1棟の社 ― 2022年に登録有形文化財

中之坊稲荷社は、奈良県葛城市當麻元當麻方1263-11にある江戸時代の建造物で、2022年(令和4年)2月17日に登録有形文化財(建造物)となった。指定された文化財ではなく、登録された文化財である。

員数は1棟である。ふりがなは、なかのぼういなりしゃである。所有は宗教法人中之坊である。

構造は木造平屋建、檜皮葺、建築面積1.4平方メートルとされる。年代の欄は江戸、西暦は1830年から1868年である。

1.4平方メートルの社である

建物としての大きさが、ごく小さい。

文化庁は、一間社入母屋造平入檜皮葺、と記す。一間社は、正面の柱と柱のあいだが一つだけの社殿をいう。

建築面積は1.4平方メートルで、およそ畳一枚に満たない。

谷豊家住宅の便所は7.0平方メートル、赤木家住宅の番人小屋は6.0平方メートルだった。

本件は、それらの4分の1にも満たない。これまで見てきた登録の建物のなかで、最も小さいことになる。

檜皮葺は、檜の樹皮を重ねて葺く屋根をいう。小さな社殿に、寺社の格の高い屋根材が使われる。

小品ながら、装飾性に富む

評価の言葉が、小ささを認めたうえで飾りを挙げている。

文化庁は、軸部全体に彩色を施すなど、小品ながら装飾性に富む、と結ぶ。

小品は、小さな作品をいう。小さいことを断ったうえで、装飾の豊かさが述べられる。

御坂隧道では、坑口部の意匠は比較的に簡素だが、と断ってから価値が述べられた。小原屋原田商店の油蔵は、閉鎖的な土蔵であるが丁寧な造り、とされた。

本件は、断る点が小ささで、挙げる点が飾りの多さになる。

大橋茶寮表門では、質素であることがそのまま評価になっていた。本件は反対に、飾りの豊かさが評価になる。

屋根に二つの破風、組物は二手先

小さな社殿に、大きな寺社と同じ種類の細部が詰め込まれている。

文化庁は、二軒繁垂木で、正面に千鳥破風を付け向拝を唐破風とする、と記す。

千鳥破風は屋根の面に載せる三角の飾り屋根、唐破風は中央が盛り上がって両端が反る曲線の破風をいう。向拝は、正面に張り出して参拝の場を覆う庇である。

続けて、組物は二手先で、肘木に笹繰を取り隅尾垂木を入れ向拝虹梁木鼻を波形に造り、とある。二手先は、柱の上の組物が二段に前へせり出す形をいう。

屋根に二種類の破風を重ね、組物を二段に出し、木鼻を波の形に彫り、全体を彩色する。1.4平方メートルの建物に、これだけの手が込められる。

谷豊家住宅の便所は、7.0平方メートルに数寄屋風の意匠で瀟洒とされた。あちらは軽やかさ、本件は華やかさで飾られる。

見学

所在は奈良県葛城市當麻元當麻方1263-11で、所有は宗教法人中之坊である。

文化庁は、當麻寺中之坊の境内北西隅に建つ鎮守社、と記す。鎮守社は、寺の境内を守る神を祀る社をいう。寺のなかに、神の社が建つことになる。

中之坊の書院と庭園は、この社とは別の文化財になっている。

寺院の境内にある社であり、拝観の時間や条件は所有者の定めによる。訪問前に確認したい。

年代の欄は1830年から1868年で、江戸時代の後期にあたる。

Q&A

Q中之坊稲荷社はいつ登録されましたか。
A2022年(令和4年)2月17日に登録有形文化財(建造物)となりました。指定ではなく登録で、員数は1棟です。
Qどのくらいの大きさですか。
A建築面積1.4平方メートルの一間社です。
Q何が評価されているのですか。
A文化庁は「軸部全体に彩色を施すなど、小品ながら装飾性に富む」と結びます。
Q屋根にはどのような特徴がありますか。
A入母屋造、檜皮葺で、正面に千鳥破風を付け、向拝を唐破風とします。
Qどこに建っていますか。
A當麻寺中之坊の境内北西隅に、鎮守社として建ちます。

基本情報

名称中之坊稲荷社(なかのぼういなりしゃ)
所在地奈良県葛城市當麻元當麻方1263-11
指定区分登録有形文化財(建造物・宗教建築)/指定ではなく登録
指定年2022年(令和4年)2月17日 登録
員数1棟
寸法木造平屋建、檜皮葺、建築面積1.4平方メートル。一間社入母屋造平入、二軒繁垂木で、正面に千鳥破風、向拝を唐破風とする。組物は二手先、軸部全体に彩色。年代の欄は江戸、西暦は1830年から1868年
所有者宗教法人中之坊
公開状況寺院の境内にあり、拝観の時間や条件は所有者の定めによる

参考文献

文化遺産オンライン 中之坊稲荷社
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/554445
當麻寺中之坊 境内案内
https://www.taimadera.org/guide/1/index.html
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/
葛城市
https://www.city.katsuragi.nara.jp/

最終更新日: 2026.09.22