當麻寺東塔
奈良県葛城市の當麻寺には、東塔と西塔という二基の三重塔が並んで立つ。古代に建てられた東西の塔が両方とも残っているのは、全国でこの寺だけである。古いのは東塔のほうで、奈良時代の末に建てられた。基壇から相輪の先端まで、総高は24.4メートル。八世紀にさかのぼる三重塔は、数えるほどしか現存しない。
見上げてまず目につくのは、層ごとの柱の組み方である。初重は一辺三間で、塔として普通の姿をしている。ところが二重と三重は二間しかない。柱間が偶数になると各面の中央に柱が立つことになり、これは古い和様建築でほとんど避けられてきた。二重を二間とする古塔は、ほかに例がない。
はっきりしない始まり
創建の事情は、はっきりとは分かっていない。寺伝では聖徳太子の異母弟にあたる麻呂古王が開いたと伝え、のちに二上山のふもとへ移されたとされる。境内は現在、高野山真言宗と浄土宗の二宗によって護持されている。中将姫と當麻曼荼羅への信仰が長く続いてきたことの名残である。
東塔がいつ建ったのかは、記録に残らない。細部の手法から奈良時代の終わりごろと見られ、當麻寺に現存する建物のなかで最も古い。対をなす西塔は平安時代の初めに続き、東塔よりわずかに高い25.2メートルある。治承4年(1180年)、平重衡による南都焼き討ちで奈良の諸寺は大きな被害を受けたが、両塔と金堂の本尊はこのとき難を逃れている。
国宝に指定された理由
東塔が国宝に指定されたのは、昭和27年(1952年)3月29日のことである。その価値は、形式の珍しさと、古代の両塔がそろって残るという点の両方にある。
二重・三重を二間とする構造は、建築史の上で最も注目される特徴だ。三重を二間とする例は法起寺三重塔にあるが、二重を二間とするのは東塔のほかにない。相輪にも、もう一つの謎がある。多くの塔が九つの輪をもつのに対し、東塔は八輪で、西塔も同じである。理由を記した史料は残っていない。相輪の頂にのる水煙は透かし彫りの装飾で、魚の骨のような形をしており、ほかの塔には見られない。この水煙が建立当初のものかどうかは、定かでない。
見どころ
両塔は金堂より高い斜面の上に立つ。塔が金堂より高い所にあるのは通常の伽藍配置と逆で、そのぶん遠くからもよく見え、午後の光をよく受ける。組物は三手先で柱間に中備を置かず、軒は深く、勾配はゆるい。谷の向こうから眺めると、重さよりも軽やかさが先に立つ姿である。
境内は自由に入れ、拝観料がかかるのは堂内のみなので、東塔は無料で間近に見られる。中之坊の庭園からは、池の上に東塔を借景の「宝塔」として取り込む構図が組まれている。茶人で大名でもあった片桐石州による作庭である。塔の内部は普段は公開されていない。年によっては初層が特別に開扉される日があるので、訪ねる前に寺の案内を確かめておくとよい。
アクセスと周辺
近鉄南大阪線の当麻寺駅から、山門までは徒歩およそ15分。本堂・金堂・講堂の伽藍三堂は、おおむね9時から17時の拝観で、大人の拝観料は500円ほど。本堂には當麻曼荼羅が納められ、鎌倉時代に寄進された須弥壇の上に、国宝に数えられる厨子などが据えられている。
あわせて回りたいのは、牡丹で知られる近くの石光寺、寺の山号のもとになった二上山の二つの峰、そして葛城市の市街にある、この地を相撲発祥の地とする相撲館である。境内には、国内最古級とされる梵鐘と石灯籠も残っている。
Q&A
- 東塔の内部は見学できますか。
- 通常は非公開です。年によって初層が特別開扉される日があるので、寺の案内を確認してください。外からなら無料で間近に見られます。
- 東塔と西塔はどう違いますか。
- 東塔は古く(奈良時代末)、二重・三重が二間で、水煙は魚骨形です。西塔は平安時代初期で少し高く、各層とも三間、水煙は未敷蓮華をかたどります。八輪の相輪は両塔に共通します。
- 相輪の輪が九つでなく八つなのはなぜですか。
- 理由を記した史料は残っていません。九輪が一般的ですが、八輪は當麻寺の塔の際立った特徴のひとつで、その理由は分かっていません。
- アクセスは。
- 近鉄南大阪線の当麻寺駅から徒歩15分ほどです。大阪阿部野橋方面から電車で行けます。
- 訪れるのに良い時期は。
- 春は牡丹と練供養、秋は紅葉が斜面の塔に映えます。境内は一年を通して歩きやすく、晴れた日の午後の光が塔をよく見せてくれます。
基本データ
| 名称 | 當麻寺東塔(たいまでらとうとう) |
|---|---|
| 所在地 | 奈良県葛城市當麻 |
| 指定区分 | 国宝(建造物) |
| 指定年月日 | 昭和27年(1952年)3月29日 |
| 時代 | 奈良時代末期(8世紀) |
| 構造・形式 | 三間三重塔婆、本瓦葺 |
| 高さ | 総高24.4メートル(相輪含む) |
| 員数 | 1基 |
| 所有 | 當麻寺 |
| アクセス | 近鉄南大阪線「当麻寺駅」から徒歩約15分 |
| 公開状況 | 境内自由、東塔は外観を無料で拝観可。伽藍三堂は拝観料約500円 |
参考文献
- 文化遺産オンライン 當麻寺東塔
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/186926
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2779
- 當麻寺 公式サイト 境内の散策
- https://www.taimadera.org/guide/3/index.html
- 當麻寺護念院 東塔の相輪について
- https://taimadera-gonenin.or.jp/cate-gonenin/post-1561/
最終更新日: 2026.06.04