鎌倉時代の一文字派の太刀 ― 1952年に国宝

太刀〈無銘一文字(山鳥毛)〉は、岡山県瀬戸内市の備前長船刀剣博物館が所蔵する鎌倉時代の太刀で、1952年(昭和27年)3月29日に国宝に指定された。それに先立つ1940年(昭和15年)5月3日には重要文化財となっている。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は00044。所有は瀬戸内市である。

文化庁の解説はこう記す。日光一文字と並ぶ作で、備前一文字派盛期の作風と力を存分に発揮した太刀である。刃文が最も大模様に乱れて刃中の変化に富んだ作である。上杉謙信および景勝の愛刀として上杉家に伝来したものである。

一文字は刀工の名ではなく、備前国福岡を拠点とした刀工集団の名である。無銘とは銘が切られていないことをいい、作者個人は特定されない。個人名ではなく流派として指定されている点が、この太刀の名称に表れている。

号の読みには「やまとりげ」と「さんちょうもう」の二通りがある。文化庁のふりがなは「やまとりげ」、岡山県の記録は「さんちょうもう」である。

号の由来は明らかでない

文化庁は号についてこう記す。号は、一説にその刃文が山鳥の羽毛に似ているからというが、他にも説があって明らかでない。

山鳥の羽毛に似ているという説は広く知られるが、文化庁は「他にも説があって明らかでない」と明記している。旧記事はこの説を由来として断定していたが、公的記録は断定していない。

号は刀に付けられた固有の呼び名で、由来が伝承による場合が多い。無銘の刀であることと、号の由来が定まらないことは、いずれもこの太刀の来歴に不確かな部分が残ることを示す。

寸法 ― 資料により異なる

寸法については記録が分かれる。

文化庁の国指定文化財等データベースは、刃長79.1センチメートル、反り3.3センチメートル、元幅3.5センチメートル、先幅2.2センチメートル、鋒長3.3センチメートルとする。一方、岡山県の記録は刃長71.2センチメートル、反り2.7センチメートルとする。

刃長で約8センチメートルの差がある。79.1と71.2は数字の並びが近く、どちらかが誤記の可能性もあるが確認できない。本稿は文化庁の値を採り、相違があることを併記する。

品質・形状は文化庁の記載による。鎬造、庵棟、鋒猪首となり、腰反り高く、踏ん張りがある。鍛は板目、淡く乱映り立つ。

猪首鋒は鋒が短く詰まった形、腰反りは反りの中心が手元寄りにあることをいう。いずれも鎌倉時代中期の太刀の特徴である。

上杉家からの伝来と、瀬戸内市の取得

この太刀は上杉謙信および景勝の愛刀として上杉家に伝わった。上杉景勝自筆の目録にも記載がある。

その後、所有者が移り、岡山県立博物館に寄託されていた時期がある。瀬戸内市は2018年に取得のためのプロジェクトを立ち上げ、ふるさと納税型クラウドファンディングと企業版ふるさと納税により資金を募った。約5億円を集め、令和2年(2020年)3月22日に瀬戸内市の所有となった。

制作地である備前国福岡は、現在の瀬戸内市にあたる。刀工集団の拠点だった土地に、その集団の作が戻ったことになる。

鑑賞 ― 年1回程度の公開

備前長船刀剣博物館が所蔵するが、常設展示ではない。瀬戸内市によれば、展示公開は年1回程度である。

公開時期は年により異なり、館外へ貸し出される場合もある。2025年には新潟県上越市立歴史博物館で展示された。訪問前に瀬戸内市または備前長船刀剣博物館の案内で公開予定を確認したい。

備前長船刀剣博物館は備前刀を中心に展示する博物館である。敷地内には鍛刀場があり、古式鍛錬の見学ができる日がある。来館に予約が必要な場合があるため、こちらも事前に確認したい。

交通はJR赤穂線の長船駅から車で約7分、または香登駅から徒歩約20分。宇野バスの天王または船山から徒歩約10分である。

Q&A

Q山鳥毛はいつ国宝に指定されましたか。
A1952年(昭和27年)3月29日です。それに先立つ1940年(昭和15年)5月3日に重要文化財となっています。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は00044。鎌倉時代の作で、所有は瀬戸内市です。
Q「無銘一文字」とはどういう意味ですか。
A一文字は刀工個人の名ではなく、備前国福岡を拠点とした刀工集団の名です。無銘は銘が切られていないことをいい、作者個人は特定されません。個人名ではなく流派として指定されていることが名称に表れています。
Q山鳥毛という号の由来は何ですか。
A文化庁は「一説にその刃文が山鳥の羽毛に似ているからというが、他にも説があって明らかでない」と記します。羽毛に似るという説は広く知られますが、公的記録は由来を断定していません。読みも「やまとりげ」と「さんちょうもう」の二通りがあります。
Q山鳥毛の寸法は。
A文化庁のデータベースは刃長79.1センチメートル、反り3.3センチメートル、元幅3.5センチメートル、先幅2.2センチメートル、鋒長3.3センチメートルとします。岡山県の記録は刃長71.2センチメートル、反り2.7センチメートルとしており、記録が分かれています。
Q山鳥毛はいつ見られますか。
A備前長船刀剣博物館が所蔵しますが常設展示ではなく、瀬戸内市によれば公開は年1回程度です。館外へ貸し出される場合もあり、2025年には新潟県上越市立歴史博物館で展示されました。訪問前に公開予定を確認してください。

基本情報

名称太刀〈無銘一文字(山鳥毛)〉(たち むめいいちもんじ やまとりげ)/さんちょうもうとも読む
所在地岡山県瀬戸内市長船町長船966 備前長船刀剣博物館
指定区分国宝(工芸品)/指定番号00044
指定年1940年(昭和15年)5月3日 重要文化財/1952年(昭和27年)3月29日 国宝
員数1口
寸法刃長79.1センチメートル、反り3.3センチメートル、元幅3.5センチメートル、先幅2.2センチメートル、鋒長3.3センチメートル(文化庁)。鎬造、庵棟、鋒猪首、腰反り高く踏ん張りがある。鍛は板目、淡く乱映り立つ。鎌倉時代
所有者瀬戸内市
公開状況備前長船刀剣博物館が所蔵。常設展示ではなく公開は年1回程度。館外へ貸し出される場合がある

参考文献

瀬戸内市 国宝「太刀 無銘 一文字(山鳥毛)」について
https://www.city.setouchi.lg.jp/site/token/109319.html
岡山県 県内の国宝・重要文化財一覧
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/294012.pdf
岡山観光WEB 山鳥毛は何故見る人々を魅了するのか
https://www.okayama-kanko.jp/okatabi/detail_1723.html
備前長船刀剣博物館
https://www.city.setouchi.lg.jp/site/token/

最終更新日: 2026.09.03