古代日本の辺境を統治した証 - 多賀城碑が国宝に
2024年8月27日、宮城県多賀城市に佇む一基の石碑が国宝に指定されました。多賀城碑(たがじょうひ)- 1260年以上前の762年に建立されたこの古代の石碑は、日本が東北地方をどのように統治していたかを示す、他では得られない貴重な一次史料です。
高さ248センチメートルの花崗岩に刻まれた141文字は、奈良時代の行政システムの精巧さと、当時の日本の地理的認識の広さを物語っています。国府多賀城駅から徒歩わずか10分、入場無料で24時間見学可能なこの史跡は、海外からの旅行者にとって、観光地化されていない本物の古代日本文化に触れる絶好の機会となっています。
なぜ国宝に?歴史的価値と古代の統治システム
多賀城碑の碑文は、奈良の都から1500里、蝦夷の地や遠く中国東北部の靺鞨国まで3000里という距離を正確に記録しています。724年に大野東人によって築かれ、762年に藤原恵美朝獦によって大規模な改修が行われたという記述は、他のどの歴史書にも残されていない唯一の記録です。
1963年の考古学調査により、碑文に記された改修の痕跡が実際に発掘され、その内容の正確性が証明されました。日本に現存する7世紀から11世紀の古代石碑はわずか18基。その中でも多賀城碑は、古代日本の辺境統治の実態を示す第一級の史料として、ついに国宝の地位を獲得したのです。
松尾芭蕉が涙した理由 - 文学的価値と精神性
1689年、俳聖・松尾芭蕉は『奥の細道』の旅でこの碑を訪れ、感極まって涙を流しました。「むかしよりよみ置る歌枕、おほく語伝ふといへども、山崩川流れて道あらたまり、石は埋れて土にかくれ」と、多くの史跡が失われる中で、千年前の確かな記録がここに残っていることに深い感動を覚えたのです。
芭蕉は「これを行脚の一徳、存命の悦び」と記し、長生きしてこの碑に出会えた喜びを表現しました。現代の訪問者も、300年以上前に芭蕉が立った同じ場所で、同じ碑文を見上げることができます。この時空を超えた体験は、他では得難い文化的な感動をもたらしてくれるでしょう。
四季折々の美しさと撮影スポット
多賀城碑は季節ごとに異なる表情を見せます。4月上旬から中旬にかけては、保護施設を囲むように桜が咲き誇り、ピンク色の花びらが古代の石碑を優しく包み込みます。6月下旬から7月上旬には、隣接する多賀城跡で650種300万本のあやめまつりが開催され、8万人の来場者で賑わいます。
11月中旬の紅葉シーズンには、暖色系の葉が石碑の重厚感と美しいコントラストを生み出します。冬の澄んだ空気の中では、遠く蔵王連峰まで見渡せる眺望が広がります。夕方のゴールデンアワーは、風化した碑文の凹凸が陰影となって浮かび上がり、写真撮影に最適な時間帯です。
アクセスと実用情報
東京から多賀城碑へは、東北新幹線で仙台駅まで約1時間30分(11,000円)、仙台駅から在来線で国府多賀城駅まで14分(240円)と、合計2時間から2時間30分でアクセスできます。駅からは英語の案内標識に従って徒歩10分、東北歴史博物館を経由して碑に到着します。
見学は無料で24時間可能ですが、碑文をしっかりと観察し、写真撮影を楽しむなら日中の訪問がおすすめです。無料駐車場も完備されており、レンタカーでの訪問も便利です。隣接する東北歴史博物館(入館料460円)では、無料の英語音声ガイドで多賀城の歴史を詳しく学ぶことができます。
周辺の見どころ - 歴史と景観の宝庫
多賀城碑の周辺には、徒歩圏内に数多くの史跡が点在しています。多賀城跡は、奈良の平城宮跡、福岡の大宰府跡と並ぶ日本三大史跡の一つで、復元された南門や政庁跡から古代の壮大な規模を実感できます。
電車で30分の距離にある松島は、日本三景の一つとして知られる絶景スポットです。260の島々が浮かぶ湾内を遊覧船で巡り(1,500円)、瑞巌寺や円通院などの歴史的寺院を訪れることができます。塩竈神社は、塩の神様を祀る由緒ある神社で、伊達家との深い関わりも持つ文化的に重要な場所です。
地元グルメと宿泊施設
多賀城市内には、スマイルホテル仙台多賀城やホテルルートイン多賀城など、大浴場付きのビジネスホテルがあります。より伝統的な体験を求めるなら、仙台から40分の秋保温泉の旅館で、温泉と会席料理を楽しむことができます(1泊15,000円〜30,000円)。
宮城名物の牛タンは、炭屋善次郎多賀城店などで味わえます(ランチセット1,000円〜2,000円)。奈良時代から栽培されている古代米「紫黒米(しろのむらさき)」を使った地酒やスイーツも、地元ならではの味覚体験です。松島湾の新鮮な海の幸、特に冬の牡蠣は絶品です。
現代に生きる古代の遺産
2024年は多賀城創建1300年の記念年にあたり、様々な記念イベントや特別展示が開催されています。毎年恒例のあやめまつりでは、古代の城跡が花の楽園に変わり、歴史と自然の融合を体験できます。これらのイベントは、単なる保存を超えて、古代の遺産を現代の生活に活かす試みとして注目されています。
多賀城碑は「伊達な文化」日本遺産の構成文化財にも認定され、江戸時代に碑を保護した伊達家の功績も評価されています。デジタル技術を活用した博物館の展示や多言語対応の教育プログラムにより、世界中の人々がこの古代の記録に触れることができるようになりました。
よくある質問
- 多賀城碑の見学に予約は必要ですか?
- 予約は不要です。24時間365日、無料で自由に見学できます。ただし、英語ガイドツアーを希望される場合は、多賀城市観光協会(022-364-5901)への事前予約が必要です。
- 東京から日帰りで訪問できますか?
- はい、十分可能です。朝8時頃に東京を出発すれば、多賀城碑と周辺の史跡、さらに松島観光も含めて日帰りで楽しめます。新幹線利用で片道約2時間、現地滞在時間を5-6時間確保できます。
- ベストシーズンはいつですか?
- 桜の季節(4月上旬〜中旬)とあやめまつり(6月下旬〜7月上旬)が最も人気です。ただし、各季節に独自の魅力があり、特に冬は観光客が少なく、ゆっくりと歴史に浸ることができます。
- 碑文の内容を理解するには日本語の知識が必要ですか?
- 東北歴史博物館の英語展示や音声ガイドで詳しい説明を聞くことができます。また、現地の案内板にも英語表記があるため、日本語が分からなくても歴史的意義を理解できます。
- 写真撮影に制限はありますか?
- 碑自体の撮影は自由です。フラッシュの使用も可能ですが、他の見学者への配慮をお願いします。商業目的の撮影の場合は、多賀城市教育委員会への事前申請が必要です。
基本情報
| 名称 | 多賀城碑(たがじょうひ) |
|---|---|
| 別称 | 壺碑(つぼのいしぶみ) |
| 所在地 | 宮城県多賀城市市川字田屋場 |
| 建立年 | 762年(天平宝字6年)12月1日 |
| 材質 | 花崗質砂岩 |
| 寸法 | 地上高196cm、最大幅103cm、厚さ60cm |
| 文字数 | 141文字(11行) |
| 文化財指定 | 国宝(2024年8月27日指定) |
| アクセス | JR国府多賀城駅から徒歩10分 |
| 見学料 | 無料 |
| 見学時間 | 24時間可能 |
参考文献
- 国宝「多賀城碑」(たがじょうひ)
- https://www.city.tagajo.miyagi.jp/bunkazai/shiseki/bunkazai/shitebunkazai/kunishite/tagajohi.html
- History of Taga Castle | Tagajo 1300th Anniversary Special Site
- https://en.tagajo1300.com/history
- 多賀城碑(壺碑)|#MIYAGI|9 AREAS TRAVEL GUIDE
- https://www.sendai-matsushima.com/contents/78/?lang=en
- Taga Castle - Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Taga_Castle
- Tohoku History Museum | VISIT MIYAGI
- https://visitmiyagi.com/articles/tohoku-history-museum/
- 28 Tagajo Castle Monument | The "DATE Culture" Fostered by Masamune
- http://datebunka.jp/en/cp/28/
最終更新日: 2026.01.16
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