前から拝む。中門の内側には言社と呼ばれる七つの小社が並び、本殿は瑞垣越しに屋根を望む。

本殿の特別参拝が行われる期間には、瑞垣の内側へ入ることができる。実施の有無と料金は公式サイトで確認したい。撮影は境内で一般に可能だが、本殿内部と祈祷中は禁止されている。

参道は糺の森を抜ける。森は史跡として別に指定されており、参道の両側に樹齢の高い木が並ぶ。楼門に着く前に、この森を歩くこと自体が参拝の一部になっている。

交通は京阪電鉄の出町柳駅から徒歩約12分。京都市バスでは下鴨神社前または糺ノ森下車。JR京都駅からは市バス205系統で約30分である。

Q&A

Q賀茂御祖神社の社殿はどのように指定されていますか。
A33棟が明治34年(1901年)8月2日に重要文化財に指定され、うち東本殿と西本殿の2棟が昭和28年(1953年)3月31日に国宝に指定されました。本殿2棟は文久3年(1863年)の造替、他の31棟は寛永6年(1629年)の造営です。糺の森は別に史跡に指定されています。
Q東本殿と西本殿はどのような建物ですか。
A同じ規模、同じ様式の三間社流造、檜皮葺で、並んで建ちます。素木造で高欄と階段のみ朱漆塗。文化遺産オンラインは賀茂別雷神社の本殿・権殿と同様、流造本殿の代表例と位置づけています。東本殿に賀茂建角身命、西本殿に玉依媛命を祀ります。
Q国宝の本殿が1863年と新しいのはなぜですか。
A長元9年(1036年)からほぼ20年ごとに式年造替を繰り返す制度があり、寛永6年の再興後も17世紀1回、18世紀3回、19世紀3回の造替が行われました。文久3年(1863年)がその最後で、明治34年の重要文化財指定によって建て替えではなく修理で維持する対象となりました。
Q賀茂御祖神社の33棟が一件の指定なのはなぜですか。
A楼門以内の建物がすべて寛永6年の造営で、境内という単位と造営年という単位が一致しているためです。文化庁は本社関係の24棟に摂社の9棟を追加した理由を「楼門以内に存在する」ことと「同じく寛永6年の造営になる」ことの二点で説明しています。
Q賀茂御祖神社は参拝できますか。本殿は見られますか。
A境内の参拝は無料で、開門は午前6時30分から午後5時までです。本殿は中門の内側にあり、通常は中門の前から瑞垣越しに屋根を望みます。特別参拝の期間には瑞垣の内側へ入れます。京阪出町柳駅から徒歩約12分です。

基本情報

名称賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)/通称 下鴨神社
所在地京都府京都市左京区下鴨泉川町59
指定区分国宝(東本殿・西本殿の2棟)、重要文化財(楼門・舞殿・摂社社殿など31棟)/境内の糺の森は史跡/世界遺産「古都京都の文化財」構成資産
指定年1901年(明治34年)8月2日 33棟を重要文化財に指定/1953年(昭和28年)3月31日 本殿2棟を国宝に指定
員数33棟
寸法東本殿・西本殿 3間社流造、檜皮葺、1863年/他31棟 1629年造営、多くは檜皮葺
所有者賀茂御祖神社
公開状況境内参拝無料。開門は午前6時30分から午後5時。本殿は中門の前から拝観。特別参拝の期間には瑞垣内へ入れる

参考文献

文化遺産オンライン 賀茂御祖神社 東本殿
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/156185
文化遺産オンライン 賀茂御祖神社 西本殿
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/185796
文化遺産オンライン 世界遺産 賀茂御祖神社(下鴨神社)
https://online.bunka.go.jp/special_content/component/25
京都市 世界遺産 賀茂御祖神社
https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000005607.html
賀茂御祖神社 公式サイト
https://www.shimogamo-jinja.or.jp/

最終更新日: 2026.09.02

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